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「ホープフル」なレースぶりで3連勝達成
文/浅田知広、写真/川井博
さて、今年。このホープフルSには2戦2勝の馬が4頭、コントレイル、ワーケア、ヴェルトライゼンデ、そしてオーソリティと出走し、そのまま上位1~4番人気の支持を受けた。
これほどの好メンバーが集えば、そろそろホープフルSから……と、このレースだけを見れば言いたくなる、のだが。なにせ朝日杯FSでサリオスが非常に強い競馬をしており、こちらはよほどの勝ち方をしなければ、というところ。ただタイトルの行方はさておき、来年へ向けて注目度という点では、朝日杯FSにも見劣らない一戦になったことだけは確かだろう。
先手を奪ったのは1勝馬のパンサラッサで、上位人気の組ではコントレイルが4番手の外。直後の内めに札幌王者のブラックホール(5番人気)、中にヴェルトライゼンデと続き、これらを前に見てワーケアとオーソリティが併走した。
前半の800m通過は48秒7、1000mは60秒9。今年の2歳戦、いくつものレコード決着を見たあとだけに「遅いなあ」という印象だが、時計を要するようになった今の中山ではこれが平均ペースだ(後半60秒5-48秒4)。
しかし、少なくとも速くはない流れで「強い」と目されるコントレイルが前々で運んでいるとなれば、後ろの組もそうのんびりとは構えていられない。残り800mを切って、まずオーソリティが動き、これに連れてワーケアも進出を開始した。
ただ、横からの映像では確認しづらかったが、パトロール映像を見るとほぼ同じタイミングで、まるで後ろに目がついているかのように、前のコントレイルもスパート。中山ならちょうど仕掛けどころという面もあるにせよ、結果としてオーソリティやワーケアは、中団の他馬こそ交わしはしたが、コントレイルに迫るところまでは至らず4コーナーを通過する形になったのだった。
一方、前のコントレイルは「スパート」するにはしたものの、鞍上・福永騎手の動きとしては「さあ、そろそろ行こうか」という程度。それだけで前との差をあっという間に詰め、残り300mあたりでパンサラッサを捕らえるあたりではふたたび馬ナリと、まったく余裕を残してのレース運びである。
こうなると、コントレイルをマークして運んだヴェルトライゼンデも苦しい。ワンテンポ遅らせた仕掛けで、後ろから来たオーソリティやワーケアよりは有利な立ち回りになったとはいえ、肝心のコントレイルには4コーナーで突き放され気味になり、この時点で事実上勝負あり、という競馬になった。
残り200mを切って、コントレイルが単独先頭。ここから内にもたれ気味になり、ヴェルトライゼンデがじわじわと差を縮めたが、ふたたび「勝負」に持ち込むほどの脚はなし。結局、そのままコントレイルがヴェルトライゼンデに1馬身半の差をつけ、楽々と無傷の3連勝を達成したのだった。
手綱をとった福永騎手によれば、抜け出してから気を抜くところがあるようで、手応えのわりに前走ほどの圧勝に至らなかったのは、それが出た結果だろう。その前走・東京スポーツ杯2歳Sは、5馬身差のレコード圧勝ながらムーア騎手がかなりびっしり追っており、「そこまでする必要があったのか」という批判めいた声もちらほら。そんな一件を受け、ひと言フォローを、という面もあるだろうか。
しかし、これだけ強い競馬をしておきながらまだ課題が残るとなれば、解消されれば既対戦馬は手も足も出なくなる。コントレイル陣営からすれば、いずれサリオスとの対戦もあるはずで、現時点ではまだ「伸びしろ」、先々は「弱点」にもなり得る部分をしっかり埋めていく必要がある。
もっとも、あまりに完璧な競馬を見せられるよりは、そのくらいのほうが「ホープフル」っぽいと言えるかもしれない。皐月賞まであと約3ヵ月半の12月28日。ここまで来れば、もう来年の話をしても鬼に笑われることはなかろう。このホープフルSと同じ舞台の大一番でどんな姿を見せてくれるのか、今から非常に楽しみだ。