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速攻レースインプレッション

“適性の塊”ぶりを示して見事に雪辱を果たした

文/出川塁


七夕賞といえば、JRA屈指の荒れる重賞として知られるハンデG3。1979年から2004年までは1番人気が26連敗を喫しているが、当時は夏の福島最終週(4週目)に組まれていた。梅雨どきの開催でもあり、馬場が悪化した状態で行なわれる影響も大きかったはずだ。

2013年からは開催が2週目に移り、馬場の管理技術は著しく進歩している。現行の日程となった7年間に限った1番人気の成績は[2.0.1.4]。また、昨年はミッキースワローがトップハンデ馬として12年ぶりに勝利しており、以前より実力馬も走りやすくなってきた感はある。

それでも、一昨年は①着11番人気、③着12番人気、昨年も③着12番人気など過去7年でふたケタ人気馬が7頭も馬券圏内に突っ込んでいる。実のところ、2013年以降のレース全体の回収率は単勝133%、複勝144%だから、2週目開催になってからは出走全馬の単勝(複勝)を買っておけば悠々プラスを計上できたことになる。競馬を楽しむうえでそれが正しいかといえば別の話になるが、七夕賞というレースの難解さを示すひとつの数字ではあるだろう。

そして、ますますややこしいことに今年の馬場状態は重。この日の福島には同じ芝2000mのレースが他に2鞍組まれていたが、それぞれの勝ち時計は5Rの2歳新馬が2分7秒6で、8Rの古馬1勝クラスは2分4秒5と、かなり時計のかかる馬場コンディションになっていた。

実際、1番人気のジナンボーでも最終的な単勝オッズが単勝4.8倍だったのに対し、11番人気のオセアグレイトでも19.1倍。ふたケタ人気といっても、このオッズなら馬券になってまったく驚きはない。同じ11番人気でも18年に勝って大穴をあけたメドウラークは100.8倍だったから、意味合いはまったく異なる。ひと言でいえば大混戦で、どうやら今年の七夕賞もひと筋縄ではいきそうもなかった。

ゲートが開いて、まず目に入ったのは人気の一角だったヒンドゥタイムズの出遅れだった。デビュー以来10戦連続で芝2000mという徹底ぶりで、サマー2000シリーズにはいかにもうってつけ。重実績もあり、ハービンジャーマニアのでなくとも期待して当然の存在だったのだが、天を仰いだ人も多かっただろう。道中は後ろから2頭目の位置で、最後はいい脚を使いながらも④着まで。スタートの失敗がモロに響いた格好となった。小倉記念で巻き返しを図っても面白いと思うが、変則日程の今年は開幕週とあって良馬場では時計が速すぎるかもしれない。

もっとも、勝ったクレッシェンドラヴもゲートは出たがダッシュつかず、道中のポジションは決してよくなかった。ヒンドゥタイムズより前とはいっても、後ろから数えたほうが早い位置。しかし、そこから3~4コーナーのコース取りが実に巧みだった。荒れ気味のインを避けて馬群が外に膨らんだところで内からスルスルとポジションを上げて、直線の入り口では一気に3、4番手まで浮上。残り200mを切ったあたりでは外のブラヴァスの伸び脚がよく見えた瞬間もあったが、そこからの踏ん張りが一枚上手で最後は1馬身突き放した。

これで福島記念に続く重賞2勝目となり、七夕賞では②着に甘んじた昨年の雪辱を見事に果たした。父ステイゴールド、母の父Sadler's Wellsという字面通りの道悪巧者でもあり、コース、馬場ともに適性の塊だったと言うしかない。忘れてはならないのが鞍上の内田博幸騎手で、急遽の代打騎乗となったラジオNIKKEI賞に続く2週連続の重賞勝ち。勝負どころで見せたコース取りも判断の冴えを伺わせるものだった。

一方、史上6人目となる全10場重賞制覇が懸かっていた福永祐一騎手にとっては惜しまれる②着となった。それでも、騎乗したブラヴァスは重賞2戦目にして前走の新潟大賞典④着から確実に前進。母ヴィルシーナの初仔はまだ4歳で、無事にいけば重賞勝利のチャンスは遠からず訪れるだろう。

③着のヴァンケドミンゴは、このレースまで当地で4戦4勝という生粋の福島巧者。過去3回の重賞挑戦では高い壁に跳ね返されていたが、今回は自身の強みをしっかり活かして好走につなげた。対照的だったのが1番人気のジナンボーで、過去の4勝中3勝は大箱の東京。また、この日の福島芝2000mでは5R、8Rと人気のディープインパクト産駒が馬券圏外に敗れており、適性の差が結果にくっきりと反映される一戦となった。


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