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速攻レースインプレッション

歴史的な1年、という言葉以外は思い浮かばない

文/後藤正俊(ターフライター)、写真/森鷹史


歴史的な1年、という言葉以外は思い浮かばない。1週間前の秋華賞でデアリングタクトが史上初の無敗での牝馬3冠を達成した。そして今週はコントレイルが1984年シンボリルドルフ、2005年の父ディープインパクトに続く史上3頭目の無敗の牡馬3冠馬となった。

1984年にシンボリルドルフが3冠を達成した時、前年のミスターシービーに続いて2年連続で3冠馬の誕生を見られたことは「まさに奇跡。もう2度とこんな経験をすることはないだろう」と思ったものだが、それから36年、牡牝が同一年に無敗の3冠馬になるという、漫画でも出来過ぎだと思われるシーンに遭遇することができた。もしコロナ禍で開催が中止になっていたら、歴史はまったく違っていたかもしれない。デアリングタクト、コントレイルの強さはもちろんだが、様々な関係者による支え、そして運があったからこそ、この偉業が達成されたと言えるだろう。

単勝1.1倍の圧倒的1番人気に推されたコントレイルだったが、やはり無敗の3冠はそんなに簡単なものではなかった。思い返すと、シンボリルドルフは3~4角で出応えが怪しくなり岡部騎手が必死に手綱をしごいていた。ディープインパクトは1周目の直線でゴールと勘違いして掛かり気味になった。ともにヒヤッとする一瞬があった。コントレイルの3冠目も、これまでの圧倒的な6勝とはまったく違う辛勝だった。

好スタートから7~8番手のポジションを確保し、福永騎手は馬群に入れて掛からない工夫をした。逃げたキメラヴェリテの最初の1000mが1分2秒2と予想していたよりも流れたことで、コントレイルはそれほど掛からないで済んだように見えた。だが、そのコントレイルの外をスタートからずっと、アリストテレスルメール騎手がピッタリとマークをした。「相手は1頭だけ」と割り切ったルメール騎手らしい大胆な作戦だった。コントレイル福永騎手も、道中はずっとルメール騎手からのプレッシャーを受けていたはずだ。トウショウボーイとテンポイントの1977年有馬記念での対決を思い出した。

直線を向いてコントレイルが外目に持ち出して抜け出そうとすると、ルメール騎手も一完歩遅れて外から仕掛ける。ルメール騎手なら先に仕掛けてコントレイルの進路を塞ぐこともできただろうが、あくまでも正攻法で勝負に挑んだ。鼻面を合わせた2頭のデッドヒートが200mに渡って続いた。アリストテレスが並びかけるが、コントレイルは抜かせない。ゴール板ではクビ差、コントレイルが出て、死闘に決着がついた。

直線があと100m長かったとしても、コントレイルは抜かせなかったのではないだろうか。それは無敗馬の意地にも見えた。クビ差辛勝は、コントレイルがいつものように伸びなかったわけではない。③着以下は3馬身半差離れており、コントレイルの上がり3ハロンは35秒2で、後方から追い込んだ③着サトノフラッグと同タイム。アリストテレスは35秒1で、2頭だけが別次元の競馬をした結果だった。

無敗の3冠馬となったコントレイルには、今後はデアリングタクトとの無敗対決、そして古馬たちとの対戦が待っている。シンボリルドルフは菊花賞から中1週で臨んだジャパンCで③着に敗れた。ディープインパクトも古馬と初対戦となった有馬記念でハーツクライに屈し、ともに菊花賞後の1戦で初黒星を喫した。

無敗を続けていくのは容易なことではないが、決して適距離ではなく、馬場も荒れていた菊花賞は、コントレイルにとって厳しい条件だったことを考えれば、さらに上積みが期待できる。デアリングタクト、アーモンドアイ、クロノジェネシス、フィエールマン、グローリーヴェイズ、サートゥルナーリアらとの対決が有馬記念で実現するかどうかは判らないが、将来の種牡馬としての道も含めて、偉大過ぎる父を超えるためのスタートラインに立ったことは間違いない。

正攻法でコントレイルを苦しめたアリストテレスの強さも本物だ。春シーズンは腰の甘さが感じられ、ゴール前での詰めが一歩だったが、ひと夏を越して完全に本格化した。エピファネイア産駒で、母系はバレークイーン系。同じく菊花賞②着だった叔父リンカーンのように古馬になってさらに力をつけていくはずだ。距離は長い方が良さそうなので、おそらくコントレイルは出てこないであろう来春の天皇賞・春の最有力候補と言えそうだ。

③~⑤着は皐月賞、ダービーに出走した春の実績馬が並んだ。上位2頭との差は大きかっただけに今後を占うのは難しいが、④着ディープボンドキズナ産駒、⑤着ブラックホールゴールドシップ産駒で、ポスト・ディープインパクトキングカメハメハを狙う新進種牡馬レースで、一歩抜け出したエピファネイアを追う体制が着実に進んできたように見える。2番人気ヴェルトライゼンデは⑦着。皐月賞でも伸びなかったように、荒れた馬場は得意ではないのかもしれない。


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