速攻レースインプレッション
1年分の充実度と成長が感じられた
文/編集部(M)
先行馬が揃って先行激化が予想された今年のカペラSだが、ダンシングプリンスやジャスティンが無理に競りかけず、内からハナを主張したヒロシゲゴールドに先頭を譲る形になり、意外なほどに落ち着いた。
まあ、落ち着いたと言っても前半3Fの通過は33秒2で、今年で13回目となったカペラSにおいては5番目に速い流れだった。しかし、近年の上級のダート短距離戦線においては、これくらいのペースなら普通だろう。前半3Fが33秒2というのは土曜日の準OP(アクアラインS)と同じで、今回が昇級初戦だったダンシングプリンスも問題なく先行できていた。
アクアラインSもカペラSも逃げた馬が直線に入って失速したことは同じだが、アクアラインSでは中団を追走していたサンライズカラマが差し切ったのに対して、カペラSでは先行したジャスティンがレッドルゼルの追撃を凌いで優勝した。この辺りがレベルの違いだろう。もちろん勝ち時計も、カペラS(1分9秒8)の方がアクアラインS(1分10秒6)より速かった。
レース後に鞍上の坂井瑠騎手が話していたように、ジャスティンはヒロシゲゴールドやダンシングプリンスを見ながらレースを進められる枠順(7枠13番)も良かったのだろう。ただ、斤量58kgを背負うのが初めてで、57kgも前走のJBCスプリント(⑧着)だけだったから、重斤量で自分の競馬ができるのか、不安を感じていた。しかし、終わってみれば、斤量差などまったく感じさせない強さだった。
ジャスティンは1年前に2勝クラス(妙見山特別)を勝ち、次走の昇級戦でフェアウェルS(3勝クラス、中山ダート1200m)に出てきた時のことをよく覚えている。それほどの人気でもなく、穴ぐさ候補として検討したが、妙見山特別が大外枠(8枠16番)から逃げ切ったのに対して、フェアウェルSは最内枠だったので、厳しいレースを強いられるのではないかと想像した。
レースでは、スタートがそれほど速くなく、今回のカペラSのヒロシゲゴールドのように内からハナを奪うまでに脚を使い、前半3Fの通過が33秒0だったから、これは差し馬の台頭もあるぞと思って見ていた。
3番手を追走していたジャスパープリンスを穴ぐさに挙げていて、同馬が今回のジャスティンのような位置取り(外の3番手)だったので、これは大丈夫だと思ったのだが、直線に入ってからジャスティンに抵抗され、その争いはゴール前まで続いた。最後はジャスパープリンスが半馬身差で競り勝ったのだが、ジャスティンに普通ではない粘り強さを感じたことを鮮明に覚えている。
ジャスティンはそこから4勝を積み重ね、東京スプリントと東京盃という地方交流重賞でのタイトルも獲得して、JRAでは初の重賞の舞台に駒を進めてきた。1年前のフェアウェルSは斤量56kgで1分9秒9で走破し、今回は58kgを背負って時計を短縮して完勝したのだから、はっきりと成長の跡が感じられる。4歳でこれだけの強さを見せるようになったのだから、来年はさらなる飛躍が期待できるだろう。
ジャスティンはオルフェーヴル産駒で、同産駒はこれまでに芝重賞の勝ち馬が8頭出ていたが、JRAのダート重賞では今回が初勝利で、改めて芝でもダートでもイケる種牡馬であること証明した。オルフェーヴル産駒ではラッキーライラックやエポカドーロというG1勝ち馬がいて、その2頭も今回のジャスティンも母父がミスプロ系というのは偶然ではないだろう。JRA重賞を制したオルフェーヴル産駒の9頭のうち5頭が母父ミスプロ系だ。
今回が昇級戦だったダンシングプリンスは③着に敗れ、地方競馬時代から続けてきた連勝が6でストップしたが、そのレースぶりはまさに1年前のジャスティンに似ていて、負けて強しの内容だったと思う。6連勝はすべて逃げ切りで、今回は重賞の舞台で2番手に控える形を採ることとなったが、それでも崩れずに走れた辺りがレースセンスの高さだろう。この馬も、今後がさらに楽しみになるレースぶりだった。