独自視点で穴馬推奨!競馬予想支援情報【サラブレモバイル】

サラブレモバイル

メニュー

ログイン

速攻レースインプレッション

近年でもっともタフな馬場で世界レベルのポテンシャルを示してみせた

文/木南友輔(日刊スポーツ)


クロノジェネシスが6馬身差の圧勝。そして、②着キセキが③着以下にさらに5馬身差をつけた。春の東京開催にありがちな高速決着の瞬発力勝負ではこういう競馬は見られない。「これがグランプリ」というレースだった。

上がり3ハロン最速だったクロノジェネシスの数字が36秒3で2番目に速いのがキセキ37秒2。掲示板に載った5頭はすべて38秒を切ったが、掲示板に載ることができなかった馬たちの上がり3ハロンはすべて38秒を超えていた。

ひと言で言えば、タフな馬場の持久力勝負。重たい馬場、デコボコの馬場に動じない強い精神力、脚力を求められた。過去10年で8枠が7勝というデータがあったが、そのデータどおり、今年も外枠で馬場を選んで走った馬が勝ったレースという印象が強い。

同じ稍重の発表だった16年マリアライトは2分12秒8、17年サトノクラウンは2分11秒4、18年ミッキーロケットは2分11秒6の決着。同じ稍重でも性格は大きく異なる。良馬場で2分13秒台の決着だった13年、14年のゴールドシップは上がり3ハロンが35秒台。2分14秒4の遅い決着だった15年ラブリーデイのときは34秒台の上がりが求められた。近年の宝塚記念もっともタフな馬場になっていた。

阪神競馬場の芝の馬場状態は6R終了後に稍重から良馬場へ、10R前に再び良馬場から稍重へ変更になった。記録上、10Rの前後で雨が降っていた時間は20分間弱。ただ、その影響はすさまじく大きかったのだろう。7Rの古馬1勝クラス(ラインハイト)の勝ちタイムが2分14秒4。ただ、このレースは上がり3ハロン最速タイだった4頭が36秒5をマークしていた。まだ普通の数字が出せる状態だった。

スタート後、ハナを奪いにいったのがトーセンスーリヤ。父系がサドラーズウェルズ、近親にテイエムプリキュア。前走の新潟大賞典が軽ハンデとはいえ、強い勝ちっぷりだったので、G1初挑戦でこれだけ立派な逃げを打てたのは秋が楽しみになった。番手を進んだのがダービー馬ワグネリアン。好位のインをペルシアンナイト。少々の荒れ馬場もこなせるG1馬たちが直線は失速した。

最初のコーナーに入る時点で各馬のキックバックが大きく蹴り上がっているのがはっきりわかった。「下級条件のレースに比べると、G1のキックバックは力強い」。これまではなんとなくそう思っていたが、安田記念グランアレグリアの池添騎手の負傷がそれをはっきり教えてくれたシーズンでもあった。

先行争いが少しゴチャついたのは差しの決まりにくい馬場を各騎手が認識していたから。力のいる馬場が得意なはずのブラストワンピースも手応えがもうひとつ。ダンビュライトスティッフェリオあたりも動けない。ラッキーライラックの外を上昇したクロノジェネシスは抜群の手応えだった。

驚きは後方待機、向正面でまくっていったキセキ。調教再審査明けだった前走から状態を上げてきた角居厩舎、担当の清山助手、この競馬を演じた武豊騎手はさすがだった。一緒に動いたグローリーヴェイズは直線を向く手前で脱落。香港ヴァーズは強く、1枚上のG1馬になっている可能性もあったが、馬場適性や体調、鞍上の好騎乗がなければ国内のG1を勝つことはできなかった。

③着モズベッロは昨夏の中京、重馬場で楽勝した実績があったし、⑤着メイショウテンゲンベストパフォーマンスが昨年重馬場だった弥生賞。③⑤着にこの道悪巧者が入ったこともレースの性格を如実に教えてくれる。

1番人気で④着のサートゥルナーリア「あそこからよくここまで来たな」という競馬。インコースで泥を浴び続け、3、4コーナーで位置を下げて、外へ出していくロス。完全に馬場と枠順に泣いてしまったもので、この馬に関しては力負けではない。

冒頭で着差のことを書いたが、着差というワードと結び付くのが「レーティング」。客観的な数字で評価したいのに、ハンデキャッパーたちの主観が含まれてしまうのが「レーティング」というものだ。100人いれば、100人全員が納得することは絶対にありえない。

個人的に昨年のワールドベストレースホースランキングの結果は不満で、それはかなり特殊な馬場で行われた凱旋門賞の上位馬(エネイブル、ヴァルトガイスト)の評価が高く、そこでボロ負けした日本馬の存在があったこと。昨年は有馬記念のリスグラシューのパフォーマンスが世界一だったと思っている。

欧州が競馬を中断するなか、無観客で開催を続けた日本。安田記念に続き、宝塚記念も好メンバーがそろい、クロノジェネシスが強い競馬をした。②着キセキとの着差、それ以外のメンバーとの着差をJRAと世界のハンデキャッパーがどう評価するのか。今夏、今秋のクロノジェネシスの海外遠征を論じるのはなかなか難しいが、世界中のどのレースに出しても好勝負を演じるだけのポテンシャルを示す競馬だったと思う。


TOPページに戻る