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速攻レースインプレッション

「直行」が日本の現代競馬の主流になるのかもしれない

文/山本武志(スポーツ報知)


今年の皐月賞「直行」が大きなキーワードになる一戦だった。昨年は前年のホープフルS以来の実戦となるサートゥルナーリアが単勝1.7倍の支持を受け、その期待に応えるような快勝。昨年は特に前週の桜花賞でも同じように朝日杯FS以来となるグランアレグリアが圧勝し、天皇賞・春でもアメリカJCC以来の実戦となったフィエールマンがG1・2勝目をつかんだ。

今となっては、昨春は「前哨戦から本番へ」という今までの競馬界の常識だけではなく、「余力残しのフレッシュな状態で本番へ」という新たな形がしっかりと地位を確立した、画期的なシーズンだったように感じる。

そして、今年だ。2歳時は重賞→G1勝ちという同じような過程を踏んできた東西の両横綱、コントレイルサリオスがともに「直行」というローテを選択した。サリオスは前走時で538kgという超大型馬。しかも、マイルまでしか走った経験がない。仕上がりや未知の距離への対応など、正直不安に思う要素は感じていた。

一方、コントレイル「直行」には正直、少し驚いていた。矢作調教師は管理馬の出走回数確保を始めとする様々な戦略や、海外への積極的な遠征などで型破りなイメージが強いかもしれないが、幼い頃から父が地方競馬の調教師という「競馬一家」で育ったこともあり、競馬に対しての接し方は古き伝統もしっかりと重んじている。

普段から親しくさせてもらっているが、色々と競馬の話をするたびに、そんな一面は垣間見える。例えば、昨今は2歳馬をなるべく早めにデビューさせる傾向にあるが、「古い考えかもしれないけど、クラシックを狙うような馬は、やっぱり秋にデビューさせたい」と王道ローテへのこだわりを見せたりする。

そんなトレーナーにコントレイルのローテについて聞いた時、こんな言葉が返ってきた。「自分としては基本的に1回叩いた方がいいというタイプなんです」。ところが、直行を決断した。そこにはオーナーサイドの要望も強かったが、理由をこう説明した。「うちのもサートゥルのように、前向きすぎるところのある馬。その面で向くのかなと思います」。決して型にはめるワケではなく、馬の個性をしっかりと見極め、重視する起用法。これが躍進を続ける厩舎の大きな礎となっている。

レースはキメラヴェリテが予想通りの先行策で、前半5ハロンが59秒8という淀みのないペースで流れた。好位の内めで今までと同じような位置をキープしたサリオスに対し、コントレイルは後方6番手からの追走。しかも、勝負どころではサリオスに比べて、数頭分外を回る、常識的には厳しい競馬と言える。

しかし、直線ではまだ十分に余力が残っていた。サリオスとの叩き合いに持ち込むと、ギアを徐々に上げるように加速する。後続を大きく突き放した一騎打ちの末、ねじ伏せるように半馬身差で勝利をつかんだが、着差以上の強さが伝わってきた。

このレースで強く感じたのは福永騎手コントレイルに対する厚い信頼だ。前とはかなり離された位置取りで、1番人気馬に騎乗しながら、大外へ進路を取るにはかなりの勇気がいるはずだが、勝負どころでの仕掛けにはまったく迷いがないように感じた。サリオスの直線での抵抗を見ると、あのタイミングで動かなければ厳しかったかもしれない。人馬一体となった走りが勝利をつかんだと言っていいだろう。

今年も終わってみれば「直行組」の勝利だった。しかも、同じく直行のサリオスも後続に3馬身半差をつけ、②着に踏ん張った。今春もシルクロードS以来の実戦だったモズスーパーフレアが高松宮記念を制し、桜花賞を勝ったデアリングタクトもエルフィンS以来の実戦だった。昨秋もクロノジェネシス(秋華賞)、アーモンドアイ(天皇賞・秋)、リスグラシュー(有馬記念)など様々なビッグレースで間隔を空けた馬たちが勝ってきた。休み明けが不安材料、という感覚が時代遅れだということはすでに感じていたが、ここまでくると、今や休み明けはむしろ「買い」という思考回路に切り替えた方がいいかもしれない。これが日本の現代競馬の主流になりそうな雰囲気をひしひしと感じている。

ただ、そうなるとクラシック2冠目となる日本ダービーはここから中5週の間隔で行われる。今までの常識から考えると叩いた上積みが加われば…、となるかもしれないが、先ほども書いたように時代は変わっている。しっかりと力を出せる状態からの5週間をどのように過ごし、3歳牡馬たちの大目標といえる競馬の祭典へ向かっていくのか。その変化を注意深く、見守っていきたいと思う。


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