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速攻レースインプレッション

控える競馬で実力馬たちを相手に勝利、秋が楽しみになった

文/出川塁、写真/川井博


今年の札幌記念が行われる直前の8月19日、殿堂入りも果たした名伯楽・伊藤雄二元調教師が17日に亡くなったことが明らかになった。年間リーディングに3度輝くなど、積み重ねた通算1153勝はJRA歴代8位を数える。

二冠牝馬のマックスビューティやダービー馬ウイニングチケットなど送り出した名馬は数知れない。そのなかでも、上京した1996年から本格的に競馬を見始めたにとっては、その年のオークスを勝ったエアグルーヴがやはり印象深い。

翌1997年、エアグルーヴは年度代表馬に輝くことになるが、その実力を改めて知らしめたのが夏の札幌記念だ。この年からG2に昇格し、皐月賞馬ジェニュインなどの一線級が集った一戦を2馬身半差で快勝。続く天皇賞・秋では前年の覇者バブルガムフェローを競り落とし、17年ぶりの牝馬による天皇賞制覇を達成した。21世紀に入ってからは当たり前の光景になっているが、「牝馬の時代」を10年以上も先取る快挙だった。

翌1998年の札幌記念では、牝馬としては過酷な58キロを背負って勝利(当時は別定戦)。G2になって連覇した馬は現在もエアグルーヴが唯一だ。また、伊藤雄師は2001年にエアエミネム、2004年にファインモーションでも制し、札幌記念4勝は最多タイ記録となっている。

それだけに今年、ソダシにエアグルーヴ以来の連覇を期待したファンは少なくなかっただろう。ただでさえ常に注目される現役屈指のアイドルホース。前走のヴィクトリアマイルで完全復調をアピールし、札幌は2戦2勝、北海道の洋芝は3戦3勝という得意の舞台でもある。

ただし、そう簡単なレースにはならなさそうではあった。気になったのは馬場と展開だ。馬場は当日の芝は8Rから良に回復したものの、いくぶん時計がかかる状態は変わらず。単純な比較だが、9Rのクローバー賞の勝ち時計は昨年が1分29秒1、今年は1分31秒6と2秒5遅い。マイルでレコードを叩き出すソダシのような馬にとって、歓迎すべき馬場ではないだろう。

展開面では、今回はとにかく強力な逃げ馬が揃った。パンサラッサジャックドールという2頭に加えて、昨年の宝塚記念で逃げて②着のユニコーンライオンもいる。必ずしも逃げる必要はないソダシだが、すんなり2番手から3角で先頭に立って押し切った昨年のような展開は見込みづらい。それでも1番人気に推されたのは、この馬の実力と人気の表れだろう。

演奏の難しさで有名な札幌重賞の生ファンファーレが鳴り渡ってゲートオープン。注目の先頭争いでまず飛び出したのはユニコーンライオンだったが、まもなく内からパンサラッサがハナを奪っていく。ジャックドールは2頭の後ろ、ウインマリリンと並んで3番手を追走し、ソダシはもう1列後ろの5番手という隊列に定まった。

前半1000mの通過は59秒5。稍重から回復した洋芝ということもあり、字面だけでペースが速いのかどうかを見極めるのが難しい。しかも逃げているのが本州の馬場なら57秒台で飛ばすパンサラッサなので、むしろ遅く感じてしまうところもある。実際のところどうだったか前後半を比較すると、後半1000mは61秒7。前半より2秒2も落ちており、けっこうな前傾ラップだったことがわかる。

しかし、そんな前がかりの流れになったのに後ろの馬が全然差してこない。これが今年の札幌記念というか、この日の札幌の馬場だった。メインまでの芝5レースで、4角1番手が3勝で2番手が2勝。札幌記念はもっと顕著で、4角で前にいた6頭のうち、バテて下がったユニコーンライオンを除く5頭が掲示板を占めることになった。

ただし、単なる行った行ったのレースではなく、最後の直線では力が入った。逃げたパンサラッサが残り200mを切ったところでジャックドールにかわされて苦しくなったものの、そこから抵抗して差し返しにいく場面さえあった。最終的にはクビ差先んじられて②着も、①着同着のドバイターフ同様の底力を披露した。勝っても負けてもパンサラッサが逃げればハズレのレースなし、現役屈指の名勝負製造ホースとして秋競馬でも大いに暴れ回ってほしい。

さらに秋が楽しみになったのは、連勝ストップの大阪杯から即座に巻き返してきたジャックドールだ。実力馬たちを相手に好位に控える競馬で勝利を収め、レースの幅が格段に広がった。快速逃げ馬としての個性を失うのは残念な気もするが、これが大人になるということなのだろう。2016年札幌記念で逃げ切りを許し、②着に甘んじた父モーリスの借りを返した格好でもある。

以下、今年に入ってからは元気がなかったウインマリリンが③着に粘って復調気配を示し、④着には12番人気の伏兵アラタ。そして、ソダシは最後に脚色が鈍って⑤着に終わった。得意の洋芝ではあるが、道悪含みの2000mとなるとスタミナ面で苦しいのかもしれない。高速馬場なら天皇賞・秋でも面白いと思ったが、秋の大目標はマイルCSに設定されたようだ。


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