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速攻レースインプレッション

人馬の絆の大切さを実感、歴史に残る名勝負だった

文/木南友輔(日刊スポーツ)


東京競馬場の記者席でパソコンのキーボードをたたいているが、熱戦から3時間が経過しても、まだ興奮がおさまらない。レース後、勝ったシャフリヤール福永騎手は何度も「素晴らしい競馬だった」と繰り返していたが、自分も心から思う。

無観客だった昨年は無敗の2冠馬コントレイルが誕生し、今年は無敗の皐月賞馬エフフォーリアをゴール寸前で差し切ったシャフリヤール第88代のダービー馬に輝いた。

ダービー週に出現するCコース。例年同様の高速馬場であることは前日に確認できたが、今年がこれまでと大きく違ったのはインが伸びにくい馬場だったこと。昨秋の開催で毎週末に強い雨が降った影響は今年も残っており、良馬場、パンパンの馬場なのに意外と差しが決まる。この馬場で最内枠エフフォーリアがどう立ち回るのか。他馬はどう仕掛けるのか。ハナを奪うであろうバスラットレオンはどんなペースで逃げるのか。そこは大きな注目点だった。

注文どおりに逃げた大外のバスラットレオン。好位を奪いにいったエフフォーリア。1、2コーナーの中間(4ハロン目)のラップが13秒台、また向正面、3コーナーにかけてもペースが落ち着き、前週のオークスを思わせるような3、4コーナーの凝縮が始まった。外をまくり気味に進出していく馬たち、対照的にエフフォーリアは徐々に位置を下げる。

直線に向き、サトノレイナスが強気の仕掛けで先頭に立ったが、しっかりとインをさばいて抜けてきたのがエフフォーリア、外を回って追い込んできたのがグレートマジシャン、人気上位勢の争いに最後に加わってきたのが、シャフリヤール。最後はハナ差の決着。ディープインパクト産駒が4連覇を果たし、父エピファネイア父父シンボリクリスエス母父ハーツクライという血統のエフフォーリアは②着。歴史に残る名勝負だったと思う。

2分22秒5は一昨年のロジャーバローズの時計を上回るレースレコード。ただ、8Rの青嵐賞も2分23秒2と速い決着。ダービー後の目黒記念のすさまじい上がり勝負の数字を見ても、高速馬場だったのは間違いなく、勝ちタイムそのものにはあまり驚きがなかった。勝った福永騎手「新馬戦でダービーを勝てる馬だと思っていた。証明できてうれしい」と胸を張った。毎日杯は川田騎手に手綱を譲っているが、4戦中3戦でコンビを組んだ人馬の戴冠。福永騎手の言葉がダービーを勝つことの難しさ、ポイントを教えてくれたと思う。

この世代を振り返ると、目まぐるしく騎手が入れ替わったダービーだった。トレセンで取材していて、各陣営の綱引きを早い段階から感じ続けた世代だった。ルメール騎手が昨年暮れのホープフルSで騎乗したのはオーソクレース。京成杯をルメール騎手で制したグラティアスルメール騎手が乗れないので、松山騎手を確保。その松山騎手が共同通信杯で②着に導いたヴィクティファルスは勝負強い池添騎手(騎手と調教師の兄弟タッグが話題に…)。

ルメール騎手同様にお手馬が重なったのは、ダービーディープモンスターで挑んだ武豊騎手ヨーホーレイクディープモンスターという将来性豊かな2頭にまたがり、当初、皐月賞でコンビを組むのが決まっていたのが前者だった(負傷療養のため騎乗せず)。後者と皐月賞でコンビを組んだのが戸崎騎手。このコンビが意外だったのは、タイトルホルダーの2歳時に3戦すべて騎乗していたのが戸崎騎手だったから。

サウジ遠征後の2週間自主隔離期間中に行われた弥生賞を横山武騎手で逃げ切ったタイトルホルダーはレース後しばらく鞍上の発表がなかったが、その後新たに田辺騎手とコンビを組むことが発表された。アドマイヤハダル松山騎手で若葉Sを制し、皐月賞はルメール騎手ダービーM.デムーロ騎手と変遷した。

福永騎手はレッドベルオーブで皐月賞、シャフリヤールダービー。2歳王者ダノンザキッドの回避が直前で決まった川田騎手はすでに鞍上が発表されていた京都新聞杯覇者レッドジェネシスではなく、ヨーホーレイク戸崎騎手は桜花賞後、サトノレイナスルメール騎手ダービー参戦が発表になり、その時点で出走可能が微妙だったグレートマジシャンに賭けた。ステラヴェローチェはソダシと同じ須貝厩舎&吉田隼騎手のタッグに。ラーゴム北村友騎手が負傷で戦列を離れ、浜中騎手に手綱を託した。

振り返ると、デビューから人馬の絆で突き進んできたのは横山武騎手エフフォーリアルメール騎手サトノレイナス和田竜騎手ワンダフルタウンの3頭のみ。直線で最後に伸び負けたグレートマジシャン(の◎)の④着は「テン乗りはダービーを勝てない」というジンクスをあらためて歴史に刻んだし、オークスのソダシを思わせる苦しい位置から負けて強しの競馬を演じたエフフォーリア横山武騎手の走りは見事だった。

毎日杯は手綱を譲っていたものの、この馬のダービー制覇にこだわってきたという福永騎手。ワグネリアンでの初制覇、コントレイルとシャフリヤールでの連覇で、瞬く間に武豊騎手に迫る「ダービー男」になった印象がある。わずかではあるが、ファンの姿が戻ってきた今年のダービー。来年はこの熱い気持ちを現地で、多くのファンに感じてもらいたい。


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