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速攻レースインプレッション

ヴィクトリアマイルのアーモンドアイ以上の衝撃だった

文/後藤正俊(ターフライター)


安田記念アーモンドアイの出走が大きな話題となった。誰もが認める最強牝馬であり、ヴィクトリアマイルでは馬なりのまま4馬身差、1分30秒6をマークして、ファンを震撼とさせる強さを見せた。同じ東京1600mの舞台で、圧倒的な1番人気も当然のことだと言える。だが、競馬は「確率のゲーム」である。G1勝ち馬が10頭とマイル界の最強馬がズラリと揃った中で、単勝1.3倍という人気はあまりにも人気過多になっていると思わざるを得なかった。

牝馬限定のヴィクトリアマイルは1.4倍だったし、昨年の安田記念は単勝1.7倍ながらスタート直後の不利で③着に沈んだ。どの馬もベストパフォーマンスを見せてくれることを望んではいるが、どんなレースでもすべてがパーフェクトに進むことがないのが競馬である。出走全馬がアーモンドアイを標的に「この馬を負かそう」と挑んでくるのだから、それを克服することも並大抵のことではないのではないかとも思われていた。

そんな心配が的中した。4枠5番の好枠を引き当てたアーモンドアイだったが、ややスタートでもたついてしまった。昨年のスタートの不利ほどではなかったものの、後方からの競馬を余儀なくされた。道中も前走のヴィクトリアマイルの時にような、うなるような気配が何か見えない。直線で外から徐々に進出し、粘るインディチャンプを交わし、外から追い込んだノームコアを退けたのはさすがに女王らしさだったが、その2馬身半先に楽々とゴールしていたのがグランアレグリアだった。

アーモンドアイより1世代下のグランアレグリアだが、同じルメール騎手を背に桜花賞で②着シゲルピンクダイヤに2馬身半差をつけて1分32秒7で快勝した時点では、1分33秒1で②着ラッキーライラックに1馬身3/4差だったアーモンドアイ以上に「歴史的名牝」の評価を受けていた。わずか1年2ヵ月前の話である。

その後はNHKマイルCで降着となるなどやや順調さを欠く面もあったが、復帰戦の阪神Cでは②着フィアーノロマーノに5馬身差をつけて圧勝し、この勝利が評価されて昨年の最優秀3歳牝馬のタイトルを獲得した。前走の高松宮記念はやや距離不足だったが、重馬場を克服して直線は1頭だけ別次元の33秒1の末脚で②着(3位入線繰り上がり)。もっとも力が発揮できる、馬場が回復したマイル戦となれば、単勝12.0倍の3番人気という評価は低過ぎるようにも思えた。2~3歳時は気まぐれな面も見られたが、古馬になってすっかり安定し、稀有な才能を開花させているように見えた。

平均ペースを中団の7~8番手でしっかりと折り合ったグランアレグリアは、直線で馬場中央に持ち出すと楽々抜け出し、上り3ハロンは33秒7でまとめて1分31秒6。良馬場だった昨年のインディチャンプが1分30秒9だったのと比べると0秒7遅いが、稍重馬場だったことを考慮すれば同等の評価ができる。後方から追い込んだアーモンドアイの上り3ハロンが33秒9だったことを考えると、仮にアーモンドアイが同じ位置取りだったとしても、グランアレグリアが勝利していた計算が成り立つ。

何よりも、このメンバーを相手にマイル戦で2馬身半差をつける芸当は、ヴィクトリアマイルアーモンドアイ以上の衝撃だった。アーモンドアイ、リスグラシューに続く歴史的名牝がまた1頭誕生した。秋シーズンは毎日王冠マイルCS香港マイルのローテーションが想像できるが、馬主のサンデーレーシングにとって平地G1・24レース中、この安田記念で23勝目となり、残るは高松宮記念だけになったという。来春の高松宮記念で馬主としてのコンプリートをこの馬で狙うというのも、ひとつの目標になるのかもしれない。

アーモンドアイの敗戦に関しては「芝G1・8勝の壁」「皇帝の呪い」なるものも囁かれているが、シンボリルドルフの時代とはG1レース数が根本的に違う。秋シーズンにはあっさりとクリアすることだとは思うが、今回の行きっぷりの悪さを考えると、やはりある程度のレース間隔は必要だと思われるし、ベストは2000m前後なのかもしれない。順調なら天皇賞・秋で芝G1・8勝の新記録樹立はほぼ確実なのではないだろうか。

インディチャンプはさすがの安定感を見せたが、やはりベストはマイル1分32~33秒台の決着になった時だと思われる。タフなノームコアは、今後も海外遠征でディアドラのような活躍を見せてくれる予感がする。アドマイヤマーズはさすがに半年ぶりの実戦がきつかったが、次走は変わってくるはず。ダノンキングリーダノンプレミアムもまだまだ見限れず、日本のマイル界の層の厚さが世界を先導する立場にあることを、改めて示した安田記念だった。


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