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速攻レースインプレッション

「勝ち切る」ことにこだわった姿勢が勝利の女神を振り向かせた

文/山本武志(スポーツ報知)、写真/川井博


基本的に「新しいもの好き」だと思う。予想でも芝替わり、ダート替わりの馬には厚い印を打つタイプだし、一気に距離を延ばしたり、短くしたりしてきた馬たちは気になって仕方ない。

ということで、決して海外競馬が好きというワケでもないだが、「未知の魅力」が詰まった外国馬がやって来るジャパンCは好きなレースのひとつ。今のように海外馬券発売がなく、あまり海外の情報が入ってこなかったファンの頃は付け焼き刃で情報をかき集め、隠れた実力馬を必死に探しまくった。やはり、外国馬が名を連ねてこそのジャパンCだと思う。

今年は39年目にして、初の外国馬不在。近年の招待馬のレベルの低下から、この日が来るのは遠くないと思っていたが、実際にそうなってみると寂しい限りだ。栗東の取材中でも色々な場所で外国馬不在の話になったが、もっとも多く話題に挙がるのが「検疫問題」。やはり、白井の競馬学校経由で東京競馬場入りすることは二の足を踏む大きな理由で、「自分でも嫌だ」という話を複数の調教師から聞いた。同じアジア圏で行われ、施行時期が2週間しか変わらない香港国際競走に海外から多数の馬が駆けつけていることが、その事実を何よりも物語っている。

この外国馬不在が非常に注目された理由のひとつは、国内組に圧倒的な主役がいなかったことも大きい。最近はアーモンドアイキタサンブラックオルフェーヴルなどその年の主役が常に参戦してきたが、今年は天皇賞アーモンドアイサートゥルナーリアの激突で盛り上がった。一方、こちらは単勝10倍を切る馬が4頭もいて、1番人気が今年未勝利だったレイデオロが4.2倍。正直、例年より小粒な印象が否めなかった。

各馬の実力が拮抗していたうえ、前日からの大雨でさらに難解となった一戦。大混戦を断ったのはスワーヴリチャードだった。道中は中団の内ラチ沿いで脚をため、直線では②着のカレンブーケドールと併せるように追い出しを開始。ラスト300mあたりで馬場の真ん中へ持ち出せそうなスペースはあったが、そこでも内ラチ沿いのスペースに進路を取り、グイッと伸びて、突き放した。鞍上はマーフィーJ。まるで内から巧みに抜け出したディアドラナッソーSを見ているかのような手綱さばき。さすが今年の英国リーディングに輝いた若き名手だ。

ただ、冒頭に書いたような「新しいもの好き」記者にとって、鞍上の手腕以上に見逃せないことがあった。それは中間、スワーヴリチャードが坂路を中心に調教を積んでいたことだ。デビュー時からほとんど、長めに乗れるコースを中心に追い切りを行ってきた。前走までの17戦で当該週の追い切りは1度だけ芝コースで行っているが、あとはすべてCWコース。天皇賞の前まで坂路で55秒を切る時計を出したことはわずかに2回のみだ。

ところが、今回は中間に1度もCWコースで時計を出していない。常識的な考え方では、坂路での調教はスピードや瞬発力を磨くために使われることが多く、コースから坂路調教に切り替えるのは距離短縮時によく見られる。ただ、今回は前走から2ハロン延びるにもかかわらず、坂路での調教に変えた。

そのことを今週、庄野調教師に聞いた時は「大阪杯以来、G1だけじゃなく、勝ってもいない。何かきっかけというか、少し変化を加えようとしただけです」と返したが、「もう肉体的には完成期に入っていると思う」と言葉を続けた。2歳時から東京スポーツ杯2歳S②着など一線級で活躍を続け、今はもう5歳秋。鍛える時期は終わったという愛馬への厚い信頼が、大一番を前に今までのパターンを変えるという決断をさせたのではないだろうか。「一か八か」の要素が強いが、「勝ち切る」ことにこだわった姿勢が、この混戦で勝利の女神を振り向かせたような気がする。

②着のカレンブーケドールは勝ち馬の巧みな立ち回りに屈したが、好位からの正攻法で最後まで止まらずに中身の濃い競馬。来年以降が非常に楽しみだ。個人的には上がり最速の脚で④着まで差を詰めたダービー馬マカヒキの復活が非常にうれしい。ワグネリアンも含め、ダービー以降は国内で勝てていないというのは、今回5頭出しとなった友道調教師がよく口にする話。特にマカヒキは年齢的に時間も少ないだけに、もう一度、強い姿を見せて欲しいと思う。

最後に今年の古馬中長距離路線もG1は有馬記念を残すのみ。今年は巻き返しを狙うサートゥルナーリアに、G1・3勝のリスグラシュー、菊花賞馬のワールドプレミアなど例年以上の豪華メンバーとなりそう。また、そのリスグラシューシュヴァルグランアエロリットクロコスミアなど、このレースを最後に引退する馬も非常に多い。記憶と記録に残るようなグランプリとなることを期待したい。


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