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速攻レースインプレッション

男勝りのキャラクター、牡馬撃破でG1・3勝目

文/鈴木正(スポーツニッポン)、写真/森鷹史


「コロナウイルスはしんどいけど、みんな頑張りましょう」

ヒーローインタビューでM.デムーロ騎手がそう言った瞬間、はっと気付いた。東日本大震災の直後、日本中が沈み込む中、ドバイワールドCをヴィクトワールピサで勝ち、「日本の皆さん、元気出して頑張りましょう」と遠く中東から笑顔を送ってくれたのもミルコだった。

何より、彼の母国イタリアは今の日本以上に大変な状況になっている。「頑張りましょう」には日本の人々だけでなく、母国へのメッセージも込めていたのではないか。そして、それはこの大阪杯への多大なモチベーションになっていたのではないか。そんな気がした。

もし、観客が阪神競馬場に詰めかけていたらスタート直後からどよめいていただろう。1番人気ダノンキングリーが何と逃げの手に出た。ハナを切るのはデビュー以来初めて。ただ、周囲を見回しても行きそうな馬がおらず、ダノンキングリー自身の出来も絶好。馬は完全に走る気になっている。この状況下で馬を無理に下げる手はない。実際、馬は逃げに戸惑うことなく、1000m通過は60秒4とゆったり。敗れはしたが横山典騎手最善の手を打ったと思う。

ラッキーライラックの位置は絶妙だった。逃げるダノンキングリー、その横にぴたりと付けたジナンボーを見ながら、やや距離を取った3番手。「中山記念でのダノンキングリーは強かった。だから、あの馬を見ながらの競馬。思ったより前めだったが展開的にはうまくいった」。キーとなる馬をがっちりマークできたのだから、道中はどの馬よりも優位に進めることができた。前走を叩いて馬の出来も一変していた。「前走は思ったより反応が悪かったが今回は集中力があって仕上がっていた。3~4角でハミを取って手応えは抜群だった」(デムーロ騎手)。

この形で直線を迎えれば、あとはどう抜けてくるかだけ。最初は前が開かず我慢を強いられたが残り200mで開いた。追い出すと馬が鋭く反応した。残り100mで先頭。しっかり前に出た。ゴール手前から2度、デムーロ騎手は左腕を前へと突きだした。「また(ガッツポーズが)早めになっちゃった」と苦笑いしたが、喜びがあふれていた。

ラッキーライラック阪神JFエリザベス女王杯牝馬限定G1を2勝しているが、実は牡馬との混合戦は香港ヴァーズを含め、②着を外していない。「牝馬だが男っぽい。性格も強い」と話したデムーロ騎手。牡馬混合のレースではペースが上がりやすいなどの理由はあるだろうが、男相手にめっぽう強いというキャラクターは面白い。

物語はもうひとつあった。12頭中、2頭しかいない牝馬によるワンツー。しかも、②着クロノジェネシスを管理する斉藤崇師は調教助手時代、勝ったラッキーライラックが所属する松永幹厩舎にいた。つまり、今年の大阪杯師弟によるワンツーだった。斉藤崇師が調教助手時代に担当した馬といえば名牝レッドディザイア牝馬の管理に関しては松永幹師斉藤崇師もお手のもの、というところだろうか。

そのクロノジェネシス。乗り方はパーフェクト。直線半ばで北村友騎手はほぼ勝利を確信しただろう。勝ち馬にインをさばかれては仕方ないというところ。今回は相手が悪かった。ただ、非常に強かった京都記念のレースぶりと合わせて考えても、この安定感はしばらく崩れそうにない。この先もG1で好勝負を繰り返していくはず。競馬史に残る名牝への道を歩み始めていると思う。

③着ダノンキングリーは前述の通り、最善の競馬をしての着順。競馬には、どんなに万全の出来で臨んでも勝てない時がある。④着はインから猛然と伸びたカデナ。ゲート入り直前、緊張した雰囲気が見えた鮫島克駿騎手だったが、この競馬はいい経験になるはずだ。

3番人気ブラストワンピースはいいところなく⑦着。パドックで見た馬体は素晴らしいと感じたが、どうしたことか。直線で川田騎手に追われても、心ここにあらずという雰囲気。ちょっと敗因が分からなかった。


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