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速攻レースインプレッション

条件が整い、鞍上の好騎乗に導かれて重賞初制覇

文/後藤正俊(ターフライター)


週末にかけて列島各地を集中豪雨が襲い、馬場状態が大いに心配された今週の開催だったが、関屋記念の舞台となる新潟競馬場は金・土曜に降雨はあったものの芝コースは稍重までの悪化にとどまり、日曜10R三面川特別の前には良馬場に回復。関屋記念も例年ほどの高速馬場ではないものの、どの馬にもチャンスがある馬場状態となり、出走馬17頭(プールヴィルが出走取消)で単勝100倍以上は2頭だけという混戦の様相を呈した。

その中で1頭だけ、単勝1.8倍の圧倒的な1番人気に推されたのは3歳牝馬ソングラインだった。前走はNHKマイルCでハナ差②着。勝ち馬シュネルマイスターは安田記念で0秒1差③着。あのグランアレグリアに半馬身差まで粘ったのだから、ソングライン古馬相手に互角に戦える能力があることが推測できる。

しかも別定51キロの恵量で、北海道滞在中だった池添騎手がこの馬のために新潟に参戦し、厳しい減量でレースに臨んだことからも、陣営の本気度が窺える。NHKマイルC⑤着から参戦して鮮やかな差し切り勝ちを演じた2018年プリモシーンの再現が期待されていた。

レースは外から先手を主張したマイスタイルのペースで進められた。最初の1ハロンこそ12秒7を要したが、2ハロン目からは11秒台が続く淀みのない流れで前半4ハロンが46秒6。好スタートから2番手の内に下げたロータスランドが3~4馬身差で追走し、直線を迎えた。

ソングラインは中団の外につけ、直線は馬場の中央を通って虎視眈々と前を射程内に入れる。残り1ハロンの標識の手前で内からマイスタイルを捉えたロータスランドが先頭に立って押し切りを図る。ソングラインも徐々に脚を伸ばすが脚色は同じでロータスランドを捕まえることができず、逆に外からカラテに差されて③着。①着は1分32秒7でロータスランド(4番人気)、1馬身1/4差で②着カラテ(6番人気)、さらにクビ差で③着ソングライン(1番人気)という結果になった。

ロータスランド角居厩舎からデビューし、2歳9月に阪神で新馬勝ち。2戦目のもみじSでラウダシオンの②着に入って注目を集めたが、阪神JFで⑫着敗退。2度の長期休養で3歳時は1戦だけ。角居師の勇退直前の今年2月に復帰し②着。その後、開業した辻野泰之厩舎に転厩すると3月に1勝クラス、4月に須磨特別(2勝クラス)、6月に米子S(リステッド競走)と阪神コースで破竹の3連勝を挙げた。前走の中京記念は3番人気に推されたが、先行して粘り切れずに⑤着。初のO型コースに加え、1800mの距離が1ハロン長い印象も受けた。

それだけに、今回は現時点でベストと思えるやや時計のかかるマイル戦。「夏の上がり馬」「夏に強い牝馬」という条件も整い、田辺騎手の絶妙のペース判断、終始内を突いたコース選択、仕掛けどころのタイミングとパーフェクトな騎乗も加わり、馬自身と厩舎にとって重賞初制覇が達成された。

父はターフクラシック招待Sなど米国の芝中距離G1を5勝、BCターフ②着のポイントオブエントリー。母の父スキャットダディは3冠馬ジャスティファイなどを輩出しており、血統構成を考えると、今後の距離延長に問題はないようにも思える。まだキャリアは10戦と浅い4歳馬で、2~3歳時にはラウダシオン、バビットと僅差の勝負をしているので潜在能力の高さも示されている。陣営が今後どのようなローテーションでG1獲りを目論んでいくのか、大変に興味深い。

②着カラテは東京新聞杯までマイル戦3連勝の勢いで臨んだ前走の安田記念こそ⑬着に敗れたが、これは挫跖の影響で約4ヵ月の休み明けになったことも影響していたのだろう。初勝利が8戦目、2勝目までにさらに10戦を要した奥手。父トゥザグローリーは26戦連続で重賞に出走したり、G1にも14回も挑戦したタフネスであり、母系は50戦目にG1制覇を果たしたステイゴールドと同じで、使われるほど力を付けていく血脈がみなぎっている。今後も父同様に重賞に出走し続け、あっと言わせるシーンをたびたび見せてくれそうだ。

ソングラインはNHKマイルCほどの伸びを見せることができなかったが、圧倒的1番人気馬として横綱相撲のレースを強いられた。まだキャリア6戦目の3歳牝馬ということを考えれば、初の古馬との対戦で十分に見せ場は作った。秋へ向けて、確かな一歩を踏み出したと言えるだろう。3歳牝馬の世代間能力の判断は、札幌記念のソダシのレースぶりに持ち越したい。


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