速攻レースインプレッション
鞍上の巧みなリードに導かれ、開催休止前の最後の重賞で大波乱を演出
文/出川塁、写真/瀬戸口翔

その1頭と言えるのがサウンドキアラだ。過去の7勝中6勝を京都でマーク。京都金杯と京都牝馬Sの重賞2勝も含まれている。しかし、次に京都で走れるのは2023年で、その頃にはもう8歳。これほど活躍した牝馬が現役を続けているとはちょっと考えにくい。阪神牝馬Sも勝っているように京都専用機というわけではないものの、G1初制覇を目指すマイルCSを得意の競馬場で迎えられないのは実に痛い。
それだけに、京都に出走する最後の機会になるだろうスワンSは叩き台以上の意味を持ちそうで、ファンも1番人気に支持した。ところが結果は⑩着という思いもよらぬ大敗。道中は手応えよく追走しているようにも見えたが、直線に入ってまったく伸びなかった。
パトロールを確認すると、内枠から上位入線を果たしたカツジやアドマイヤマーズはスタートしてすぐ外に持ち出してインを避けて走っていることがわかる。しかし、最内1番枠だったサウンドキアラはハナを主張したロケットに蓋をされたようなところもあり、なかなか外に持ち出せなかった。結局、3コーナーに入るまで荒れたインを走らざるをえず、ここで見た目以上に消耗してしまったのかもしれない。
これに対して勝つことになるカツジ、というか鞍上の岩田康誠騎手が巧みだったのは、向こう正面ではインを避けつつも、3~4コーナーではラチ沿いを走って距離を稼いだところだ。そして、直線では再び馬場のいい外に持ち出し、後続の追い上げを封じきる。18年4月のニュージーランドT以来となる重賞2勝目は単勝143.7倍という大波乱となった。
このカツジ、19年2月の洛陽S③着を最後に掲示板にも載れないスランプが続いていた。今年に入ってからは新潟大賞典で初の2000mに挑んだかと思えば、前走のオパールSで初の1200mに出走と、復調のきっかけをつかもうと陣営も苦心している様子が見てとれた。そうした距離の変化は直接の結果にはつながらなかったものの、カツジ自身はいい刺激を受け取っていたのかもしれない。
考えてみれば、カツジも2歳時にデイリー杯2歳S②着、3歳時にもマイルCS④着など京都は得意な部類。この馬にとっても京都の開催休止は惜しまれるところだが、阪神のマイルCSでも実力を発揮することはできるか。2歳上の全兄ミッキーグローリーはG1級のポテンシャルを秘めながら、昨夏の関屋記念①着を最後に故障引退。カツジがその続きを見せてくれたら、血統好きにはなかなか熱い展開だ。
勝ち馬の大駆けに遭ったものの、②③着にはマイルG1を勝った実力馬が続いた。今年になって距離を縮めたステルヴィオは前走の京王杯SCに続く②着好走で、この距離が板についてきた感がある。阪神実績もあるだけに、2年ぶりのマイルCS制覇を虎視眈々と狙っていることだろう。
③着のアドマイヤマーズはこのところ1走おきに好走と凡走を繰り返しており、今回は好走の順番だった。スタート直後はやや出脚がつかず、初の1400mが響いているのかなとも思ったが、すかさずポジションを取り返して2、3番手へ。直線でも渋太く伸びて馬券圏内を確保した。次走はマイルCSか、それとも連覇を狙う香港マイルに直接向かうのか。いずれにしても、勝てば父ダイワメジャーを超える4つ目のマイルG1勝利ということになる。