速攻レースインプレッション
決定的な脚力の違いを見せつけた
文/木南友輔(日刊スポーツ)、写真/川井博

年 | 元町S | 朝日杯FS |
14 | 1分35秒8 ヴァンセンヌ | 1分35秒9 ダノンプラチナ |
15 | 1分34秒1 ロイカバード | 1分34秒4 リオンディーズ |
16 | 1分35秒4 ロイカバード | 1分35秒4 サトノアレス |
17 | 1分33秒8 ミエノサクシード | 1分33秒3 ダノンプレミアム |
18 | 1分34秒6 インディチャンプ | 1分33秒9 アドマイヤマーズ |
新馬勝ち直後、あるいはデビュー4、5戦程度の2歳馬が古馬の準オープン(3勝クラス)と互角の数字で走ることを求められる、それがこの「朝日杯FS」というG1の本質だ。
実は『サラブレ』12月号誌面のサウジアラビアRC分析で自分は同じようなことを書いている。「翌日の2勝クラス(①着モズダディー)が1分33秒5。勝ちタイムも上がりもサウジアラビアRC上位2頭の方が優秀だった。阪神外回りマイルで行われる暮れの朝日杯FSは同日直前の元町S(3勝クラス)と互角の数字が求められるが、現状のサリオスは優にそのレベルにある」。
今年の元町Sは面白いことにその「サウジアラビアRC翌日のレース結果でサリオスの物差しに使った馬」モズダディーの逃げ切りだった。勝ちタイムは1分33秒0。前半の半マイルが46秒6、後半が46秒4という平均ペースだった。
朝日杯FSは同じ勝ちタイム1分33秒0。前走内容、モズダディーとの比較でサリオスが勝ったことには当然納得できるのだが、ハイペースを押し切った点はあらためて評価しておきたい。
今年は逃げたビアンフェが前半4Fを45秒4で入った。先週の阪神JFを制したレシステンシア(45秒5)とほぼ同じ数字ではあるが、こと朝日杯FSに限れば、過去5年との比較では14年、15年が47秒3、16年が48秒3、17年が47秒2、昨年は47秒7なので史上に残るハイペースだった。
レースの上がりの半マイル(4F=800m)は47秒6と先行勢に厳しい競馬。この展開を好位3番手からサリオスは押し切った。初の関西圏、右回りだったが、さすが堀厩舎&ライアン・ムーアという仕上げ&レース運び。②着以下の上位勢は序盤で後方を追走していた馬であり、先行して2馬身半差は決定的な脚力の違いを見せつけたことになる。
馬場状態を考慮し、馬の能力を信頼し、結果にこだわったゆえのライアン・ムーアの騎乗だったと思うが、仮にサリオスが後方から競馬を進めていたら、すさまじい追い込みが決まっていただろうと想像することも可能だ。
個人的な狙いは1800m以上を経験した馬ということで◎ジュンライトボルトだったが…、スタート後に鞍上が出していったものの、なかなか進まず、他馬にどんどん前に入られてしまった。直線は内からジリジリ伸びたが、もたれる面を見せていたのか伸びはイマイチで⑥着止まり。展開は向いたが、馬券圏内に加わるまでの実力が現状はなかった。反省したい。
一番早く勝ち馬を追いかけてきたタイセイビジョンはもともと距離を不安視されていた馬。このタフな展開で勝ち馬を追いかけた走りからスプリント戦になれば相当な結果を出しそうだし、鞍上・武豊騎手の手綱さばきもやはり見事だったと思う。③着グランレイは直線を向くまでは追走に手間取っていたように見えていただけに最後の伸びには驚いた。この馬も新馬戦は1800mを使っていたように、もともとは中距離志向があった馬。朝日杯FS激走馬のセオリーには当てはまっていたのだが…。次走に関してはまだ半信半疑だろう。
ダノンプレミアムが勝った17年は②着ステルヴィオ、③着タワーオブロンドン、④着ケイアイノーテックがのちにG1馬に輝いた(⑤着ダノンスマッシュも将来のG1馬候補)。この年は元町Sと遜色ないペースでレースが進み、各馬の上がり3ハロンも元町S上位馬とほぼ互角だった。
今年の朝日杯FSは元町Sと同じ勝ちタイムの決着だったが、ペースが違いすぎて、比較は難しいところ。サリオスの強さは明らかになった。ただ、過去の勝ち馬を見ても来年のクラシックにつながらない一戦を勝ったことで今後、この馬がどのような進路を選ぶのか、今回の上位馬たちが見せたパフォーマンスを今後どう評価していくのかを今後、予想する側が問われることになる。