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速攻レースインプレッション

後世に語り継がれる印象深いレースになった

文/後藤正俊(ターフライター)、写真/森鷹史


今年のJRAの平地G1レースは皐月賞を終えた時点でまだ1番人気馬が勝利していない。その成績は⑥⑥⑨⑩③着で、掲示板に載ったのも皐月賞③着のドウデュースだけと波乱が続いている。2番人気を見ても、フェブラリーSでカフェファラオが勝ったものの、その後は⑤⑤④④着。天皇賞・春は実績で抜けている1番人気ディープボンド、2番人気タイトルホルダーの一騎打ちの様相を呈していたが、この2頭がともに8枠に入った。

3200m戦だけに枠順に左右されることは少ないだろうし、内が荒れてきた馬場状態を考えると大きな不利ではないかもしれないが、スタートである程度の脚を使わなくてはならない。午前中で雨は上がったものの馬場は稍重。波乱の要素も含みながらスタートを迎えた。

そのスタートでいきなりアクシデントが起きた。発馬でシルヴァーソニックがつまずいて落馬。幸い、両脇の有力馬2頭がスタートで大きな不利を受けることはなかったように見えたが、カラ馬が先行馬群に突っ込み、各騎手はその動向を常に気にしながらのレースを余儀なくされた。

だが、16番枠から絶好のスタートを決めたタイトルホルダーは内に切れ込んですぐに先頭を奪うと、勝負を分ける前半から中盤にかけてはカラ馬の影響を受けることなく、マイペースの逃げスタイルに持ち込むことができた。最初の1000mは60秒5。最初の1000mを60秒0で飛ばした菊花賞と同様に、速い流れに持ち込んで誰にも競り掛けられないセーフティーリードを保った。

中盤の1000mは63秒1とややペースを落としたが、2番手を進むクレッシェンドラヴとは1馬身差以上を維持。そこから再びペースを上げて次の1000mは59秒4で3000m通過は3分3秒0。良馬場だった菊花賞の逃げ切りタイムが3分4秒6で、稍重馬場で57→58kgと1キロ斤量が重くなった今回は菊花賞よりも1秒6も速かった。

ゴール前で内からカラ馬に絡まれたものの、騎手が乗ったライバルたちには影をも踏ませない。最後の1ハロンは13秒2を要したが、菊花賞の5馬身差を上回る7馬身差の圧勝で、ただ1頭のG1勝ち馬の存在感を見せつけた。このペースで逃げられてしまったら他馬はどうすることもできなかった。

タイトルホルダーはこれで、テンから逃げた5レースで全勝。逃げられなかった6レースはいずれも敗れている。父ドゥラメンテ、母の父系はサドラーズウェルズ(欧州の大種牡馬)~モンジュー(凱旋門賞馬)~モティヴェイター(英ダービー馬、トレヴの父)という配合なのでスタミナ型ではあるが、気性的にもたとえハイペースになろうと「マイペース」のレースで力を発揮するタイプなのだろう。先手が奪いやすい長距離戦が絶好の舞台になるわけだ。

そう考えると、3000m級のG1は来年の天皇賞・春までないわけだし、今後のローテーションはなかなか難しそうだが、それならばハナを取れそうな凱旋門賞で、ぜひ圧巻の逃げ切り勝ちを見せてもらいたいと切に願う。

G1初制覇となった横山和生騎手タイトルホルダーを信じ切ったペース判断も見事だった。「天皇賞親子3代制覇」こそ弟の横山武史騎手に昨秋先を越されたが、「天皇賞・春親子3代制覇」は先に達成した。祖父(横山富雄元騎手)は1971年メジロムサシ、父(横山典弘騎手)は1996年サクラローレル、2004年イングランディーレ、2015年ゴールドシップという個性派たちでこの天皇賞・春を制している。

②着に7馬身差は、父が騎乗したイングランディーレが逃げ切った時と同じで、大差勝ちの1968年ヒカルタカイに次ぐ史上2位タイの着差となった。横山和騎手と個性派逃げ馬タイトルホルダーのコンビによる天皇賞・春制覇も、後世に語り継がれる印象深いレースになった。

1番人気ディープボンドはバテない末脚で最後にテーオーロイヤルを交わして②着と意地を見せた。道中はカラ馬と絡む場面もあり、その不利も影響したと思うが、このレースに限っては勝ち馬が強すぎた。だが、良馬場だったとはいえ今年以上のハイペースだった昨年の天皇賞・春では3分14秒8で②着になっているのだから、誰かがタイトルホルダーに鈴をつけにいく展開になっていたら、結果は変わっていたかもしれない。いずれにしても、スタミナ勝負になれば今後も大仕事をしてくれそうだ。

4連勝中だったテーオーロイヤルはその勢いのまま③着。マーチSで重賞2勝目を挙げた半兄メイショウハリオとはまったく違うタイプの兄弟だが、まだ10戦のキャリアと奥深さを見せている。1戦ごとに力を付けている印象がある⑤着アイアンバローズとともに、今後も中長距離重賞で中心となっていく存在になりそうだ。

④着ヒートオンビートも母マルセリーナとはかなり違うタイプだが、カレンブーケドールのようにどんな相手、距離、馬場でも堅実に走る存在になっていくのではないだろうか。近いうちに重賞制覇を飾る可能性も十分ありそうだ。


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