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速攻レースインプレッション

大敗から立て直し、得意の中山で見事に重賞初制覇

文/浅田知広


G1へ向けたステップレースが立て続けに行われる秋競馬序盤。セントライト記念の前日に行われたローズSでは、春のクラシックどころか重賞出走経験すらなかったアンドヴァラナウトが優勝した。底を見せていない良血馬だけに、今後の活躍も非常に楽しみだ。

そんなローズSを見た上で、その翌日セントライト記念である。アンドヴァラナウトと似た戦績の馬は……とも思ったが、こちらはおおむね重賞出走馬同士の争い。あえて言えばカレンルシェルブルあたりが似たタイプだが、4番人気だったアンドヴァラナウトとは違い、こちらは11番人気という人気薄だった。

1番人気はこの中山で弥生賞を勝ち、皐月賞でも②着のタイトルホルダー。前走・日本ダービーは切れ味勝負に巻き込まれてしまったとでも言うべきか、内めで包まれて早めの勝負に打って出ることができずに⑥着。中山に戻って巻き返しが期待された。

続く2番人気は弥生賞④着のソーヴァリアント。その後条件戦を2連勝して、ここは重賞の舞台で改めて力を問われる一戦だ。さらに京成杯勝ちのグラティアス、京都新聞杯②着のルペルカーリア、そしてホープフルS②着以来となるオーソクレースと、重賞好走実績馬が3~5番人気でここまでが単勝10倍以下。10倍台にもレッドヴェロシティ(青葉賞③着)、ヴィクティファルス(スプリングS①着)と、やはり重賞で好勝負を演じた馬が名を連ねていた。

先手を奪ったのは、2走前の皐月賞でもハナを切ったワールドリバイバル。この馬に2コーナーあたりからルペルカーリアが絡んでいった上に、他の上位人気馬も前々の位置取り。人気どころで後方から進めたのは出遅れたレッドヴェロシティくらいで、全体的に「前がかり」という印象だ。

そんな展開の中、3コーナーで前へ前へと押し上げていったのがカレンルシェルブル。あれ、この馬やっぱり買っておいたほうが良かったのか、などとも思ったが、その動きに釣られるように好位からソーヴァリアントも進出開始。後方まで各馬一団、しかし前の馬には苦しそうな展開になって4コーナーを通過していった。

そして直線。人気のタイトルホルダーが馬群に包まれて抜け出せない態勢になっているのを尻目に、大外からソーヴァリアントが楽な手応えで先頭へ。条件戦2連勝の勢いそのままに、後続を突き放して完勝か、という残り150mあたりでの態勢だった。

しかし、そこに後方から迫っていったのがアサマノイタズラだった。「ソーヴァリアント強いな」と思った瞬間の急襲で、少々ぽかんとしている間にソーヴァリアントに並んで交わしてゴールイン。先行勢の争いに目を奪われていた分もあったとはいえ、個人的にはあっけにとられる差し切り勝ちだった。

ここ2走は皐月賞がしんがりの⑯着、ラジオNIKKEI賞⑫着に終わっていたアサマノイタズラ。しかし3走前・スプリングSでは好位から積極的に動いて直線半ばで先頭。最後は外からヴィクティファルスに交わされてしまったが、印象に残る走りは見せていた。

今回、そのスプリングSでのアサマノイタズラのようなレース運びをしたのがソーヴァリアントで、アサマノイタズラ自身は今度はヴィクティファルス役。勝負どころから直線の展開はかなり似ているので、スプリングSの映像を見られる方はぜひ改めてご覧いただきたい。

その後の皐月賞やラジオNIKkEI賞の大敗から立て直し、見事に重賞初制覇を飾ったアサマノイタズラ。今回も含めてキャリア7戦中6戦が中山、そして残る1戦は福島で、いずれも距離は1800~2200mだった。実際、このあたりの小回り中距離に適性がありそうな印象だが、なにせ他の条件では走っていないのだからやってみなければわからない。おそらく菊花賞でもさほど人気にはならなさそうだが、再びファンを驚かせるような走りができるか注目だ。


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