速攻レースインプレッション
伸びしろ十分の血統で、厩舎の先輩ベルシャザールに続けるか
文/編集部(T)
出走馬14頭のうち、重賞勝ち馬は芝、ダート、地方交流重賞を含めて実に10頭。お盆の地方交流重賞3連戦を控え、同日にレパードSが行われることもあって3歳馬の参戦がなかったことを考えると、なかなかの豪華メンバーが顔を揃えた。
エルムSは前哨戦として、同距離のダート1700mで行われる大沼SやマリーンSをステップに臨んでくる馬も多い。実際、近5年ではどちらかのレースで③着以内に入っていた馬が馬券圏内に入っていて、その意味でもこの2レースは前哨戦として十分に機能しているといえるだろう。
そして今年も、大沼S②着のリアンヴェリテ、③着のハイランドピーク、マリーンS①着のタイムフライヤー、③着のアディラートが参戦。そのうち、マリーンSで3馬身半差の快勝を飾ったタイムフライヤーが、ここで1番人気を集めることになった。
一方、このレースは昨年②着のハイランドピーク、③着のサトノティターンのように、既に重賞を勝っていた馬が格の違いを見せて好走するケースも多い。タイムフライヤーは2歳時にホープフルSを勝っていて、"格"も備えた馬ではあるが、ダート重賞は未勝利。ダート路線で歴戦の古豪にどこまで戦えるか、という構図になった。
そしてレース。リアンヴェリテが注文通りハナに立ち、前半900m通過が55秒0。道悪だった近3年に比べると遅いが、良馬場としてはまずまずのペースで流れる。2番手にいたアナザートゥルースが4コーナーで早めに先頭に並びかけると、そこから一気に後続が殺到。外目を通ったタイムフライヤーが直線入口で先頭に立つと、マクリ気味に進出して一旦は前に並びかけたウェスタールンドの追撃を許さず、2馬身差でゴールを駆け抜けた。
結果的には上位7頭までが重賞勝ちの実績があった馬で、"格"がある馬が上位を占める形に。エルムSを1番人気馬が勝ったのは、12年ローマンレジェンド以来となった。
タイムフライヤーは2歳時にG1を勝ったことで、その時点ではクラシック候補に挙げられるほどの存在になったが、それからまさかの13連敗。今回は実に2年7ヵ月ぶりの重賞勝利だった。
とはいえ血統を見ると、タイムフライヤーの母はダートG1(Jpn1)を5勝したタイムパラドックスの全妹。ダートで活躍する下地は十分にあったということだろうし、タイムパラドックスは8歳秋のJBCクラシックを制していることを考えると、伸びしろも十分だろう。
似たような戦績の馬として思い出すのは、タイムフライヤーと同じ栗東・松田国英厩舎の所属馬ベルシャザール。2歳時にホープフルSを制し、芝で連敗を続けたが、2年半ぶりの勝利をダートで飾ったところまでよく似ていて、ベルシャザールはその後ジャパンCダートを制している。
タイムフライヤーはこれでダートのOP特別→重賞を連勝したわけだが、こういった戦績を残した馬は一気にG1(Jpn1)でも好成績を残すケースが多い。来年定年を迎える松田師がもうひとつ勲章を加えられるか、最後のチャンスとなる来年のフェブラリーSまで、注目したい。
ちなみに、今年のエルムSに出走した14頭の年齢別内訳は5歳馬が4頭、6歳馬が6頭、7歳馬が3頭、8歳馬が1頭で、3~4歳馬が不在だった。
調べてみると、今年JRAで行われた古馬混合のダート重賞で、4歳馬は[0.0.0.17]という成績だった。ワイドファラオ(かしわ記念)、ラプタス(かきつばた記念など)といった地方交流重賞勝ち馬は出ているので、今後は中央の舞台でも4歳勢の奮起に期待したいところだ。