独自視点で穴馬推奨!競馬予想支援情報【サラブレモバイル】

サラブレモバイル

メニュー

ログイン

速攻レースインプレッション

第一人者による完璧なレース内容でレコードV

文/後藤正俊(ターフライター)


日本ダービーを見続けてもう50年以上が経つ。大波乱のレースも数多くあったが、レース前の予想がこれほど難解なレースはなかったのではないだろうか。

皐月賞の上位4頭が単勝3.5~5.9倍と人気の中心に推されたが、皐月賞は⑭着までが勝ったジオグリフから1秒以内の僅差だった。皐月賞組が12頭を占めたが、距離もコースも変わるだけに、皐月賞上位組がそのままダービーでも好走できるかどうかは未知数だし、別路線組の6頭はどの馬にもチャンスがありそうに思える。当初は1番人気が予想されていた皐月賞②着馬イクイノックスは大外18番枠に入った影響か2番人気にとどまり、皐月賞④着のダノンベルーガが僅差の1番人気となった。

入場制限が緩和され、出走馬にとっては初めての大観衆の中でのレース。しかもスタンド前のスタートで、ファンファーレとともに大観衆の手拍子、声援が巻き起こると、イレ込みを見せた馬もいた。ダノンベルーガはやや発汗が目立ち、ジオグリフもイライラした様子を見せていた。

ゲートが開くと、大方の予想通りにデシエルトがハナを主張し、離れた2番手は皐月賞で⑤着に逃げ粘ったアスクビクターモア。5ハロン通過は58秒9で、馬場状態の良さを考えれば2番手以下はほぼ平均ペースの流れとなった。

人気上位馬の位置取りはダノンベルーガジオグリフが並んで10~11番手の中団を進み、それをマークするようにドウデュースが13~14番手。さらにそれを見る形でイクイノックスが16番手を進み、ほぼそのままの位置取りで直線を迎えた。

アスクビクターモアが楽な手応えのままデシエルトを交わして先頭に立ち、そのまま押し切りを図る。一旦はセーフティーリードにも見えたが、外からドウデュースが素晴らしい伸びを見せる。さらにその外をイクイノックスが追うが、その差はなかなか詰まらない。この2頭が残り100m地点でアスクビクターモアを交わすと馬場中央で並んだ2頭の一騎打ちとなり、ドウデュースがクビ差を守り切った。③着は粘ったアスクビクターモア、④着は進路を内に切れ替えて追い込んだダノンベルーガ、⑤着は好位で粘ったプラダリアジオグリフは伸び切れずに⑦着だった。

ドウデュースを操った武豊騎手は9年ぶり、6度目のダービー制覇。第一人者の意地を見せつけた一戦で、完璧なレース内容だった。7枠13番の枠順に逆らわず、包まれることのない外目を通ることを最初から決めていたのだろう。長手綱で気分良く、馬のリズムのまま進み、4角でも迷うことなく大外に持ち出した。上がり3ハロンは33秒7で、その後方から詰めたイクイノックスの33秒6には0秒1及ばなかったが、ゴール前の脚色は同じになっており、着差はクビでも危なげのない勝利に見えた。日本ダービーを知り尽くした男の一人舞台だった。

勝ちタイムの2分21秒9は、昨年のシャフリヤールを0秒6上回るダービーレコード。時計そのものは馬場状態やペースにも左右されるが、皐月賞に続いて33秒台の切れ味を発揮したレース内容は高く評価できるし、朝日杯FS当時と比べてもいかにもハーツクライ産駒らしい成長力が感じられる。

オーナーサイド厩舎サイドからは早くから「凱旋門賞」というワードが出ており、順調なら秋は欧州遠征が具体化される可能性もあるはずだ。その切れ味がパリロンシャンの馬場に合うかどうかは未知数だが、父はドバイシーマクラシックを制し、キングジョージ6世&クイーンエリザベスSの③着馬で、その産駒はジャスタウェイ、アドマイヤラクティ、ヨシダと海外でも好成績を残している。武豊騎手とのコンビで、ディープインパクトの忘れ物を取りに行くのもハーツクライ産駒らしい物語になる。

②着イクイノックスは直線でドウデュースの内を突くか外に回すのか、ルメール騎手に一瞬の迷いがあったようにも見えた。本来はドウデュースの位置が欲しかったのだろうが、枠順の差も結果に微妙に影響したように見えた。それでも皐月賞に続いての②着は実力の証明。キタサンブラックがいきなりこのような名馬を送り出してくれたことはファンにとっても嬉しいことだろうし、馬産地にとっての価値も高いものとなったと思う。惚れ惚れするような青鹿毛の光輝く好馬体で、時計の速いコースもタフなコースもこなせる万能タイプ。春の2冠はともに大外枠と運がなかったが、今後は父に匹敵する活躍が期待できるのではないだろうか。

③着アスクビクターモアは先頭に立った時点でソラを遣ったように見えた。前に馬がいればもっと伸びていても不思議ではない印象で、先行力は確かに魅力だが、ディープインパクト産駒らしい差しに転じたら大仕事をする可能性が高まるのではないか。

④着ダノンベルーガは直線で前が壁になり、進路を切り替える場面があった。それでもここまで盛り返したのは力がある証拠だが、気性面での落ち着きが今後の課題となりそうな気がする。⑦着ジオグリフは手応えのわりに伸びておらず、血統的に2400mはやや長かったのかもしれない。


TOPページに戻る