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速攻レースインプレッション

血統の凄さを実感させられたオークスだった

文/石田敏徳


直線半ば、ソダシの真っ白な馬体が馬群に飲み込まれていく瞬間に思ったのは「血統ってすげえな」ということだった。そしてゴールの直後、今度は自分の「持ってなさ」をつくづくと痛感する羽目に……。そんなオークスのレース回顧は、20日ほど前に届いた編集者のメールの話から始めたい。

サラブレ本誌の最終号(涙)に掲載された「みんなのダービー&オークス予想」という大特集。私はオークスの本命にソングライン、ダービーはサトノレイナスを指名した。クロフネ産駒の芝の良績はマイル以下に集中しており、2000m以上の平地重賞を勝った馬は過去に1頭もいない。この"黒いデータ"を信じて白毛の女王様は無印。さらにレコード決着の桜花賞は非常にタフなレースだったので、上位馬は反動の心配があると考え、序盤に受けた大きな不利が響き、実力を発揮できずに終わった(⑮着)ソングラインを本命に抜擢したのだ。

ところがソングラインはNHKマイルCへ出走することになった。取材で北海道を回っていたは編集者から届いたメールでその報を知り、「今ならまだ差し替え可能です」ということで代替の本命馬を考えた。先に書いた理由から桜花賞の上位馬は挙げたくない。ならばやはりフローラS組になるが、さて、クールキャットユーバーレーベンのどちらにするか?

フローラSのユーバーレーベン(③着)は2コーナーで馬群がゴチャつき、ポジションを退かされるロスがあった。典型的な瞬発力勝負の様相を呈したレースで、出走馬中最速の上がりタイム(33秒2)を記録し、0秒2差の③着まで巻き返したのだから内容は悪くない。

しかし一方のクールキャットは外枠(8枠15番)の不利を乗り越えての勝利で、こちらも着差以上に強い内容と評価できた。で、迷った挙句、結局はクールキャットを指名。蛇足ながら付け加えると、ソングラインから買ったNHKマイルCはシュネルマイスターを蹴飛ばして切歯扼腕、オークスも二択まで迫ったのに選択ミスしてしまったのだから嗚呼、本当に持ってない!

の話はともかく、レースの回顧に話を進めると、確たる逃げ馬が見当たらない顔ぶれから颯爽と風を切ったのは「お前が逃げるんかい」のクールキャットだった。1月のフェアリーSでも途中からハナを切って⑩着に沈んだように、スピードのコントロールが難しい一面を持つ同馬は、あまりペースを緩められずに後続を先導。前半1000mの通過は59秒9、もっとも"緩んだラップ"が中盤に2回刻んだ12秒6だから、今回は失速やむなしのオーバーペースだったと思う。残念。

スタートを決め、軽快なダッシュで飛び出したソダシはこのタフな流れを好位集団の一角で追いかけた。序盤は少し折り合いに苦労、2コーナーでは他馬に前へ入られて頭を上げる場面もあったが、全体的に「流れには乗れていた」印象。しかし知らず知らずのうちにスタミナを消耗していたのだろう。先頭へ抜け出しかけた残り200m地点、まさしく「距離の壁」に行き当たったようにばったりと失速。その外から伸びてきたのがユーバーレーベンだった。

序盤はじっくりと運び、後方5番手を進んだM.デムーロ騎手は、3コーナーから馬群の外を回って徐々に進出を開始。4コーナーで好位集団を射程に収めると、迎えた直線では外へ進路を取った。予想外に早く先頭へ抜け出す形となったところへ、内からアカイトリノムスメ、外からは後方で末脚勝負にかけていたハギノピリナが詰め寄る。それでもデムーロ騎手が右ムチを入れるともうひと伸び。2頭の追撃を寄せ付けずに快勝のゴールを駆け抜けた。

3、4コーナーでは馬群のかなり外を回らされたこと、緩みのない流れを早めに動いて押し切ったことからも、「着差以上に強かった」と評価できるユーバーレーベン父ゴールドシップ譲りの持久力が光った一戦ともいえる。思えば札幌2歳Sはクビ差②着、阪神ジュベナイルフィリーズも0秒1差の③着。ソダシと接戦を演じてきたトップクラスの実力が、持久力勝負の様相を呈した東京・2400mの舞台で見事な花を咲かせた。

ビッグレッドファームで繋養されているゴールドシップは今回が産駒のG1初制覇。種牡馬入りが決まった直後、今は亡き岡田繁幸さんが「ああいうロングスパート・タイプの馬って、実は種牡馬としての成功例は少ないんだけどね」と笑っていた(=もちろん、照れ隠しのニュアンス)ことを思い出すけれど、祖母がマイネヌーヴェルという牧場ゆかりの牝系で、母の父ロージズインメイ岡田さんが導入した種牡馬である。

無傷の戴冠に挑んだ白毛の桜花賞馬が血の呪縛から逃れられずに敗れた一方で、巨大な足跡を残したホースマンの"思い"がこめられた血を受け継ぐ馬が、樫の女王に輝いた。うん、血統ってやっぱり凄い。


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