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速攻レースインプレッション

今年のメンバーでは底力が一枚も二枚も上だった

文/石田敏徳、写真/川井博


大規模改修工事のため、長い休催期間に入った京都にかわり、今年のエリザベス女王杯は阪神競馬場で行われた。誰でも考えるだろうが、舞台の移設は予想を組み立てるうえでの大きなポイント。特にが重視したのは「高速馬場」「確たる逃げ候補が不在」のメンバー構成だった。

例年の9月開催が中京に振り替えられ、十分にメンテナンスされて秋開催の開幕を迎えた阪神の芝は絶好のコンディション。前週のファンタジーSに続き、土曜日のデイリー杯2歳Sでも2歳レコードが飛び出したように、速い時計の決着が目立っていた。ここに"ペースは速くなりそうにない顔ぶれ"という展開予想を重ねると、1番人気に支持されたラッキーライラックは盤石の存在とは思えなかった。

2番枠を引いた昨年のエリザベス女王杯では、内ラチ沿いの狭いスペースを突いたC.スミヨン騎手のリードに応え、鮮やかなイン強襲を決めた同馬だが、今年の枠順は大外の18番枠。ペースが流れなければ馬群の内に入り込めず、外々を回らされるロスの大きい運びを余儀なくされる。従って連覇のハードルは高いと考えた。

しかし一方、魅力的な穴馬が見つけられないことも確かだった。高速馬場向きの先行力の持ち主なら、ディープインパクト産駒リアアメリアに白羽の矢を立てたくなるところだが、重賞2勝時の②着馬はサンクテュエールにムジカ。牡馬を含めた一線級と互角に渡り合ってきたラッキーライラックの戦歴に比べると、現時点では大きく見劣りがする。そもそも「今年の3歳世代全体のレベル」についてはかなり懐疑的なのだ。

で、最終的にたどり着いたのがノームコアの①着固定」という結論。我ながら凡庸だけど、札幌記念の勝ちっぷりは鮮やかだったし、ヴィクトリアマイルをJRAレコードで制したぐらいだから高速決着もお手の物でしょう? ところがゲートが開くとそのノームコアが先手を奪い、しかも緩みのないラップを刻んで飛ばしたから驚いた。ああ、予想の前提がガラガラと……。

改めてレースを振り返ると、ポンと好スタートを切ったノームコアが少し"気負い"も感じられる勢いで飛び出し、横山典弘騎手も無理には抑えずにそのまま主導権。離れた2番手につけたリアアメリアをはじめとする後続の隊列が縦に長く延びていくなか、ラッキーライラックC.ルメール騎手は初手から位置を取りにいかず、なるべく外を回さないよう、慎重に運んだ。結果、腰を落ち着けたのが中団のやや後ろ。斜め前にはラヴズオンリーユーを見る形となったが、後方にいたウラヌスチャームがまくり気味に仕掛けた3コーナー、ルメール騎手もこれを追ってライバルより先に追撃を開始する。

この進出のタイミングが絶妙だった。馬群の外々を回りながらも"持ったまま"の手応えで前に迫ったラッキーライラックは、鞍上が本格的に仕掛けると力強い末脚を発揮。直線半ばで力尽きたノームコアを難なくかわして先頭へ抜け出し、外から追い込んできたサラキアラヴズオンリーユーの追撃も抑え込んで連覇のゴールを駆け抜けた。

上位3頭の着差はクビ+クビ差。しかし前半1000mの通過が59秒3、中盤以降もペースが緩む場面がなかった流れを馬群の外々を回って早めに動き、押し切ってみせたのだから着差以上に強い内容だったといえる。息の長い末脚を余すところなく引き出した鞍上の好騎乗も光ったし、何よりクロノジェネシスを下した大阪杯をはじめ、一線級と互角以上に渡り合ってきた戦歴の持ち主である。大外枠の不利を差し引いても、今年のメンバーでは底力が一枚も二枚も上だったということだろう。

③着のラヴズオンリーユーラッキーライラックを追って先に動いたぶん、最後の詰めが甘くなった格好。ただしサラキアも府中牝馬Sの勝ちっぷり(3馬身差の完勝)がフロックではなかったことを示し、着実な地力の強化を証明した。一方の3歳勢はウインマリリンが3番手追走から粘り込んで④着に善戦。ただやはり、古馬の一線級との間には小さくない"壁"が感じられたことも確かである。


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