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速攻レースインプレッション

今秋に向け、楽しい想像ばかりが広がる

文/後藤正俊(ターフライター)、写真/森鷹史


2021年前半戦を締めくくる第62回宝塚記念は、心配された台風の進路が逸れたため、午後から多少の降雨はあったものの、何とか良馬場での開催にこぎつけた。ダノンプレミアム、ブレイキングドーン、レッドベルジュール、ダノンザキッドとG1勝ち馬2頭を含め、4年連続重賞勝ち馬を輩出し、いまや宝塚記念デーの名物となった5Rメイクデビュー阪神は、レース前に2頭が放馬するアクシデントがあったものの、レッドベルジュールの半弟レッドベルアーム(牡、父ハーツクライ、母レッドファンタジア)が1番人気に応えて強い勝ち方を見せ、伝説の継承を予感させた。

宝塚記念の伝説の継承者は、グランプリ3連覇を目指すクロノジェネシスなのか、不敗のまま古馬G1連勝を目論むレイパパレなのか、ファンの期待は二分した。単勝人気はクロノジェネシスが1.8倍、レイパパレが3.5倍で、牝馬2頭による一騎打ちムードが高まっていた。それは騎乗したルメール騎手川田騎手も同じ思いだったのかもしれない。

大阪杯を逃げ切ったレイパパレだったが、今回は1枠に鳴尾記念を逃げ切ったユニコーンライオンがいたため、無理せずに2番手をガッチリとキープした。今回は出遅れなかった大外キセキも1角ではポジションを上げて行ったが、前の2頭には競り掛けなかった。5ハロン通過は60秒0のスローペース。先行した3頭には有利な流れになった。

だが、4番手でレイパパレの脚色をしっかりと見ていたルメール騎手はまったく慌てていなかった。直線に向いてレイパパレキセキの間にスペースを見つけると、すぐにレイパパレに外から取り付く。抜くまでにはルメール騎手の左ステッキが1発入り手綱が激しく動いたものの、一旦交わすと脚色の違いは歴然。軽く促して2馬身半差をつけ、昨年同様に楽々と宝塚記念連覇を果たした。

落馬負傷した北村友騎手のピンチヒッターだったルメール騎手は、さすがの完璧な騎乗を見せてくれた。これで上半期99勝、G1・4勝。今年も独壇場の様相を呈してきた。クロノジェネシスもそのルメール騎手の指示に完璧に応えた。昨年は稍重発表ながら不良に近いような馬場状態だったが、今年は良馬場・スローの瞬発力勝負をメンバー中最速の上がり34秒4で再度、別次元の強さを見せた。馬場状態や展開に左右されず、常にベストパフォーマンスを発揮するクロノジェネシスは、これまでの名馬とはまた違った魅力にあふれている。

クロノジェネシスの勝利には数々の記録が伴った。牝馬の宝塚記念制覇は3年連続6回目だが、1番人気での優勝は史上初。宝塚記念連覇はゴールドシップに続いて2頭目で牝馬は初。グランプリ3連勝はスピードシンボリ、グラスワンダーに続いて3頭目で牝馬は初。ノーザンファーム生産馬は同一G1・7連覇。クロノジェネシス自身も獲得賞金が10億円を突破した。

だが、このような記録よりも、ファンの関心は今秋の凱旋門賞挑戦にもう向いているのではないだろうか。フランス産の凱旋門賞馬バゴ産駒で、半姉ノームコアは香港Cを制している。クロノジェネシス自身も前走でドバイを経験しており、深い芝も長距離輸送も不安は少ない。英オークスで16馬身差をつけて大差勝ちしたディープインパクト産駒スノーフォールとの世界最強牝馬対決が実現すれば…いまからワクワク感が止まらない。

初の敗戦を喫したレイパパレは、最後にユニコーンライオンに差し返されてクビ差③着となり、宝塚記念史上初の牝馬の①②着独占とはならなかったが、まったく悲観する内容ではなかったし、川田騎手の騎乗もまたまったく無駄のないものだったと思う。小柄な牝馬のため、これまでは非力な印象もあったが、今回の馬体重は10kg増で432kgまで増えていた。キャリアが浅い分、さらに成長が望めるだけに、秋にはさらに力強いレースを見せてくれるはずだ。クロノジェネシスとともに凱旋門賞挑戦という話になれば、スノーフォールとの日本産ディープインパクト牝駒対決が実現する。楽しい想像ばかりが広がる。

②着ユニコーンライオンの急成長も頼もしい。強い逃げ馬の存在はレースの深みを増してくれる。今後のG1戦線でも目が離せない存在になるだろう。カレンブーケドールは馬券圏外の④着も、デビュー以来1度も掲示板を外していない堅実さには頭が下がる。その実力は誰もが認めているものだけに、ステイゴールドのようにどこかで花開く舞台がやってくることを祈りたい。


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