速攻レースインプレッション
「ライバル関係」はまだまだ今後も続きそう
文/浅田知広、写真/瀬戸口翔

この2頭、最初の対戦は昨年のクイーンCだった。クロノジェネシスは前走のG1・阪神JF②着で1番人気の支持、カレンブーケドールはデビュー3戦目の未勝利戦を勝ち上がったばかりで4番人気と差があり、結果もクロノジェネシスが重賞初制覇、カレンブーケドールは④着だった。
そして2度目はオークス。クロノジェネシスは桜花賞で③着に好走して2番人気。対するカレンブーケドールはスイートピーSを勝ってきたものの、一線級とは差があるとの見方で12番人気の低評価だった。この2頭は坂上で一瞬馬体が合う場面もあったが、そこからカレンブーケドールがクロノジェネシスを突き放して先頭へ。直後にラヴズオンリーユーの強襲を受けて②着に敗れたものの、低評価を覆して力を見せた一戦となった。
そして3度目は牝馬三冠の最終戦・秋華賞。カレンブーケドールは秋初戦の紫苑Sで③着敗退を喫していたが、それでもここは2番人気。一方のクロノジェネシスはオークス以来の休養明けで4番人気と、初めて人気が逆転した。しかし、結果はオークスに続いて人気とは逆。クロノジェネシスがカレンブーケドールを直前半ばで振り切り、2馬身差の完勝でG1タイトルを手中にしたのだった。
これで対戦成績はクロノジェネシスの3戦2勝となり、クイーンC、秋華賞と2度の重賞制覇。片やカレンブーケドールは重賞未勝利。ここまでを見れば、ライバルといえどもクロノジェネシスのほうが力は一枚上、という判断が妥当だろう。
しかし、話をややこしくしたのが2頭の次走。クロノジェネシスがエリザベス女王杯で瞬発力負けして⑤着に敗れたのに対し、カレンブーケドールはなんとジャパンCで大健闘の②着好走を見せたのだ。2400mのオークスではカレンブーケドールが先着、そしてジャパンCは重馬場。さて「重馬場の京都2200mではどっち?」となると、これはなかなかに難しい。
単勝オッズも前売りからかなり接近し、当日のレース直前はカレンブーケドールが1番人気。これが締め切り間際に入れ替わり、クロノジェネシスが2.7倍、カレンブーケドール2.8倍でレースを迎えた。
2頭とも先行することが多く、どちらかといえばカレンブーケドールのほうがよりその傾向が強かった。しかし今回は、クロノジェネシスが7枠からすんなり3番手につけたのに対し、1枠を引いたカレンブーケドールは馬場の荒れた内を避け、いったん後方まで下げて外に出していくレース運びになった。
アメリカズカップが大逃げを打つレース展開の中、道中は2頭とも大きな動きを見せず3コーナーへ。ここから外を通ってカレンブーケドールがじわじわと追い上げを開始し、クロノジェネシスの直後まで迫って4コーナーを通過した。ここからまた2頭の追い比べになるか、という直線入り口だ。
ところが、今回は2頭の馬体が合うシーンは見られなかった。直線前半でクロノジェネシスがぐいっと加速。これにステイフーリッシュもなんとか食らいついたが、カレンブーケドールはここで離されてしまったのだ。残り200mを切ると盛り返し、脚があがったステイフーリッシュを捕らえはしたものの、先に抜け出したクロノジェネシスはまだ2馬身前。結局、そこからまたじわじわと差が開き、最後はクロノジェネシスがカレンブーケドールに2馬身半の差をつける快勝となったのだった。
これで両馬の対戦成績はクロノジェネシスの4戦3勝。クイーンC、そして今回と2度にわたって1キロ重い斤量で先着しており、決定的とも言える差がついたようにも思える。ただ、クロノジェネシスがジャパンCに出走したら①~②着になれたのかと問われれば、そうとも言い切れないのが競馬である。
まだまだ今後も「ライバル関係」が続きそうなこの2頭。クロノジェネシスが対戦成績通りの評価を得るためには、牡馬強豪相手のG1で連対するくらいの結果が欲しい。逆に、今後のレースでカレンブーケドールがジャパンC②着に匹敵するような走りを見せれば、やっぱり強いじゃないか、という話にもなるだろう。もしかしたら、2頭の直接対決ならクロノジェネシス、強敵相手の勝負ならカレンブーケドール、ということになるのかもしれない。果たして5度目の対戦は、どんな形で迎えることになるのだろうか。