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速攻レースインプレッション

阪神芝3200mの天皇賞・春は「強い馬が勝つ」舞台だった

文/出川塁、写真/森鷹史


27年ぶりの阪神開催となる今年の天皇賞・春で、個人的に注目していたのが8枠だった。というのも、同じ京都の3000m級のG1である菊花賞ともども、8枠は過去5年(2016~20年)の計10戦で[1.0.1.26]。勝ったのは2020年天皇賞・春のフィエールマンだけで、回収率に至っては単勝7%複勝8%と大苦戦しているからだ。

この天皇賞・春と菊花賞における8枠不振は有名で、だから超長距離戦では外枠が不利というイメージもある。ところが、同じ集計期間で「京都のG1を除いた芝3000m以上の8枠」のデータを調べると[10.1.0.29]という数字が出てくる。かなり極端な成績ではあるものの、集計対象の全20戦のうち半分のレースで8枠が勝っていて、さらに67枠も合わせて7勝と、京都のG1を除く芝3000m以上では外枠ばかりが勝っているのだ。

理屈で考えれば、長い距離で延々外を通るとロスが大きくなり、外枠は不利というのは受け入れやすい。しかし、前述したデータを見る限りでは一概にそうとも言い切れない。超長距離戦における8枠不利は京都のG1に限ったことなのか。それを見極めるうえで、阪神で行なわれる今年の天皇賞・春はもってこいではないかと考えたのだ。

そんな思いを抱きながら木曜の枠順の発表を待っていたら、3頭いたオルフェーヴル産駒8枠にすっぽり収まったのにはたまげた。慌ててデータを確認すると、芝で8枠オルフェーヴル産駒は極端に好走率が下がるわけではないものの、単複の回収率は60%に満たない。総合するとやや苦手といったところか。

結局、8枠オルフェーヴル産駒3頭はいずれも馬群に沈み、6番人気だったオーソリティでも⑩着が最先着という結果に終わった。こうなると枠の傾向とみるべきか、オルフェーヴル産駒の傾向とみるべきか、なんとも言えないところで、玉虫色ではあるが先の結論は保留としたい。

というより、そもそも阪神芝3200mは枠ではなく実力が物をいうコースと考えるべきなのかもしれない。1~4番人気馬がそのまま①~④着を占め、⑤着にも前哨戦の日経賞を勝ったウインマリリン。1~3番枠の馬が①③④着という結果だけを見ると内枠有利だったように思えるが、前半1000m通過が59秒8と流れたため縦長の馬群になり、枠による距離の損得はそれほど大きくはなかったはずだ。

このレースを引っ張ったのは、上がり馬のディアスティマ。ブリンカーを装着した4走前から一気に頭角を現し、前走では阪神芝3200mの予行演習とも言える松籟Sを快勝してオープン入りを果たしていた。惜しむらくは躍進を支えてきた北村友一騎手が当日2Rの落馬負傷(JRA発表によると椎体骨折、右肩甲骨々折)によって騎乗できなくなったことで、人馬の呼吸が大事な逃げ馬だけに痛恨ではあったかもしれない。それでも⑥着なら、今後も長距離戦でかなり楽しみがあるだろう。

そのディアスティマまで4角を1~6番手で回った馬が①~⑥着。前述したようにペースはしっかり流れており、決して前が有利だったわけではない。最後の4Fは11.9-12.1-12.3-13.0で、ラップだけを見れば前が止まって差し馬が届いても不思議ないぐらいだ。スタミナに自信がある馬でなければ前に行けず、スタミナが切れた馬から脱落していく。そんな昔ながらの超長距離戦を久しぶりに見た気がする。

だから菊花賞馬が制したのはとても納得がいく。27年前の天皇賞・春も菊花賞馬のビワハヤヒデが勝っていて、当時とは少しコースが違うものの、急坂を2回のぼる阪神の3000m級は「強い馬が勝つ」舞台なのだろう。鞍上の福永祐一騎手もテン乗りとは思えぬ見事な手綱さばきを披露。道中はピタリと折り合い、最後はライバルたちを正攻法でねじ伏せた。

惜しかったのは②着のディープボンドだ。全体に枠の損得は小さいとはいえ、単勝10倍以内の人気4頭のうち3頭が1~3番枠、この馬だけ12番枠だった。それでも最後まで懸命に食い下がり、G1初連対を果たした。③着カレンブーケドールには2馬身差を付けている。来年の天皇賞・春も阪神開催が見込まれるだけに、再挑戦を期待したい。

その③着のカレンブーケドールは4回目のG1好走も、またしても戴冠には手が届かず。とはいえ、一杯になりながらもアリストテレスの追い上げを封じて馬券圏内を死守したのは実力の証だ。3000m級のG1で牝馬が③着以内に入るのは1984年のグレード制導入以来初のことで、これも立派な快挙と言える。そのアリストテレスは、この日絶好調のルメール騎手がとにかく大事に乗っていたという印象だ。馬場が持ちこたえたのも幸いして阪神大賞典より巻き返してきたが、阪神でこの距離となると距離適性から外れるのかもしれない。

は以前の速攻インプレで、スタミナを問われる阪神の天皇賞・春が見たいという主旨のことを書いたことがある。それがこうして実現してみて、やはり想像通り見応えのあるレースになったなと思う。もちろん、天皇と縁の深い京都で行なうのが自然であることは理解しつつも、今後も定期的に阪神の超長距離G1を見たいという欲が出てきてしまったのも率直なところである。


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