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速攻レースインプレッション

レースは大荒れ、静かな降着劇となった

文/後藤正俊(ターフライター)、写真/森鷹史


遂に無観客でのG1開催となってしまった第50回高松宮記念。今週から馬主も入場自粛となり、表彰式も行われないことが決まった。開催は続けていられるが、今後が大いに心配される。中山競馬は季節外れの降雪で3R以降が中止になったことも加わり、春のG1シリーズは前途多難を感じさせるスタートとなった。

28日夜からの悪天候で中京競馬場は不良馬場からのスタート。7R以降は重馬場に回復したが、電撃の6ハロン戦としてはやや水が差された馬場状態となった。1番人気に推されたのは昨秋のスプリンターズS覇者タワーオブロンドンで3.8倍。2、3番人気は昨年の最優秀3歳牝馬グランアレグリア、前哨戦のオーシャンSを快勝したダノンスマッシュがともに4.1倍で続き、3強対決の様相を呈していた。

だがレースは大荒れとなった。スタートで16番枠からモズスーパーフレアが果敢に飛び出して先手を奪ってレースを引っ張ったのは予想通りだったが、そのモズスーパーフレアが中京の長い直線コースに入ってもバテない。ゴール前で好位から抜けてきたダイアトニックに一旦は並ばれたように見えたが、そこから差し返す。

さらに3番手追走から仕掛けを遅らせた15番人気クリノガウディーが馬場の真ん中から抜け出しにかかったが、ゴール前で急激に内にヨレてダイアトニックにぶつかり、北村友騎手が手綱を引く大きな不利。その内のモズスーパーフレアにも玉突き衝突となり、松若騎手もややバランスを崩す不利を受けた。その3頭の激しい競り合いを見ながら大外からグランアレグリアが追い込み、4頭がほぼ一線で入線。すぐに審議ランプが点いた。

到達順位は1位クリノガウディー、2位モズスーパーフレア、3位グランアレグリア、4位ダイアトニックと掲示されたが、審議の結果、1位入線のクリノガウディーは④着に降着。優勝はモズスーパーフレア、②着グランアレグリア、③着ダイアトニックという結果になった。

G1の1位降着は1991年天皇賞・秋のメジロマックイーン、2006年エリザベス女王杯のカワカミプリンセス、2010年ジャパンCのブエナビスタに続いて4度目となったが、無観客競馬で場外発売所も閉鎖されているため「馬券を間違って捨てた」というクレームは起こりようもなく、阪急杯2位入線③着降着のダイアトニックの時と同様に、無観客競馬ならではの静かな降着劇となった。

逃げたモズスーパーフレアの前半3ハロンは34秒2、後半は34秒5と平均ペースに持ち込んだことが功を奏した。昨年の高松宮記念はやはり外枠の15番枠から前半33秒2で逃げたが、後半は35秒8で⑮着大敗。昨秋のスプリンターズSは前半32秒8、後半34秒4で②着と直線の短いコースならハイペースで飛ばして粘り込むこともできるが、やはり中京だとペースが重要になる。その点で松若騎手の見事なペース判断だったが、「モズスーパーフレアが逃げれば速い」というイメージづくりができていたことも、早めに競り掛けられない展開を呼んだとも言えるだろう。松若騎手モズスーパーフレアともにG1初勝利。今後もこのコンビの逃走劇から目が離せない。

グランアレグリアは追い込み勢では1頭だけ伸びてモズスーパーフレアとハナ差の②着。ダノンスマッシュタワーオブロンドンがまったく伸びてこない中、この馬場状態で33秒1の末脚を繰り出したのはさすがのものだった。1200m戦は初挑戦だったが、まったく問題なかった。良馬場ならさらに切れ味を増すはずで、今後はマイル戦だけでなく短距離戦でも主役を務めていくことになりそうだ。

③着ダイアトニックは、前走が加害馬で今回が被害馬という不運な巡り合わせ。不利の大きさと着差を考えれば、この馬がもっとも高いパフォーマンスを見せていた。初挑戦の1200m戦でも自在な立ち回りを見せた素直な気性とスピード能力は大きな武器であり、今後の馬券作戦では「高松宮記念の実質的な優勝馬はダイアトニック」であることを忘れないようにしたい。

無念の④着降着となったクリノガウディーには驚かされた。まだ1勝馬で好不調の波が激しいため狙いづらい馬だが、朝日杯FSではアドマイヤマーズの②着でグランアレグリアに先着しているのだから、潜在能力は高いのだろう。斜行は、和田騎手が常に左ステッキで必死に立て直そうとしていたことを考えると、この馬の癖が大きいのだろうが、その気性の難しさが解消されれば、今後素質を一気に開花させるかもしれない。

⑩着ダノンスマッシュ、⑫着タワーオブロンドンの敗因ははっきりとしないが、ダノンスマッシュは左回りコースに問題があるのかもしれない。タワーオブロンドンは、かなりのこじつけだが、初めての日本人騎手の騎乗に何か戸惑いがあったのだろうか。こなせないほどの重馬場ではなかったはずだが。

通常なら場内が騒然となるような高松宮記念の結末が、静寂に包まれた中で演じられたことが、非常事態が近づいているいまの日本の異常な状況を示していたようにも見えた。


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