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速攻レースインプレッション

いまの充実ぶりを見ると、引退が惜しいと思わずにはいられない

文/後藤正俊(ターフライター)、写真/川井博


香港遠征を回避したアーモンドアイの出走で、一層の盛り上がりを見せた有馬記念。最終の単勝オッズは1.5倍となったが、G1馬が史上最多11頭も揃ったメンバーだけにアーモンドアイの能力は十分に認めても、この人気集中ぶりを馬券的にどのように扱うのかが、ファンにとっては迷う点だったはずだ。午後になって小雨が降ったりやんだりしていた中山競馬場の天候と馬場状態も、ファン悩みを深くしていた。その心配された天候は、いまにも土砂降りになりそうな雲行きだったが、有馬記念の発走まで我慢してくれた。

だが、レースは波乱含みに幕を開けた。スタートでレイデオロキセキがやや出遅れた。アエロリットと逃げ争いをするかと思われていたキセキの出遅れで、アエロリットは楽々と単騎逃げに持ち込み、1000m通過は58秒4とやや速い流れになったが、2番手以降は7~8馬身離れたため、レース全体の流れはほぼ平均ペース。アーモンドアイは中団の外を進み、それをマークするように内にリスグラシュー、後方にフィエールマンサートゥルナーリアがつけた。ワールドプレミアは最後方からのレースに徹した。

レースが動いたのが4角手前。外からアーモンドアイがスーッと進出し、先行馬を一気に飲み込もうとした時には、いつものアーモンドアイの独走劇が見られるものと誰もが思ったことだろう。だが、直線を向いたアーモンドアイに伸びがない。すぐ外に並んだフィエールマンと比べても明らかに脚色が見劣り、すぐに交わされてしまった。アーモンドアイは苦しそうに内にもたれ、そのまま馬群に沈むというまさかの⑨着に敗退した。

一旦は先頭に立ったフィエールマンだったが、すぐに外からサートゥルナーリアに交わされ、さらにその外からリスグラシューが馬場の真ん中を通ってケタ違いの伸びを見せて突き抜ける。騎乗したレーン騎手はほぼノーステッキで、ゴール前20mの地点ではもう左手を上げるガッツポーズで勝利を確信した。

牝馬の優勝は史上6頭目2分30秒5の勝ちタイムは04年ゼンノロブロイの2分29秒5、09年ドリームジャーニーの2分30秒0に次ぐ3位タイ。②着との5馬身差は03年シンボリクリスエスの9馬身、13年オルフェーヴルの8馬身には敵わないものの、牝馬では59年ガーネットの4馬身差を超える新記録となった。

リスグラシューレーン騎手とのコンビで、宝塚記念コックスプレートに続くG1・3連勝。奥手だったハーツクライ産駒らしく、5歳を迎えての充実ぶりはすさまじいばかりだ。もちろんレーン騎手の手腕も光っていた。この日はG1勝利馬騎乗の特例で1日限定免許での騎乗。初めての中山競馬場騎乗だったが、まるでコースを知り尽くしているように、コースロスのない最内でじっと我慢して、直線で外に持ち出した。コースを外に切り替える際にはやや強引になり、スワーヴリチャードの進路をカットしたように見えたが、審議ランプは点灯しなかった。リスグラシューの脚を信じ切っていたから、あそこまで仕掛けを我慢できたのだろう。

当初の予定だと、リスグラシューはこのレースを最後に引退・繁殖入りするが、これだけの強さを見せたレース後にこのまま引退してしまうのは何とももったいない。種牡馬の場合はシンジケートが組まれるため引退時期の変更は難しいが、牝馬なら1年延長してもそれほど大きな問題にはならないはずで、何とかもう1年、と思ってしまう。せめて来年1月のペガサスワールドカップ・ターフか、3月のドバイ・ターフまたはシーマクラシックに挑戦できないものだろうか。

②着サートゥルナーリアは、レース前から落ち着いていた。左回りに問題があるというよりも、やはり東京競馬場は何かが違うのだろう。来年は東京以外であれば、古馬王者の看板を背負っていくに違いない。③着ワールドプレミア武豊騎手の直線に賭けたレース作戦が見事にはまった。こちらは直線の長い東京コースでG1制覇を狙えそうだ。④着フィエールマン凱旋門賞惨敗肉体的、精神的な疲れがやや残っていたようにも見えた。天皇賞(春)連覇が目標になるだろう。出遅れたキセキも⑤着まで盛り返し、力のあるところを見せた。

終わってみれば2~4番人気馬が①②③着。アーモンドアイだけが力を発揮できなかった結果だった。それにしてもアーモンドアイはどうしたのだろうか。確かにやや掛かり気味ではあったが、その程度のことで失速するような馬ではないはずだし、大きな不利があったわけでもない。脚元などに異常がなければ、と願わずにいられない。


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