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速攻レースインプレッション

G1獲りの最終関門は根幹距離の克服!?

文/出川塁、写真/小金井邦祥


新型コロナウイルスの感染拡大防止のためイベントの中止・延期が相次ぐなか、中央競馬も当分のあいだ無観客で行なわれることとなった。今週は、長年にわたって貢献した騎手や調教師の引退、そして新人騎手や新規調教師のデビューもある節目のタイミングだったっただけに、なんともやるせない。

社会には不安閉塞感自粛ムードが蔓延し、SNS上では便乗したデマも飛びかう。2011年のことを思い出すという言葉も見かけるが、そうした雰囲気は確かにある。

9年前の中山記念を制したのはヴィクトワールピサだった。前年末の有馬記念を勝ったあと、古馬初戦となったこのレースでは4コーナーで豪快にマクって、皐月賞馬の先輩である②着キャプテントゥーレに軽く2馬身半の差をつけた。そしてあの出来事を挟み、日本馬初のドバイワールドC制覇で大いに勇気づけてくれたのは忘れもしない。

歴史は繰り返すというわけではないのだろうが、今年もダノンキングリーが4歳初戦を完勝で飾った。ヴィクトワールピサと違って3歳最終戦のマイルCSでは⑤着に敗れていたものの、古馬になってさらに力をつけた姿を見せつけたのは同じだ。

スローの共同通信杯や出遅れて後方待機となった毎日王冠のように、これまでに勝ち切った特別競走は脚を溜めて上がり1位の末脚を記録したレースだった。対して、上がり1位を記録できなかった皐月賞ダービーではそれぞれ②③着。いずれもタイム差なしだったように、それでも崩れずに走れるだけの実力の持ち主ではあるが、戴冠を逃してしまったのは事実である。

すなわち、今年の課題は前半からペースが流れても、あるいはポジションを取りに行っても勝ち切れるかどうか。これができるようになればG1制覇にも手が届くはずだが、果たして、この中山記念で見せた競馬は満点に近いものだった。

このレースで引退となるマルターズアポジーが最後の逃げ脚を披露して、最初と最後の1Fを除いてすべて11秒台の緩みないラップに。これを3番手で追走すると、直線でもしっかり伸びてラッキーライラックに1馬身4分の3差をつけた。今回の上がりは3位タイ。というと物足りないようだが、特別競走4勝目にして初めて自身の上がりが1位以外のレースで勝ったところに価値がある。

②~⑤着馬はすべてG1馬と負かした相手も文句なし。もっとも、②着のラッキーライラックがプラス11キロ、④着のインディチャンプもプラス16キロだったようにお釣りを残した仕上げではあっただろう。対するダノンキングリーはプラス6キロ。もちろんこちらも先を見据えた仕上げには違いないはずだが、このあたりの馬体重にはすでにG1を勝った者と、まだ勝っていない者の思惑の違いが透けて見えるのも事実である。

もうひとつ気になるとすれば、1800mのスペシャリストではないかという疑惑だ。共同通信杯毎日王冠中山記念の3レースで負かしたG1馬は9頭を数え、すでに実力はG1レベル。ただし、その9頭すべてが根幹距離のG1を制しており、この点がダノンキングリーとの違いと言える。必ずしも国内戦にこだわる必要はなく、たとえばドバイターフなどはいかにも向きそうだが、根幹距離の克服がG1獲りの最終関門となる。

同様に④着のインディチャンプも馬体増の影響に加えて、1800mはわずかに距離が長いのだろう、直線では伸びを欠いた。斤量も厳しく、今回は条件が悪かった。本領発揮はやはりマイル戦か。

ラッキーライラックは昨年に続く②着。昨年はこのあと牝馬マイル路線に向かって結果を残せなかったが、今年は大阪杯へと向かう。勝負どころで少し動きが重かったのは前述した馬体増の影響もあったのだろう。それでも最後はしっかり伸びて連を確保。昨秋から中距離に専念して以降はすっかり安定し、本番でも期待できそうだ。

嬉しかったのはソウルスターリングだ。近2走となるはずだったエプソムC府中牝馬Sをいずれも取り消したあとの久々の一戦で、③着に粘って往年の力の片鱗を見せてくれた。ドイツの血を活かしたスタミナ十分の配合で、個人的にはもっとやれたと思うのだが、その才能ゆえに早期から能力を発揮したことがかえって仇になった印象を持っている。この後は引退前にもう一戦する可能性もあるようだが、いずれにしても、今後は母としての活躍にも期待したい。


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