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速攻レースインプレッション

世界が注目したクラシック初戦は素晴らしいものだった

文/木南友輔(日刊スポーツ)


わが◎はスマイルカナ。コロナウイルスの感染拡大防止のため、今は関係者ファンも、みんなが協力し合い、取材の規制も厳しくなっているが、今週は幸運にも美浦で取材することができた。出来は絶好。枠の並びも最高。外に入った○レシステンシアとの「行った行った」を決めるためには3、4番手あたりに弱い馬にはまってもらえれば…、そう思って打った印だった。

朝からテレビの画面に映る阪神競馬場の強い雨を見ながら、「もっと降れ、もっと降れ」と願っていた。父ディープインパクト、母の父ディストーティドヒューモア、祖母の父ストームキャット。回りくどい言い方になったが、母の半弟がディープインパクト産駒で海外G1・2勝のエイシンヒカリ。彼のベストレースと言えば、道悪でぶっちぎったイスパーン賞だ。

「父ディープインパクト」の文字だけを見れば軽い馬場が合うと思ってしまうかもしれないが、血統的に馬場が重くなるのは大歓迎だった。注文どおりの先手。2番手に○レシステンシア。3番手以下は競り掛けられない。直線を向いたときは◎スマイルカナの勝利を意識できたが…。○レシステンシアの鞍上は天才・武豊騎手。さすがだった。9番人気の逃げ馬を見る形。並の騎手ならそのままセーフティーリードを与えてくれたと思うが、「エイシンヒカリでイスパーン賞をぶっちぎった騎手」はそれを許してくれなかった。

普通であれば、この前2頭で決まる「行った行った」の決着のはずだった。まさか、この馬場、展開で最後に差してくる馬がいるとは…。

デアリングタクトが3戦無敗で桜の女王に輝いた。新馬戦、エルフィンSに続く3連勝。今年も百花繚乱(りょうらん)の桜花賞となったが、17年レーヌミノル(前走フィリーズレビュー②着)、18年アーモンドアイ(前走シンザン記念①着)、昨年グランアレグリア(前走朝日杯FS③着)に続き、4年連続で「非チューリップ賞」組の勝利、3年連続で別路線組の勝利となった。

土日で5レース組まれていた芝1600m戦。土曜6R(3歳1勝クラス)が1分34秒6、9R丹波特別(古馬2勝クラス)が1分33秒9、11R阪神牝馬Sが1分32秒9、日曜7R(古馬1勝クラス)が1分34秒9、桜花賞が1分36秒1。大量の降雨で急激に馬場が悪化し、あまり時計の比較はできないが、そのなかでレースの前半の半マイルが46秒5、後半が49秒6の超消耗戦だったことは記憶しておきたい。

好位勢が沈んでいくなか、上がり最速で差し切ったデアリングタクト。前日の阪神牝馬Sはサウンドキアラでそつなく立ち回った松山騎手がここは迷わず直線で大外へ誘導した。ゴール後のガッツポーズは、思い描いていた会心の騎乗ができたという気持ちの表れだと思う。

3戦ともマイル戦だが、この日の結果から相当なスタミナも秘めていると考えていいだろう。エルフィンSのときもそうだったが、466キロの数字以上に走っているときは大きく見せる馬。父の母シーザリオ、母の母デアリングハートが05年桜花賞(ラインクラフト)で②③着というロマンのある血統。デアリングハートは次走NHKマイルCで②着。シーザリオオークスを制した。次の舞台は東京になるが、オークス参戦となったときに課題となるのは、左回りとか、距離とかではなく、「輸送」になる。5月の東京は超高速馬場になる可能性、瞬発力勝負になる可能性があるが、エルフィンSの脚を見る限り、瞬発力勝負にも対応はできるのではないか。

管理する杉山厩舎カンパニー産駒ウインテンダネス、アドマイヤマックス産駒ケイティブレイブ(どちらも転厩馬)、ジャスタウェイ産駒ロードマイウェイ、そして、エピファネイア産駒デアリングタクトを出した。血統的な派手さはなくても馬の長所を伸ばし、引き出す調教やレース選択ができている。これからも目が離せない厩舎だ。

騎手、厩舎、そして、デアリングタクトの父エピファネイアにも大きな1勝となったはずだ。新種牡馬としても現役時代同様のライバル関係を作りつつあるキズナエピファネイア。ここまではキズナがリードしている感が強かったものの、この桜花賞、土曜のニュージーランドTで②着だったシーズンズギフトなど、エピファネイア産駒の反撃がいよいよ始まったかな、という印象を与えることに成功した。

7番人気ミヤマザクラで単勝が10.4倍。人気上位の6頭が単勝オッズ10倍を切る難解なG1だった。木曜追いの影響を感じさせない仕上がりだったクラヴァシュドールはインを伸びた④着。距離が延びて良さそうなミヤマザクラが⑤着。ジリジリだったサンクテュエールが⑥着。この④~⑥着馬の3頭がオークスでは面白い存在になりそうだ。

最後になるが、新型コロナウイルスの影響で世界の競馬界が揺れている。英愛仏などの欧州主要国で競馬が中止となっており、今年の桜花賞は大げさではなく、世界が注目したクラシック初戦だった。ジャパンC覇者エピファネイアの血を引くデアリングタクトの圧勝劇はその注目に応える素晴らしいものだったと思う。日本の競馬界が無事に牝馬クラシック2冠目のオークスの日を迎えられるように願っている。


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