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速攻レースインプレッション

快挙と呼べる勝利であり、内容的にも完勝だった

文/後藤正俊(ターフライター)


秋のG1シリーズのスタートとなるスプリンターズS。台風の影響が心配されたが、当日は初秋の晴天が広がり馬場も良に回復。スプリント王決定戦にふさわしい舞台となった。

昨年の覇者グランアレグリアが天皇賞・秋に目標を定めたため、ここには姿を見せなかったが、一昨年③着、昨年②着のダノンスマッシュ、春の高松宮記念でそのダノンスマッシュとクビ差の勝負をしたレシステンシア、短距離路線にシフトして古馬相手に重賞連続②着の3歳馬ピクシーナイトと役者は揃った。

有力各馬はいずれも好スタートを切り、大方の予想通りに快速モズスーパーフレアが大外枠から先手を奪い、ビアンフェが2番手で折り合う。ピクシーナイトは絶好の内の3番手をキープし、レシステンシアが外から4番手。ダノンスマッシュは前のライバル2頭を見ながら5~6番手からの競馬。そのままの隊列で前半3ハロンは33秒3と過去2年(32秒8)よりも速くはならず平均ペース、モズスーパーフレアの逃げとすればスローとも言える流れになった。

いまの中山は内が荒れておらず、前が止まりづらい。直線を向いてモズスーパーフレアビアンフェの間を割ったピクシーナイトが早めに抜け出すと、後は危なげなく後続を突き放してゴール。先行した2頭の外を回ったレシステンシアは、内から差してきたシヴァージとの②着争いをアタマ差でしのいだものの、ピクシーナイトには2馬身差を付けられた。レシステンシアのさらに外から追い込もうとしたダノンスマッシュは、逃げたモズスーパーフレアを交わせず、逆にメイケイエールには差されて⑥着と掲示板に載れなかった。

デビュー3戦目にシンザン記念を逃げ切ったピクシーナイトは、モーリス×キングヘイローという血統もあってか早々とマイル路線に舵を切り、アーリントンC④着、NHKマイルC⑫着と逃げて結果を出すことができなかったが、短距離路線を歩んだ7月からは古馬相手のCBC賞、セントウルSでともに差して②着と好走。両レースとも外枠の不利を克服したもので、セントウルSではレシステンシアにクビ差まで迫った。今回はレシステンシアとは枠順の内外が逆になり、前走と同じくレシステンシアとは同斤だったのだから、成績的にはこの逆転劇は決して番狂わせではなかった。

だが、3歳馬の優勝は2007年アストンマーチャン以来14年ぶり。以前は3歳馬が活躍するG1だったが、2000年から開催時期が9月末~10月初めに変更されて以降は古馬優勢が続いていた。その点ではこの時期に3歳馬が古馬短距離G1を制覇したことは、やはり快挙と呼べるものだ。

1分7秒1の勝ちタイムは一昨年のタワーオブロンドンと同じで、この10年では2012年ロードカナロアの1分6秒7に次ぐタイム。着差が付きにくい1200m戦で②着との2馬身差は、昨年のグランアレグリアと同じで過去10年で最大であり、完勝と言えるだろう。

この日の馬体重は538キロ。3歳でまだ緩さが残っている巨体が、今後さらに身が入ってくればどれだけ強くなるのか。父モーリス同様に古馬になってさらに変身する可能性も高いだけに、今後のアジア短距離界の主役として君臨し続けるだけでなく、初年度産駒から早くもモーリスの後継が出現したこと、グラスワンダーの父系がさらに続いていきそうなことにワクワクさせられる。

②着レシステンシアはまったくロスのない競馬をした。能力の高さは誰もが認めるところだが、マイルはやや長く、6ハロンはやや短い印象がある。7ハロンのG1がないのは残念だが、6ハロン戦でももっと厳しい流れになればチャンスが広がるはず。消耗戦になることが多い12月の香港スプリントを目指しても面白いかもしれない。

ダノンスマッシュはやや外を回されたとはいえ、4角ではすでに川田騎手の手が激しく動いていたように内容的には完敗で、敗因ははっきりしない。前走の香港・チェアマンズスプリントプライズも似たような内容だったが、成績にムラがあるのがこの馬の特徴でもあるだけに、まだまだ見限ることはできないだろう。巻き返しに期待したい。

③着シヴァージは最内枠を上手く活かした立ち回りだったが、馬群を割った勝負根性は目立っていた。このまま芝路線でも一発の魅力を秘めている馬だが、再びダート路線に戻ってJBCスプリントなど交流G1を目指す手もあるのかもしれない。④着メイケイエールはスタート後に大きくヨレるなど、相変わらず気性面の難しさが解消されないが、それでもこの着順まで詰めたのだから潜在能力は高い。じっくりと時間をかけて矯正できればいつかは大仕事をしてくれるだろう。


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