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速攻レースインプレッション

数字の派手さがなくても伝わる強さだった

文/木南友輔(日刊スポーツ)


前週のエリザベス女王杯に続き、今年のマイルCSは史上初の阪神開催となった。この2つのG1を予想、検討するときに例年意識するのは「難解な京都外回りの下りを活かした前残り、あるいは直線のイン突き」。京都外回りを得意にしている馬ははっきりとしているので、リピーターレースになりやすい。

過去3年、エリザベス女王杯で3年連続②着の快記録を残したクロコスミアは昨年のレース後、オーナー関係者が「来年も京都ならもう1年現役でもいいけど…」と話していた。マイルCSだと、17年①着、18年②着、19年③着のペルシアンナイト。もちろん季節的なものもあるだろうが、京都外回りだと、安心して見ていることができた。直線が長く、坂がある阪神。今年は展開よりも各馬の力がそのまま反映されるレースになることが想像できたのだが…。

大方の予想どおり、ハナを奪ったのはレシステンシア。好位にはラウダシオンベステンダンク、そして、グランアレグリアの姿があった。前半のペースは上がらず、3ハロン通過が34秒9、前半の半マイル(4ハロン)の通過が46秒9。直前の9R、前残りの競馬になった甲東特別が同35秒9、47秒9のスローペースだった。それに比べると、1秒ずつ速いだけだった。

レシステンシアに焦点を絞って見てみると、逃げ切った昨年の阪神JFは3ハロン通過が33秒7、半マイル通過が45秒5のハイペースだった。昨年の阪神JFの1週間後、サリオスが好位3番手から押し切った朝日杯FSは33秒8、45秒4だった。この日のレシステンシアは内の2番枠から淡々とハナに立ったので、理想的な展開にも見えるのだが、頭に浮かんだのはスローで逃げて敗れたチューリップ賞。このときが35秒1、47秒1。今日のマイルCSとほぼ同じペースだった。

直線を向いて、後続にアッサリ捕まってしまったあたり、チューリップ賞と同じ競馬になってしまった印象が強い。骨折休養明けだが、調教は坂路で抜群の時計が出ていたし、馬体重が示すようにパワーアップも感じることができた。チューリップ賞のときよりも状態そのものは良く見えたのだが…。折り合って逃げることができた半面、暴走気味のラップで突っ込んだ阪神JF当時のこの馬の魅力は消えてしまった。

4コーナーで早めに早めに動こうとしていたのが、アドマイヤマーズ川田騎手。最初のコーナーの入りで内にグランアレグリアがいるのを確認。グランアレグリアに勝つためには同馬より先に仕掛けなければ話にならない。積極的に動いた川田騎手を見るように、インディチャンプ福永騎手グランアレグリアにフタをする形で上昇してきた。結果的には②着、③着に終わるのだが、インディチャンプ福永騎手アドマイヤマーズ川田騎手の勝負に出る動きは見応えがあった。

グランアレグリアが阪神の外回りマイルを走るのは3度目。抑えきれない手応えで外から先頭に立って押し切った桜花賞、そして、他馬のマークに遭って沈んだ2歳秋の朝日杯FS。絶好の位置で運んでいるように見えながら、一方で後者の惨敗劇を思い起こさせるような馬群での競馬。他陣営から受けるプレッシャーもあったはずだが、直線半ばで進路ができればそれで十分なほど、今のグランアレグリアは強く、ルメール騎手の手綱さばきにも落ち着きがあった。

1分32秒0、上がり33秒2は今開催の高速馬場を考えると、特筆すべき数字ではないが、数字の派手さがなくても伝わるグランアレグリアの強さだった。

参戦わずか2頭の関東馬が2強を形成したマイルCS。2番人気だったサリオスは直線で大外をよく追い込んできたものの、⑤着に敗れた。上がり3ハロンはメンバー最速だし、力を証明することはできたのだが、序盤の位置取りの差が大きく出る格好になった。過去の2敗は皐月賞、ダービーでコントレイルが相手だったもの。今回は多頭数、大外枠、展開…、厳しい条件がいくつも重なったもので、評価を下げる必要はない。あえて言うなら、騎手を固定できないのがこの馬の弱み。もったいない敗戦だった。

冒頭で書いた「マイルCSでイン突きを意識しなければならない」理由。それは10年エーシンフォワード、14年ダノンシャークのイン強襲があったからだ。京都外回りから力勝負の阪神外回りに変わって、そんな「イン突き」への警戒を薄くしてしまっていた人は多かったと思う。直線で画面に映るスカーレットカラーに肝を冷やした人、心躍った人は多かったはず。さすが、岩田康騎手とうならされた。6枠11番からいつの間にかラチ沿いを狙える位置へ誘導。直線は迷わず狙ってきた。

歴史的な天皇賞・秋を走った後でスカーレットカラー自身の状態面はどうかと思っていたが、もう少しで岩田康騎手のイン突きが決まるところだった。「例年の京都だったらスカーレットカラーの強襲は決まっていたのか」と想像したり、「阪神でも岩田康騎手のイン突きは魅力」と脳裏に焼き付けたり…。マイルCS4年連続参戦のペルシアンナイトも着順は大きく下げることになったが、絶望的なポジションから⑦着に食い込む追い込み。こちらも「京都だったら」…、そう想像したくなるだけの見事な走りを見せてくれた。

昨年までの京都から阪神へのコース替わりを意識してきたここ2週のG1。結果はエリザベス女王杯がラッキーライラックの連覇、マイルCSは昨年覇者インディチャンプが②着に好走。この秋のG1は1番人気が結果を出し続けているし、強い馬はどんなコースでも結果を出すことをこの2週のG1は証明してくれた。いよいよ来週はジャパンC。今秋の東京競馬場は馬場傾向がつかみづらいが、強い馬が強い競馬をしてくれることを願っている。


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