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速攻レースインプレッション

昨年のデアリングタクトに続く可能性も十分

文/後藤正俊(ターフライター)、写真/瀬戸口翔


今春は週末ごとの降雨により、開催が増加している阪神の馬場の荒れが桜花賞の結果を大きく左右するのではないかと思われていた。だが桜花賞ウィークは、先週は満開だった桜こそほぼ散ってしまったものの晴天に恵まれ、また今週からBコースに変更されたこともあり、予想外の超高速馬場となった。同距離の阪神7Rの古馬2勝クラスは1分32秒2、9Rの忘れな草賞(芝2000m)は1分58秒0と高速決着が続いた。桜花賞もスピード、切れ味を武器にする馬に有利な舞台となった。

久しぶりに有観客で開催されることになった3歳クラシックの第1弾。そのファンの注目をもっとも集めていたのは白毛馬ソダシだった。デビューから4戦4勝で阪神JFなど重賞3勝。昨年の最優秀2歳牝馬に選出されており、実績は申し分ない。すでに「白毛馬初の芝重賞制覇」「白毛馬初のG1制覇」という肩書がつけられ、今回は「白毛馬初のクラシック制覇へ」というタイトルがファンの心を躍らせていた。何かと暗い話題が多い世の中だけに、気分を明るくしてくれる話題を欲している面もあったはずだ。最終的には1番人気をサトノレイナスに譲り2番人気になったものの、注目度では断トツだった。

そのソダシ2枠4番から好スタートを決める。一旦はハナを奪うほどの勢いだったが、外からストゥーティジネストラが主張するとすぐに折り合い3番手をキープ。3角手前で引っ掛かったメイケイエールが一気に先頭に立ったが、それにもまったく動じない。4角を回り、メイケイエールが後退。上がりが速くなる馬場状態を意識してか、各馬が早めの仕掛けを見せた中で、ソダシ吉田隼人騎手だけは馬なりのまま先頭に並びかけ、追い出したのは残り300m付近になってからだった。

馬場の真ん中からファインルージュアカイトリノムスメが追い上げるが、脚色はソダシとほぼ互角。ゴール前で大外からサトノレイナスが猛然と突っ込んできたが、ソダシはこれをクビ差振り切った。タイムは1分31秒1。一昨年のグランアレグリアの桜花賞レコード(1分32秒7)を大幅に上回っただけでなく、ブラックムーンのコースレコード(2017年米子S=1分31秒9)を0秒8も更新する圧巻のレコード勝ちとなった。

この日の阪神競馬場に入場できたのは約3000人に過ぎなかったが、春の陽光を浴びて真っ白に輝く馬体を誇らしげに、そして悠然と引き上げてきたソダシに対し、万雷の拍手が鳴りやまなかった。間違いなく、これからの競馬界を背負う新たなヒロインの1頭だろう。

これだけの実績、人気を誇る馬が好枠を引き当てたというのに1番人気に推されなかった理由は、超高速馬場に対しての不安があったのかもしれない。阪神JFでは1分33秒1の好タイムをマークしているとはいえ、「白毛馬一族」にはユキチャン、ハヤヤッコなどダート適性が高いというイメージがあったはず。父クロフネにしても、NHKマイルCで1分33秒0で勝利しているものの、その後のダート路線での圧巻ぶりのイメージが強い。ソダシの馬体を見ても、無駄肉をそぎ落として研ぎ澄まされたディープインパクト産駒サトノレイナスに比べると、筋肉量が豊富でふっくらとして見える。「パワータイプ」と認識したファンがいたことも確かだろう。

だが考えてみれば、ソダシの配合はそのクロフネを含め、キングカメハメハサンデーサイレンスと高速馬場で実績を残してきた種牡馬が連なっているのだから、血統的な不安はなかったはず。クロフネにしてもその代表産駒はホエールキャプチャ、アエロリット、カレンチャン、スリープレスナイト、フサイチリシャールと高速馬場で実績を残してきた馬が多くを占めている。

クラシック勝ちこそなかった吉田隼人騎手にしても、有馬記念をゴールドアクターで制しているし、今年のリーディング成績は5位(2021年4月11日現在)。ソダシでの騎乗はこの日も含めて非の打ち所がない完璧なものだった。目標にされやすい毛色と位置取りに加え、人気を背負ったクラシックレースであれだけ仕掛けを待てる度胸は大したものだ。37歳の年齢を考えると「遅咲き」なのかもしれないが、この桜花賞での自信も加われば、今後はリーディングジョッキー争いの常連になるに違いない。

ソダシは、オークスでは距離がポイントになるかもしれないが、取りたい位置をすぐに取れる器用さ、騎手の指示通りに動ける従順さ、馬場状態に左右されない勝負根性を考えれば、昨年のデアリングタクトに続く無敗の3冠制覇も十分に狙えるはずだ。

サトノレイナスはやはり18番枠が厳しかった感じ。スタートもやや立ち遅れて後方の16~17番手からの追走。直線で外を回さず馬群を突いたのはさすがルメール騎手だったが、壁をさばくのに多少ロスもあったように思う。それでもソダシを0秒9上回る上がり32秒9をマークしたのは並み馬の芸当ではない。全兄サトノフラッグ以上の器という可能性も感じるし、オークス、秋華賞でもソダシと再度名勝負を演じてくれることだろう。

③着ファインルージュ、④着アカイトリノムスメは、現時点では上位2頭とは着差以上の差が感じられたが、ファインルージュキズナ産駒で距離延長は歓迎だろうし、成績的に馬場悪化ならプラスのはず。アカイトリノムスメは何といってもアパパネの産駒でまだまだ奥は深いはず。今後に期待が膨らむ好走だった。


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