速攻レースインプレッション
上位人気5頭のなかで結果を分けた要因は!?
文/出川塁、写真/森鷹史

確かに絶対的な本命馬は不在のメンバー構成ではあった。1番人気となったのは2年前の覇者でもあるゴールドドリームだが、当日の午前までは2番人気にとどまり、最終的なオッズは3.5倍。前走の南部杯では2年ぶりに連対を外し、年が明ければ7歳ということもあり、衰えの兆候を感じたファンも少なくなかったのだろう。
これに続いたのは、今年のジャパンダートダービーを制した3歳のクリソベリル。デビューから無傷の5連勝中と勢いは随一の存在だったが、古馬混合G1初出走で力関係がわからないぶん2番人気となった格好である。逆に3番人気のインティは近2走で勢いを失い、前走のみやこSでは⑮着に大敗。武豊騎手に戻るのはプラス材料とはいえ、複勝だと5番人気という点にファン心理がよく表れている。
その一方で、単勝は5番人気だが、複勝だと2番人気というのがチュウワウィザードで、過去13戦すべてで③着以内という安定感を買われた格好。ひとつ上の4番人気オメガパフュームともども交流G1はすでに制しており、この2頭はここで中央G1初勝利を狙っていた。
単勝オッズとしては5番人気のチュウワウィザードが6.7倍で、6番人気のウェスタールンドになると20.4倍まで一気に下がる。つまり、確固たる主軸と呼べるほどの馬は見当たらず、上位の5頭は接近しており、それ以外の馬とは力量差がある。馬券の売れ行きからはそんな構図を読み取ることができた。
逃げたのは大方の予想通りインティ。惨敗した前走とは違って、今回はすんなり先頭に立ってレースを引っ張っていく。外からテーオーエナジーが2番手に続き、クリソベリル、ゴールドドリームは3、4番手。さらにチュウワウィザードとオメガパフュームが続き、人気上位の5頭はすべて馬群の半分より前の位置につけた。
前半1000mの通過は60秒8。インティにとっては前走のみやこSより1秒8遅く、しかも今回は単騎で逃げている。相手関係は別にして、展開としては遥かに楽で、勝負どころの3~4コーナーを迎えても実に快調な逃げっぷりを見せている。一方、これを窺うライバルたちは揃ってラチ沿いを回り、馬群を割ってくる構えだ。
直線に入って急坂にかかってもインティの脚色は衰えず、後続を突き放しにかかる。しかし、残り200mを過ぎて同じ父を持つゴールドドリームとクリソベリルが急襲。しばし3頭による力のこもった攻防が繰り広げられ、最後にグイッとひと伸びしたのは真ん中を割ったクリソベリルだった。
クビ差でゴールドドリームが②着に続き、インティはゴール前で脚が鈍ったものの③着を死守した。以下、最後に脚を伸ばしたチュウワウィザードは馬券圏内には届かず④着まで。オメガパフュームは、直線だけの競馬をしたキングズガードに先着されて⑥着となったが、ほぼオッズの示した通り、ファンの見立て通りの結果となった。
そして、上位人気5頭のなかで結果を分けたとすればジョッキーではなかったか。チュウワウィザードではなくクリソベリルを選んだ川田将雅騎手。8戦連続の騎乗となったゴールドドリームのルメール騎手。武豊騎手に戻って巻き返しを果たしたインティ。たとえばクリソベリルは、これまでのレースでは外を回すことが多かったが、今回はラチ沿いを通って直線でも2頭の間を割って出てきた。ジョッキーとの信頼関係がなければ、なかなかできることではないだろう。
一方、有力5頭のなかで馬券圏内に届かなかった2頭はといえば、チュウワウィザードは川田騎手がバッティングしたため福永祐一騎手が10戦ぶり2度目の騎乗。オメガパフュームはデットーリ騎手のテン乗りだった。結果論ではあるが、シビアな戦いになるG1においては、馬の癖を熟知したジョッキーが騎乗するメリットは大きいのである。