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速攻レースインプレッション

騎手のヘッドワークと馬の地力がかみ合った勝利

文/鈴木正(スポーツニッポン)


終わってみれば4コーナーで先頭と2番手の馬による決着。だが、単なる行った行ったの競馬とは異なる、濃密な騎手同士の駆け引きがあったNHKマイルCだった。

勝ったラウダシオンM.デムーロ騎手はレース後の記者会見で「平均ペースで強い馬だから」と言った。「レースVTRは何度も見た」とも語った。レースラップを改めて確認すると前半3F34秒1、後半は34秒5。望んだ通りのペースになっていた。

デムーロ騎手のうまさはスタートして15秒後くらいの何気ないシーンに表れていた。スタートで出負けしたラウダシオンだったが、二の脚の速さでポジションを上げていく。好スタートを切ってハナを奪ったレシステンシアの横に並ぶと、デムーロ騎手ルメール騎手に視線を送った。この一瞬については、いろいろな見方ができる。

「少しでもペースを落とすつもりなら俺が行くぞ」なのか「楽に逃げているわけではないからな。ピタリと付いているから忘れるな」なのか。その存在を見せてから、スッと下がった。レシステンシアルメール騎手はどう感じただろう。あまり、いい気持ちはしないはずだ。「楽に逃がしてはくれないな」と感じたはずだ。そういう時は基本的に馬も同じことを思っている。プレッシャーのかかる逃げになったことは間違いない。

だが、レシステンシアもさるもの。ラウダシオンが下がったのを見て、11秒9、12秒0とペースを落とした。落としたと言っても微妙なラップ。このあたりがルメール騎手のうまさだ。ちなみにこのラップの少し手前でタイセイビジョンプリンスリターンが、ややガチャガチャしてリズムを崩した。ルメール騎手のつくりだす変幻自在のペースの綾にのみ込まれた。

4コーナーのカーブを迎える。ここはひとつ、レシステンシアにとって試練だった。初の左回り。ルメール騎手はレース後、「物見をした。初めての左回りの影響だった」と話した。確かに、馬の首の傾く角度が大きい。フットワークも急に気持ちが入っていない感じになった。戸惑っていたことは明らかだった。

とはいえ、戦前の予想通りにレシステンシアが先頭で直線を向いた。抜群の…とまでは言えないが、ラウダシオンにも手応えは残っていた。レシステンシアもシナリオ通りに手前を替えて迎え撃つ。だが、手前が替わってしまう。そしてまた戻った。馬の戸惑いが手に取るように分かった。残り200m。ついにラウダシオンが先頭。もうレシステンシアに抵抗する力は残っていなかった。ラウダシオンが1馬身半、前へ。自ら仕掛けた駆け引きによって平均ペースを呼び、レシステンシアをねじ伏せた。騎手のヘッドワークと馬の地力がかみ合った

思えばファルコンSで前めに位置し、もっとも踏ん張ったのがラウダシオンだった。②着とはいえ、力は見せている。ハナを切り、最後でもう一度脚を使ったクロッカスSも強かった。だが、3戦3勝馬2歳牝馬女王の陰に隠れ、死角となっていた。自信を持って堂々とマイルに挑んだ陣営には拍手を贈りたい。父リアルインパクトは初年度世代からG1を制覇。そういえば、3歳にして安田記念を制し、歴史を塗り替えたのが、まさにリアルインパクトだった。3歳春のマイルでの強さは父譲りだった。

レシステンシアも拍手ものの②着。ここまで述べた通り、いくつもの厳しい場面がありながら連対圏に踏ん張ったのは地力以外の何物でもない。これで長距離輸送も左回りも経験した。頭のいい馬だ。次回以降は大きくパフォーマンスを上げてくるに違いない。

他馬はなかなか勝負に加わることができなかったが、③着ギルデッドミラー福永騎手の乗りっぷりが非常に良かった。馬場を考えれば、外を回す余裕はない。インで最短距離を走ることを心掛け、直線では空くのを待って落ち着き払った騎乗だった。④着タイセイビジョンは3角でガチャガチャとしたシーンが惜しまれる。ただ、前めで勝負したことは石橋騎手を褒めていい。快勝したアーリントンCの位置取りにこだわることなく、馬場に合わせて立ち回った。いい騎手になったと感じる。

3戦無敗コンビの1頭。ルフトシュトロームは最後にいい脚を使って⑤着。いろいろ初物尽くしだったが馬にはいい経験になったはずだ。サトノインプレッサは⑬着。8枠17番はいかにも厳しく、高速決着への対応どころではなかった。ちょっとかわいそうだった。




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