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速攻レースインプレッション

見事に結果を出した陣営とソダシを心の底からたたえたい

文/木南友輔(日刊スポーツ)


「札幌記念を使う、って言ったらどう思う?」須貝師がささやくように、柔らかな笑みを浮かべながら、こちらの反応を見てきた。「え?」。一瞬、戸惑った。ものすごくワクワクして、「マジかよ」という言葉が出かかった。「そりゃ、みんなビックリすると思います」と答えた。

これは7年前の函館競馬場の調教スタンド、宝塚記念を勝ったゴールドシップの今後の予定をに聞いたときのやりとりだ。すでにハープスターの札幌記念参戦→凱旋門賞遠征が発表になっていた。歴史的名牝になる可能性を秘めた3歳牝馬が52キロで出てくる。厳しいレースになるのは覚悟の上で、そこへぶつける。オーナーが北海道の方というのも理由の1つだったと思うが、あのときの須貝師は改修工事を終えた札幌競馬場で「たくさんの人にゴールドシップの走りを見てほしい」と言っていた。自分札幌記念当日は現地に行くことができなかったが、ものすごい盛り上がりだったそうだ。後日、調教役の北村助手に聞くと、「他の厩舎の人もみんな見に来て、(厩舎スタッフ用の)スタンドが満員になっちゃって、危うくレースが見られないところだった」と。

あれから7年、今年は須貝厩舎の新たなアイドル、白毛馬ソダシ札幌記念で古馬に挑むことになった。7年前のハープスターと同じ桜花賞馬で負担重量は52キロ。今回、桜花賞馬の挑戦を受ける古馬の主役はラヴズオンリーユーだった。一昨年のオークス馬が今年は京都記念を勝って、ドバイシーマCでミシュリフ、クロノジェネシス相手の③着。香港のクイーンエリザベス2世Cを制し、秋のBC開催へ向けた壮行戦というスターホースだ。一昨年の札幌記念覇者ブラストワンピース、昨年②着のペルシアンナイトを含め、G1馬4頭の激突。個人的な狙いはウインキートス。もともと昨年のオークス②③着のウインマリリン、ウインマイティーにヒケを取らない素質の持ち主。定量のG2で十分勝負になると見込んでいた。

ゲートが開いて、先手を奪ったのはトーラスジェミニ。ただ、やはり桜花賞馬は速い。ソダシが2番手へ。ラヴズオンリーユーもしっかり中団前の位置を確保した。1000m通過は59秒9。このクラスの馬たちにとっては平均よりややスローな流れだった。向正面で動いていったのが、岩田康騎手ブラストワンピース。後方2番手の位置から一気に上昇し、3角過ぎにソダシの横へ。ここでソダシトーラスジェミニの横をパスし、先頭に立った。52キロを活かすにはためる競馬よりも早めのスパートが正解だったし、序盤で折り合えていたからこそ、自信を持って前に出ることができたのだと思う。

「ホッとしました。(プランは)外枠を引いてしまったので、素直にゲートを出たなりに1コーナーに入ろうと思いました。折り合いもついていましたし、すごい、いつでも動けるぞというのが馬から伝わってくるのが、手綱から、手応え十分にありました。(直線は)前半のレースに乗っていて、前にいっても最後も止まらないという馬場だったので、もう自信を持って最後は追い出しました。(秋に向けては)春のG1、オークスではちょっと…、期待に応えられなくて、悔しい思いをしました。でも、復帰戦、またこういう、ソダシらしい競馬をしてくれて、秋に向けて楽しみになっていくので、また応援よろしくお願いします」(吉田隼騎手)

馬体重は増減なし(472キロ)だったが、1週前から須貝師「凹凸(おうとつ)がはっきりしてきた」ソダシの真っ白な馬体の進化を語っていた。腹回り、トモやお尻の筋肉の盛り上がりはどうだったのか。比類なき注目度のソダシ。誰もが見つめる真っ白な馬体。この馬体を語るには、ごまかしが利かない。競馬関係者にとっても、多くのファンにとっても、自らの馬を見る目を養うための格好の教材がソダシであって、今回の須貝師の談話に学ぶものがあったはずだ。

直線で突き放すソダシを追いかけたのはペルシアンナイトラヴズオンリーユーの2頭。昨年はテン乗りの大野騎手で豪快な追い込みを見せたペルシアンナイトは今年、同様にテン乗りだった横山武騎手を背に好位馬群から抜け出す新境地を切り開いた。昨年はノームコア、ラッキーライラックに割って入る②着だったが、今年の③着も大いに評価してほしい。秋は4年連続出走中(2017~20年で①②③⑦着)のマイルCS(今年は阪神開催)が今年も大目標になるのか。能力の衰えは感じられないだけに、そのレース選択も楽しみになった。

ラヴズオンリーユーは②着確保で力を見せた。香港からの帰国初戦で1番人気の重圧があったはず。3角で外からブラストワンピースにまくられ、4角も内の馬が微妙にふくれる形で外、外を回らされた。あくまで大目標は次のBC遠征であることを考えると、及第点の内容と結果ではないだろうか。使うレースはBCフィリー&メアターフなのか、BCターフになるのか、どちらのレースになるにせよ、日本馬初制覇の偉業を期待したい。

終わってみれば、掲示板5頭中4頭はG1馬。そのなかで、勝負どころを絶好の手応えで迎えたマイネルウィルトスの脚は光っていた。函館記念前に取材したが、使いながら良くなるタイプの馬で当時は気配が今ひとつのように感じられた。今回は状態も上がっていたし、2走前の福島民報杯の衝撃的な走りが示すように、かなり地力が上がってきているのを認めなければならないだろう。

7年前のゴールドシップ参戦の英断に続き、今回もオークスで初黒星を喫した後の札幌記念、古馬と初対戦というハードな状況ソダシ参戦の決断は簡単ではなかったはず。見事に結果を出した須貝師北村助手今浪厩務員、陣営とソダシを今日は心の底からたたえたい。次走は秋華賞になるのか、古馬相手になるのか。オークスのリベンジはなるのか、同世代の牡馬相手ではどうなのか、いつかは見たいダート戦投入はあるのか。陣営はじっくりと考えてくるだろう。誰もが待ち切れない秋がやってくる。


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