速攻レースインプレッション
ファンの絶大な信頼に応えて圧勝、改めてマイル適性の高さを示した
文/後藤正俊(ターフライター)
昨年は短距離・マイルG1を3勝したグランアレグリアは、2000m戦に挑戦した今年初戦の大阪杯は道悪が影響したのか④着に敗退。だが、良馬場のマイル戦に出走するグランアレグリアに対してのファンの信頼は絶大なものがあった。スタートで後手を踏むようだと取り返すのが難しく、レース中の不利も考えられるフルゲート18頭立てにもかかわらず、単勝は1.3倍という極端なオッズを呈した。アーモンドアイがターフを去った後、再び絶対女王の誕生を求めるファンの期待の表れだったのかもしれない。その人気にグランアレグリアは危なげなく応えた。
レースは内からクリスティが先手を奪い、スマイルカナが2番手。好スタートを決めた2番人気レシステンシアは3番手を進む。前半1000m57秒6の流れは、いまの高速馬場を考えればむしろスローペースの部類だったと思う。大外枠の不利を克服して3番手の外につけたレシステンシアには絶好の展開にも見えた。
グランアレグリアもスタートはスムーズに出て、道中は9~10番手。6番枠だったが、3角手前ではルメール騎手がいつの間にか外に持ち出していた。この位置を何気なくキープしてしまうのがルメール騎手の凄さだが、その手綱さばきに機敏に応えられてしまうのがグランアレグリアのセンスの高さでもある。
4角を回り、レシステンシアが楽な手応えで先頭に立つ。この時点でグランアレグリアは6~7馬身後方。だがルメール騎手の手綱はまったく動かない。残り400mでレシステンシアが一旦は突き放しにかかったが、馬場の真ん中を通ったグランアレグリアは馬なりのままこれを交わしていく。
突き抜けてからソラを遣うのを防ぐためか、ルメール騎手のステッキが2発入ったが、激しく手が動いたわけではなく、ほぼ馬なりのまま②着に4馬身差をつけた。久しぶりの有観客のG1。観客からはグランアレグリアのあまりの強さに驚いたようなどよめきに続いて大きな拍手が贈られた。
着差は昨年のアーモンドアイと同じ。1分31秒0のタイムは昨年よりは0秒4遅かったものの、グランアレグリアの上がり3ハロンは32秒6で、これは昨年のアーモンドアイを0秒3上回った。ほぼ馬なりで32秒6を計時してしまうところに、この馬の強さが凝縮されている。これで安田記念、マイルCSに続いて古馬マイルG1・3連勝で、史上初のコンプリートを達成した。桜花賞を加えればマイルG1・4勝で、改めてこの距離の適性の高さを示した。
次走、安田記念に出走してくれば連覇が濃厚だと思うが、中2週のローテーションでもあり、また大阪杯の雪辱を果たすために再び中距離路線を目指す可能性も考えられる。種牡馬価値を気にしなければならない牡馬と違い、多少の冒険はできそうな牝馬だけに、ファンとしては香港のゴールデンシックスティとのマイル頂上決戦もぜひ見てみたいと思っていることだろう。
レシステンシアは結局⑥着に敗れた。上がり3ハロンは34秒1なのだから急激にバテたわけではないが、大外枠で序盤に脚を使わざるを得なかったし、切れ味勝負になるとディープインパクト産駒に分があったとも言える。また、高松宮記念②着の内容からも、マイルはベストよりもやや長いのかもしれない。もしグランアレグリアがマイル路線を進むなら、こちらはスプリント路線という手もあるかもしれない。
②着には10番人気ランブリングアレーが外から突っ込んだ。前走は得意とは言えない道悪で中山牝馬Sを制しており、良馬場の今回はさらに切れ味が活かせる舞台ではあったが、これまでマイル戦はひと息の成績で1800~2000mがベストだとも思われていたのだろう。5歳にしてG1初挑戦で②着の成績はいまの充実ぶりを示しており、今後は中距離G1でも目が離せない存在になっていくのではないだろうか。
③着マジックキャッスルは一旦は馬群に飲み込まれそうになりながら、前が開くとゴール前で再び伸びてきた。さすがに秋華賞でデアリングタクトの②着に入っただけはある。なかなか勝ち切れない面はあるが、良馬場ならG1でもしっかりと差してくる堅実さがあり、今後も馬券検討からは外せない。
目についたのは14番人気で④着に入ったディアンドル。5連勝など3歳夏までの快進撃から一時はスランプに陥っていたが、この3戦は明らかに復調の兆しが見える。ルーラーシップ×スペシャルウィークの配合で、血統的にはマイルより長い距離に適性が高いと思えるだけに、次走で中距離戦を使ってきたら気を付けたい。