速攻レースインプレッション
好騎乗に導かれ、“ミスター・エイプリル”が久々の美酒
文/編集部(T)、写真/小金井邦祥
スタートから最内枠のナインテイルズが果敢に逃げ、1枠2番のストーミーシーが2番手で、内枠の2頭が馬群を引っ張る形に。前半の入りが12秒2-11秒1-11秒0(3F通過は34秒3)で、昨年より0秒4遅くても、馬場を考えるとなかなかのペース。さらに4ハロン目が11秒1と緩まず、前に厳しい流れになった。
それでもストーミーシーは3~4コーナー中間で先頭に立ち、直線で一旦抜け出したが、残り200mで失速。それに付いていったジャンダルム、マイスタイルあたりも伸びを欠く。代わって伸びてきたのが内で脚を溜めていた石橋騎手騎乗のクルーガーで、連れて伸びてきたボンセルヴィーソ、レイエンダに2馬身差を付け、悠々とゴールを駆け抜けた。
ペースが流れ、さらに早めに先頭に立ったのが3番人気のストーミーシーだったことで、前がかりの競馬に。とはいえBコース替わり1週目ということもあって、あまり後ろだと届かない。各騎手にとって、立ち回りが難しい競馬になったことが想像できる。
そんな中、①着クルーガーの位置取りが「4-6-5」、②着ボンセルヴィーソが「4-8-5」で、ともに3コーナーで位置取りを下げていたのは偶然ではないはず。他馬が早めに仕掛ける中、勝負所でワンテンポ仕掛けを待った2頭の騎手(ボンセルヴィーソは木幡巧騎手)の好騎乗だったといえそうだ。
一方、1番人気に推されたプリモシーンは⑤着敗退、昨年の③着馬マイスタイルは⑭着に大敗。ともに昨年に比べてハンデが1~1.5kg増えており、ハンデ重賞を2年連続で好走することの難しさを感じさせる結果となった。
クルーガーは前回の勝利が16年4月24日のマイラーズCで、それ以来、実に4年ぶりの重賞2勝目となった。長らく勝利からは遠ざかっていたが、振り返ってみると、昨年4月13日にはオーストラリアのクイーンエリザベスSに遠征し、G1・25連勝目となったウィンクスのラストランで“わずか"1馬身半差の②着に健闘している。
特定の季節を得意とするのは人間も同じで、例えば春先~秋にかけて長いシーズンを戦うプロ野球選手でも、“あの選手はいつも春に調子を上げてくるなあ"と言われる選手がいる。花粉の飛散が落ち着かないと調子が上がらない、疲れが溜まりやすい、怪我しやすくてシーズンが進むと離脱してしまう、などの理由があるようだが、それもひとつの個性なのだろう。
“夏馬"や“冬馬"という言葉があるように、競馬の世界でも特定の季節を得意とする馬がいる。ただ、“春馬"とはあまり聞かないし、クルーガー自身は夏や冬にも勝ち鞍があるが、4月に重賞2勝を挙げているのだから、今の時期が合っていると言っても差し支えないだろう。野球の世界では“ミスター・メイ"と言われた選手がいたが、こちらは“ミスター・エイプリル"だ。
クルーガー自身は4月26日に香港・シャティン競馬場で行われるチャンピオンズマイル(芝1600m)、クイーンエリザベス2世C(芝2000m)の登録がある。今後どこに向かうかはまだ不透明だが、もし遠征の運びとなれば、8歳馬が悲願のG1初制覇を飾る可能性は、決して低くないのではないだろうか。