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速攻レースインプレッション

こんな日もある、これもまた競馬

文/鈴木正(スポーツニッポン)、写真/森鷹史


神戸新聞杯不良馬場で行われたのは36年ぶりだという。新聞制作者として、不良馬場というのは実に悩ましい。勝ったステラヴェローチェは当然、素晴らしい。殊勲だ。かといって、シャフリヤールより圧倒的に強くなったのかといえば、そうは言い切れない。明らかにステラヴェローチェ向きの舞台設定となったからだ。シャフリヤールにとってはライバル向きのリングで戦って3カウント取られたようなもの。「まだ決着はついてないぞ!」とマイク・パフォーマンスしたい気持ちだろう。

うん、書いていて自分の中で今、実に分かりやすく消化できた。シャフリヤールの完敗を深刻に受け取る必要はない。プロレスでいえば、シリーズ序盤に自分には不向きのリングで負け、ライバルに向かって「次は倒してやる!」と叫んだ段階。次走が菊花賞なのか、天皇賞なのか(あるいはもっと違うレースなのか)分からないが、そこがシリーズラストの東京ドーム大会であり、そこで勝てば栄誉が手に入る、ということだ。不良馬場で行われたことを、あまり深刻に受け取らないようにすることに決めた。これもまた競馬なのだ。

何度も言うが、勝ったステラヴェローチェの名誉にケチをつける気持ちはつゆほどもない。自分の土俵でダービー馬をねじ伏せた。堂々と勝ち名乗りを受けるべきだ。父はバゴ。クロノジェネシスを持ち出すまでもなく雨をものともしないパワーにあふれている。サウジアラビアロイヤルCを勝った時が不良馬場。間を鋭く割り、力強く伸び切った。

バゴ産駒の先輩といえば思い出すのがもう1頭。2010年菊花賞馬ビッグウィークだ。台風直撃なども多く、天候が崩れがちな秋競馬。次走が再び降雨の競馬になる可能性は少なからずある。いや、このパフォーマンスを見れば、良馬場だって突き抜ける可能性があるだろう。そう、不良馬場で勝った馬は次走で良馬場となった時、どのような力の評価をすべきかが難しくなる。予想のセンスが問われる。

②着レッドジェネシスには驚いた。ディープインパクト産駒だが、苦もなく伸びて、直線でいったんは先頭に立った。ゆきやなぎ賞勝ちが稍重馬場だったが、ここまで不良馬場をこなすとは陣営にとってうれしい誤算ではないだろうか。身もふたもないことを言えば、良馬場で走ったらどうだったかを知りたい。夏を越して大いにパワーアップした可能性はかなりあるだろう。

モンテディオが③着で菊花賞の優先出走権を獲得。四位洋文調教師、持ってるなあというのが第一印象だ。父はジャスタウェイ。道悪で根性を発揮できるのは、この父からのものだろう。前走の札幌戦で4角先頭から完勝。今回も2番手で立ち回った。以前より、戦法に安定感が出てきた印象。騎手としてダービーを二度も制した指揮官は、どんなことを教えれば馬が戦いやすくなっていくかを知り尽くしている気がする。この先も四位師には注目したい。

さて、シャフリヤールだ。福永騎手は最善を尽くした。目の前にイクスプロージョンを置き、精神的な消耗を最低限にとどめた。直線でも外に出し、馬場のいいところで伸びを引き出そうとした。それでも不良馬場というのは手強い存在だった。道中でダービー馬の体力を奪ったのだろう。ラストは手前が戻ってしまい、明らかにフットワークが小さくなった。④着。3カウントだ。パドックでの雰囲気は良かった。毛ヅヤも素晴らしかった。それでも不良馬場はダービー馬のスタミナを奪い去った。恐ろしい。

ただ、こんな日もある。人間だって生きていれば、自分の手の及ばない領域で不利な状態が発生し、きつい目に遭うこともある。競馬も同じだ。シャフリヤールは今回、予期せぬコンディションとなって敗れた。だが、この④着を恥じる必要はない。次で勝ち、改めて胸を張ればいい。オールカマーのレイパパレにも同じことが言えるが、負けたことで気持ちに変化が起こり、その後の大きな成長を促すケースはよくある。シャフリヤールにとって、この神戸新聞杯は悪夢ではない。次へのジャンピングボードだ。自分ならシャフリヤールをそうなぐさめるし、実際に、そういう未来にできる力がダービー馬にはあると思う。


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