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速攻レースインプレッション

今年はコースの巧拙通りの結果とはならなかった

文/浅田知広


競馬には数え切れないほどの予想ファクターがあるものだが、そんな中でも「コース適性」はよく語られるもののひとつだ。

今年の七夕賞で1番人気に推されたのは連覇を狙うクレッシェンドラヴ。一昨年のこのレースでも②着だったほか、同年秋には福島記念も制するなど福島芝は[2.3.0.0]と、時期を問わない文句ナシのコース巧者だ。昨年の七夕賞優勝後はG1~G2で4戦し、前走の大阪杯は⑪着と大敗を喫していたが、このコースでG3ならトップハンデ58キロを背負っても、というファンの評価である。

一方、2番人気のトーラスジェミニはデビューからの2戦が福島で⑨⑩着。さらに昨年の福島記念でも着に敗れていた。「コース拙者」という競馬用語はないが、でいえばだった。しかし前走・安田記念では強敵相手に⑤着と健闘しており、ハンデも57キロ止まり。前走G1組を買うならクレッシェンドラヴではなくこちら、という考えもあるだろう。

ただ、そもそも七夕賞でG1組を買うというのもどうなのか。好走馬がまったく出ていないわけではないが、昨年1番人気のジナンボーが⑨着、2017年2番人気のマルターズアポジーが⑪着、といったあたりを思い起こせば印象はよろしくない。

もっとも、その他となると伸びしろがありそうなブラックマジック(3番人気)や、昨年の③着馬ヴァンケドミンゴ(4番人気)などなど候補は数多い。やはりハンデ重賞、今年も難しいなあ、という印象だ。

ゲートが開き、出脚が良かったのはトーラスジェミニだったがハナにはこだわらず、これを内からかわしてロザムールが先頭へ。やや離れてブラックマジックが続き、1番人気のクレッシェンドラヴはここ2年の七夕賞よりやや前、中団あたりからになった。

数字の上では前後半の1000mが60秒8-61秒4とやや速めの流れ。しかしレースを見ていると、勝負どころでは逃げたロザムールと、早々に並びかけたトーラスジェミニの手応えが良く、3番手のブラックマジック以下は押っつけ通しという感じ。前半スローの上がり勝負のようにも映ったが、実際のところは馬場状態の影響もあって、後続が追走に脚を使わされていたということだろう。

直線に向くと、馬場のやや外に出したトーラスジェミニがじりじりと伸びて先頭に立ち、ロザムールも内で渋太く踏ん張っていた。いや、果たして「伸びて」とか「踏ん張って」と記していいのかどうか、見た目上も数字上も脚色が鈍っていた感のあるラスト1F12秒8。この時計を要してもなお、差し・追い込み勢に前に迫るだけの脚を残している馬はおらず、前2頭が入れ替わっての「行った行った」という結果になった。

勝ったトーラスジェミニは前述のように福島は3戦着外で、②着ロザムールは福島芝初出走。そして③着のショウナンバルディは福島で1戦して着。コース巧者クレッシェンドラヴは⑭着、ヴァンケドミンゴは⑫着と、コース適性を重視した人はまず当たらないという結果になった。

ではなにが当たりだったかと言えば。①③着馬はキングズベスト産駒、②着馬はローズキングダム産駒で、サンデーサイレンス系は揃って馬券圏外。父系からキングマンボの血を引く馬が①~③着を独占した。七夕賞というレース自体はミスプロ系が強いわけではないが、雨が降ったりあがったりという中でちょうど「そういう馬場だった」ということだろうか。

ちなみにキングズベスト産駒はエイシンフラッシュの2013年毎日王冠以来となるJRA重賞制覇で、国内で種付けされた産駒としては今回が重賞初制覇となる。

そんなキングズベスト産駒トーラスジェミニ。これまでは1800m以下が主戦場だったことを踏まえると、七夕賞ではなく来週の中京記念(今年は小倉芝1800m)あたり……などと素人考えをしてしまうが、このレースを選んでしっかりと勝ったことで、福島も2000mも大丈夫となったのだから大正解だろう。

さて、昨年は函館記念④着から札幌記念⑧着という夏競馬、今年はこのあとどうするのか。エイシンフラッシュは2012年の天皇賞(秋)も制しているが、そこへ向けては小回りではなく「直線距離の長い芝2000m」がどうか、ということになる。さらに増えるであろうハンデさえ気にならなければ、今年は直線距離が長い新潟記念という選択もあり得そうだが、そこでまた結果を出せればサマー2000シリーズ制覇とともに、天皇賞へ向けての視界も広がってくることになりそうだ。


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