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速攻レースインプレッション

敗戦を糧に人馬一体で勝利を掴み取った

文/出川塁、写真/小金井邦祥


競馬でまったく同じレースは二度とないものだが、今年のフェアリーSが終わった直後に思ったのは「なんだか見覚えがあるなあ」ということだった。

その理由をすこしばかり考えて、思い当たったことはふたつ。まずひとつめは、が当欄を担当するのが昨年のターコイズS以来となること。3歳の別定戦と古馬のハンデ戦という違いはあるものの、どちらも牝馬限定のG3で、舞台は同じ中山芝1600m。そして、前半から軽快に飛ばした逃げ馬が最後の直線でも後続を寄せつけずに快勝したレースぶりもよく似ていた。

もうひとつの理由は、勝ち馬スマイルカナの毛色と血統にある。「近年の競馬で印象に残る逃げ馬」といって、エイシンヒカリを思い浮かべる人は少なくないだろう。その存在を一気に知らしめたのが14年10月のアイルランドTだ。3歳4月の遅いデビューから前走まで、圧勝ばかりで4連勝。オープン入り初戦のこのレースでは、直線で外にヨレて外ラチ沿いまで達しながら②着に3馬身半差をつけるインパクト絶大な勝利を飾った。

最終的に国内G1には手が届かなかったものの、4歳12月の香港Cを制すと、翌年にはフランスに渡ってイスパーン賞で10馬身差をつける驚きの圧勝。世界ランキングでは単独トップとなった。成功例が多い「父ディープインパクト×母父Storm Cat」という最新配合でありながら、古風な「冠名+和語」の馬名はかえって新鮮だったし、名は体を表してもいた。

そのエイシンヒカリの姪にあたるのが、今年のフェアリーSを逃げ切ったスマイルカナとなる。母のエーシンクールディエイシンヒカリの5歳年上にあたり、ダートの短距離路線で活躍。中央でオープンまで出世したあと笠松に転じて当地で6歳一杯まで大活躍した。

スマイルカナの毛色や脚質は、直接にはこのエーシンクールディ譲りということになる。デビューは昨年7月の新潟でハナ差ながらも際どく逃げ切り勝ち。しかし、次走の赤松賞では中団からのレースを試みたもののスタート直後から頭を上げるなどスムーズさを欠いて⑦着。これで踏ん切りがついたか、続くひいらぎ賞では逃げの作戦に戻して2勝目をマークし、2歳のキャンペーンを3戦2勝で終えた。

そして、重賞初挑戦となった3歳初戦のフェアリーSは3番人気の支持。1番人気はアヌラーダプラで、この馬もオークスを制したシンハライトの姪にあたる良血というのは、偶然にしてもなかなか面白い巡り合わせである。続く2番人気がシャインガーネットで、人気上位の2頭はいずれも2戦2勝の戦歴を持っていた。

1、2番人気馬にはもうひとつの共通項があり、それは騎手事情。アヌラーダプラ三浦皇成騎手シャインガーネット田辺裕信騎手がそれぞれデビュー2戦の手綱を取っていた。しかし、前者は三浦騎手の落馬負傷のためルメール騎手へ、後者は田辺騎手の兼ね合いでマーフィー騎手へとそれぞれ乗り替わりとなっていた。

もちろん、両者ともに素晴らしい実績を持つジョッキーで、それが人気に反映された部分もあるだろう。ただし、陣営のコメントなどを読む限りでは、積極的なスイッチというよりも、やむをえない乗り替わりというニュアンスが伝わってきたのも事実だ。実際のレースでも1、2番人気の両馬は直線での伸びを欠き、アヌラーダプラは⑥着、シャインガーネットは④着まで。結果論であることは承知しているが、本来の力を出しきれずに敗れた印象が強く、どこか人馬の歯車が噛み合っていなかったのかもしれない。

その点、勝ったスマイルカナは4戦すべてで柴田大知騎手が騎乗。また、⑦着に敗れた赤松賞を経験して、どういう競馬をすると力を発揮できないかもよくわかっていたはずだ。これに対して1、2番人気馬はいずれも無敗で、今回の負けで初めてわかったこともあるだろう。これを糧に次走の巻き返しに期待した。

代わって②③着に突っ込んできたのはいずれもハーツクライ産駒スマイルカナには離されたものの、②着チェーンオブラブのゴール前の勢いは際立っていたし、中団から渋太く伸びて③着のポレンティアはこれが2戦目。この2頭にとっても次走が試金石となりそうだが、現3歳世代が好調のハーツクライにまたしても楽しみな産駒が登場した。


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