血統面の逆風を跳ね返して重賞連勝､今度は!?

当然ながら､コース変更がプラスに働く馬もいればマイナスに作用する馬もいる｡京都牝馬Sは16年に京都芝外1600mから京都芝外1400mに変更されて行われているが､芝1200mはちょっと短い､芝1600mはちょっと長い､芝1400mはピッタリという牝馬にとっては､大目標にもなり得るレースだ｡

今年で言えば､芝1400m[4.1.0.0]､芝1600m[0.0.1.3]のドナウデルタ(3番人気)､芝1400m[3.3.0.0]､芝1600m[0.0.0.5]のプールヴィル(6番人気)あたりがその最たる馬と言える｡

逆に､このコース変更によって成績が低迷することになったのがディープインパクト産駒｡京都芝外1600m時代は[2.1.0.3]で､12年ドナウブルー､14年ウリウリがここで重賞初制覇を果たすこととなったが､京都芝外1400mになってから昨年まで[0.0.1.10]で､馬券に絡んだのは17年③着スナッチマインドのみ｡

そんな血統面での逆風が吹く中､1番人気の支持を集めたのはそのディープインパクト産駒のサウンドキアラだった｡京都芝は①④①②①①①着という京都巧者で､前走の京都金杯では牡馬を撃破して重賞初制覇を飾り､本格化を印象付けた｡芝1400mも道悪も久々ながら勝ち鞍があり､2戦2勝と相性が良くて乗れている松山騎手となら…といったあたりが買われたということか｡

結論から言えば､ファンの評価が正解だった｡サウンドキアラは好スタートを切って前寄りの外を手応え良く進み､直線は馬場の外目からグイグイ伸びて差し切り｡外枠(8枠17番)から馬場の良いところを走れたこと､スローペースで前有利な展開となったことも勝利を後押しした格好だが､馬の総合力と鞍上の好リードが噛み合ってこその1馬身1/4差の快勝だろう｡

サウンドキアラはこの後､ヴィクトリアマイルを目標にし､馬の状態を見て直行するか1戦挟むか決めるようだが､京都[6.1.0.1]に対し､京都以外[0.2.4.2]｡コース変更の逆風を跳ね返して京都芝外1400mの京都牝馬Sを制したディープインパクト産駒は､今度は東京芝1600mへのコース替わりをクリアできるかが問われることになる｡

昨年のヴィクトリアマイルは条件馬の身で格上挑戦し､レコード決着の中､①着ノームコアから0秒7差の⑦着｡重賞2連勝を飾り､本格化して挑む今年は春の大一番でどれだけの走りを見せられるのか､昨年からの成長度が試される注目の一戦となる｡

鞍上の松山騎手は京都金杯(サウンドキアラ)､東海S(エアアルマス)､きさらぎ賞(コルテジア)､そして京都牝馬Sと､2月にして早くもキャリアハイのJRA重賞4勝目｡昨年､自己最多の91勝を挙げた鞍上は今年に入ってますます手綱捌きが冴え渡っている｡

実は､松山騎手は昨年まで､JRA重賞で牝馬に騎乗した時は[0.2.7.91]と未勝利だったのだが､サウンドキアラとのコンビで一気に2勝を積み上げた｡サウンドキアラと松山騎手のコンビは1勝クラスでの勝利を含めて3戦3勝｡よほど相性が良いのだろう｡のちに｢運命的な出会いだった｣と振り返る日が訪れるかもしれない｡

②着プールヴィルはフィリーズレビュー以来の重賞2勝目とはならなかったが､芝1400mはこれで[3.4.0.0]で､7戦してオール連対｡[0.0.0.5]の芝1600mとのコントラストが鮮やかだ｡欧州血統で､フィリーズレビューも道悪だったから､時計のかかる芝1400mが合っていたと推察されるが､24kg増(446kg)の今回はパワーアップも印象付けており､今後に期待が膨らむ｡

一方､昨年の牝馬三冠戦線で上位争いを演じていたシゲルピンクダイヤ(2番人気)､ビーチサンバ(4番人気)は追い込み届かず⑦着､⑤着と馬券圏外に敗れた｡初の芝1400mで後方からとなり､前が止まらない展開ではさすがに厳しかったと言える｡それでも､ビーチサンバはメンバー中最速の上がり34秒4で追い上げ､さすがの脚は見せた｡

ドナウデルタは得意距離で母子制覇を目指したものの出遅れが響いて⑬着｡アルーシャ(5番人気)は最内枠で出遅れて荒れた内を通る形になって伸び切れず､まさかのシンガリ負け(⑰着)を喫した｡京都芝重賞でルメール騎手が騎乗した最内枠のディープインパクト産駒というのは､内から抜け出してシンザン記念を制したサンクテュエールと共通するが…同じ京都芝重賞とは思えない結果である｡

なお､京都芝外1400mでの京都牝馬Sでは､1～4枠が[0.0.2.33]､5～8枠が[5.5.3.34]という成績になった｡今回､1枠のアルーシャ､ビーチサンバは枠順に泣かされた部分も大きいと言わざるを得ない｡来年の京都牝馬Sは､京都競馬場の改修の影響で京都以外で行われることになるから､そのデータは使えないのだが､サウンドキアラは枠順的にもツキがあったということだろう｡