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速攻レースインプレッション

鍛えに鍛えた決め手を活かし、G1初挑戦で初制覇

文/鈴木正(スポーツニッポン)


直線を向いてアカイイトが外から力強くアカイトリノムスメをかわした瞬間、「アカと言えば私!」と言っているような迫力を感じた。2馬身差の完勝。G1初挑戦とは思えない勝ちっぷりだった。

アカイイトの馬名は父キズナからの連想だ。「赤い糸」といえば男女の運命的出会いのことであろうが、アカイイト自身も新馬戦で牝馬相手に戦ってからは、その後6戦、牡馬相手に奮戦を重ねた。牝馬相手のレースにこだわらず、牡馬相手でも自分に向く間隔、距離、競馬場を選んで走ってきたことが地力の強化につながったとみる。若い頃にかいた汗はキャリアを重ねてから効いてくる。人間と同じだ。

主に鍛えたのは決め手。2勝目を挙げるまでの10戦で実に上がり3F最速が7度。ひたすら末脚を磨いてきた印象だ。

似ているなと思うスポーツマンがいる。プロ野球、セ・リーグのクライマックスシリーズ。巨人相手に完封し、MVPを手にしたヤクルト・奥川恭伸投手だ。まだ20歳の若きエースだが、昨年の二軍時代、伸び伸びと投げ、ストレートを磨き、その中で自分なりに工夫しながら投球術をアップさせてきたという。アカイイトも同じだと思う。陣営が早くから持ち味に気付き、そこを伸ばすために伸び伸びと育ててきた感じで、慧眼というべきだろう。

レースはまさにアカイイト向きとなった。シャムロックヒルがすんなりハナと思ったところで外からロザムールがプレッシャーをかける。1000m通過は59秒0。平均よりやや速い、というところか。注目は、2頭から少し離れたところでウインマリリンレイパパレアカイトリノムスメが固まって重圧をかけ合っていたように見えたところ。馬は、どの馬がライバルかを分かっていると思う。上位人気3頭はバチバチとにらみ合い、その分、消耗も早かったのかもしれない。

アカイイトはスタートひと息。後方から5頭目付近でレースを進めた。注目は向正面。いつでも動き出せるよう、外に構えた。前がバテるシーンを予測していたのだろう。4角手前で動き出し、スピードに乗って4角では5番手の外。そして冒頭に書いたようにアカイトリノムスメをねじ伏せるようにパス。力強く先頭に立って押し切った。

幸騎手のコメントがいい。「最後は絶対に伸びてくれると信じて。G1で阪神の内回りなので、ちょっと早め早めに長く脚を使わせたいというイメージで乗りました。思ったよりも早く前を捕まえて、最後、1頭になっていたので必死に追いました。頑張ってくれました」。まさに考えていた通りの競馬をやり切った。鍛えに鍛えた決め手は初騎乗の幸騎手すら全面的に信用するレベルに達していた。

岡浩二オーナーの勝負服と幸騎手といえば、やはりヨカヨカを思い出す。熊本県産馬として初めてJRAの重賞(北九州記念)を制したが、左第1指節種子骨の骨折で電撃引退した。引退に際し、ヨカヨカの生産者・本田土寿さん「神様のプレゼントだった」と話していた。生産者こそ違う(アカイイトは辻牧場)が、岡オーナー幸騎手にとっては「ヨカヨカからの赤い糸」と思えたのではないか。

②着はステラリア。4角手前でアカイイトに先にスパートされて不利もあったようだが、エンジンが掛かってから坂上での伸びは素晴らしかった。現状ではベストの乗り方だったのではないだろうか。まだ3歳秋。ここから力を付けていけるはず。こちらもキズナ産駒。いい根性を備えている。

レイパパレ(⑥着)は道中で行きたがった。4角手前で仕掛けて早めに先頭に立ったが、道中で消耗した分、粘り切れなかったのだろう。この先は気持ちとの戦いになるような気がする。アカイトリノムスメ(⑦着)は結果論で言えば中3週が響いているのではないだろうか。重賞2勝(秋華賞、クイーンC)を含めて休み明けは3戦3勝。やはり、間隔を空けてのロングシュートが合うタイプなのだろう。


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