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速攻レースインプレッション

ノーザンファームの育成力のすさまじさ、ドイツ牝系の優秀さを示す結果に

文/木南友輔(日刊スポーツ)


キングマン産駒シュネルマイスターが2001年クロフネ以来となる20年ぶりの外国産馬制覇を果たした。1分31秒6の好時計の決着に対応し、見事なゴール前での差し切りだった。ゴールの瞬間、ソングラインが粘りきったようにも見えたが、ハナ差の決着。さすがルメール騎手という手綱さばきだった。

ドイツ産馬のJRA・G1制覇は1995年ジャパンCのランド以来の偉業なのだが、知っておきたいのは、シュネルマイスターがただのドイツ産馬ではないこと。「生産者は繁殖牝馬の所有者」が世界の競馬の常識だ。シュネルマイスターの母セリエンホルデ(2016年のドイツオークス馬)はノーザンファームの所有馬であり、外国産馬だけど、生産者はノーザンファーム。このNHKマイルC制覇は結果的に桜花賞ソダシ、皐月賞エフフォーリアに続くノーザンファーム生産馬の3歳世代G1制覇という見方もできる。①~③着をサンデーレーシング所有馬が独占。外国産馬どうこうではなく、血統の枠にとらわれず、ノーザンファームの育成力のすさまじさを感じる結果になった。

レースは大外からピクシーナイトが逃げる形になり、レースの半マイル通過が45秒3、後半の半マイルが46秒3と、先行勢には厳しい流れになった。シンザン記念を逃げ切ったピクシーナイト、朝日杯FSを早め先頭で制したグレナディアガーズ、ファルコンSを逃げ切ったルークズネスト、ニュージーランドTを逃げ切ったバスラットレオン。昨秋の朝日杯FSがレコード決着だったのが強く印象づけられ、グレナディアガーズを筆頭にハイレベル、役者ぞろいの印象を受けていたこの世代のマイル戦線だが、終わってみれば、抜けた存在がおらず、過大評価だったのかもしれない。

シュネルマイスターは弥生賞ディープインパクト記念②着、ソングラインは桜花賞で致命的な不利を受けた敗戦からの巻き返し。マイル路線を走ってきた馬たちよりもクラシックに向かう路線を走った馬たちの方が強かったという結果だ。上がりの数字を無視することになるが、直前の9R湘南S(古馬3勝クラス)の勝ちタイム(ハーメティキスト)が1分32秒0=NHKマイルC③着相当の数字だった点からも、今年のNHKマイルCが特別ハイレベルだったとは思わない。

シュネルマイスターについて言えば、トレセンの取材で厩舎サイドの半端じゃない期待の大きさを感じていた。デビュー直後からフィエールマン(菊花賞馬、天皇賞・春連覇)に携わってきた厩舎スタッフたちが「この馬もかなり楽しみ」と素材を絶賛。弥生賞ディープインパクト記念の前には手塚師「ダノンザキッド(当時無敗の2歳王者)よりも上の着順を狙えると思う」、今回のレースに向かう段階でも「距離がもつならダービーに行きたいくらい。古馬相手の安田記念も楽しみ」と強気な言葉を発していた。

テーマは唯一のマイル戦出走だったひいらぎ賞の勝ちタイムが1分35秒8。どこまで時計を詰められるかだったのだが、陣営、最終追い切りに騎乗したルメール騎手の強気な言葉が正しかった(※取材の感触を信じなかったの予想はひどい結果に終わって恥ずかしい限り…)

何度も言われていることだが、ドイツ牝系の優秀さを示す結果になったこともあらためて記しておきたい。シュネルマイスターは3代母(Salde)が昨年の皐月賞&ダービー②着サリオス、昨年のエリザベス女王杯&有馬記念②着サラキアと同じ。ビワハイジ、ブエナビスタ、マンハッタンカフェ、近年ではエイシンフラッシュ、ソウルスターリングなど、日本の馬場で通用する瞬発力タイプが少数精鋭のドイツの馬産、牝系から出てくる。何を隠そう、9R湘南Sを10番人気で制したハーメティキストもドイツ牝系、2007年ドイツオークス馬ミスティックリップスの子だった。

ノーザンファームを中心に日本の生産者がいかにドイツ牝系の優秀さ(特にドイツオークス馬の子が走ること)を見抜き、国内へその血を導入しようとしているか。そして、ドイツの時計のかかる馬場からは想像できない、府中の高速馬場への対応力はどこから生まれるのか。個人はドイツ競馬をずいぶん以前から取材に行きたくて行きたくて、現地で見聞を広めてきたくてたまらないのだが…、なかなかその機会をつくるのは難しい。

土曜、日曜と夏日となった首都圏。思わぬ大敗を喫した馬たちには暑さの影響が出ている場合があるかもしれない。NHKマイルCの結果は単純に書けば、弥生賞ディープインパクト記念②着馬と桜花賞⑮着馬のワンツー。オークスのソダシ、ダービーのエフフォーリアの評価は揺るぎないものになっているが…。東京5週連続G1は来週のヴィクトリアマイル、オークス、ダービー、安田記念と楽しみなレースが続く。一喜一憂せずではなく、競馬なので、一喜一憂しながら過ごしていきたい。


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