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速攻レースインプレッション

「もっとも強い馬が勝つ」舞台で本領を発揮した

文/後藤正俊(ターフライター)、写真/森鷹史


牡馬クラシック最後の関門・菊花賞はその存在意義が徐々に変化している。3000mという距離は世界的にも特殊なカテゴリーに位置され、ましてや3歳馬にとっては、嵐山Sが廃止されて以降はどの馬にとっても初挑戦の距離となった。また、年間を通して平地3000m以上のOPのレースは6レースだけであり、菊花賞のタイトルが種牡馬としての価値を大きく高めることになっていないという見方もある。

今年はダービー馬ドウデュースが凱旋門賞に、皐月賞馬ジオグリフと両レース②着のイクイノックスが天皇賞・秋に向かったため、65年ぶりに皐月賞、ダービーの連対馬が出走しない菊花賞となった。だが過去の勝ち馬を見ると、3冠馬たちはもとより、近年もゴールドシップ、エピファネイア、キタサンブラック、サトノダイヤモンド、タイトルホルダーら名馬がズラリと揃っている。カテゴリーは特殊であっても「もっとも強い馬が勝つ」の格言は色褪せていないことも伺える。

レースはスタートで飛び出したセイウンハーデスが1000mを58秒7、2000mを2分1秒4というハイペースで飛ばした。昨年逃げ切ったタイトルホルダーは順に60秒0、2分5秒4で、昨年よりもはるかに厳しいペースとなった。

2番人気のアスクビクターモアはこのセイウンハーデスの逃げを3~5馬身程度後方の2番手で追う積極的なレースを見せた。アスクビクターモアの位置でも2000m通過はおそらく2分2秒台前半というペースで、田辺騎手はこの馬のスタミナに絶大の信頼を得ていたのだろう。アスクビクターモアは4角手前でセイウンハーデスを捉えて先頭に立つと、後続に4馬身程度の差をつけて直線に向いた。

直線では、好位から馬群を割ってきたジャスティンパレスと、道中は中団馬群の内に付けていたボルドグフーシュが4角で外に持ち出して、2頭が並んで猛然とアスクビクターモアに迫る。真ん中のジャスティンパレスが半馬身遅れたが、内のアスクビクターモアと外のボルドグフーシュが並んでゴールイン。

写真判定の結果、アスクビクターモアがハナ差で制して、第83代菊花賞馬となった。田辺騎手吉田隼騎手鮫島駿騎手の3騎手による叩き合いも見応えのあるものだった。3分2秒4の勝ちタイムはコースレコードで、菊花賞史上では2014年トーホウジャッカルの3分1秒0に次ぐタイムとなった。

アスクビクターモアは弥生賞ディープインパクト記念でドウデュースを破って重賞制覇を果たしたものの、皐月賞は逃げて⑤着、ダービーは2番手から粘り込んで③着、セントライト記念はゴール前でガイアフォースに競り負けて②着と惜敗が続いていた。鋭い決め手が大きな武器のディープインパクト産駒だが、この馬は母の父レインボウクエストの影響を強く受けているのか、切れ味よりもスタミナが長所。このハイペースを追走して最後の阪神の急坂も耐え切ったのだから、3000mという距離がもっとも向いていたと思われる。タイトルホルダーの逃げならハイペースが想定される有馬記念、来年の天皇賞・春でも主役候補になることは間違いない。

ディープインパクト産駒は菊花賞5勝目、3歳クラシックは通算24勝目を挙げ、並んでいた父サンデーサイレンスの記録をついに超えた。前日には英国の2歳G1・フューチュリティトロフィーをオーギュストロダンが制し、全13代でG1勝ち馬が誕生するという快挙を達成したばかりだったが、改めて種牡馬としての偉大さを知らしめた。③着ジャスティンパレスも阪神内回りでは不利の17番枠を克服してのものだけに、中距離路線ではむしろこちらの方が能力は高いかもしれない。ともにディープインパクトの後継種牡馬となってくれることだろう。

惜敗のボルドグフーシュスクリーンヒーロー産駒だが、血統的にはサンデーサイレンスの3×3のインブリード。母の父レイマンは米国産のサンデーサイレンス産駒で、仏・英のG3勝ち馬。サンデーサイレンスが意地を見せた②着にも思えた。今回もメンバー中最速の上がり36秒3の末脚で、これで上がり最速は6戦連続。ローテーションはきつくなるが、ジャパンCでの父子制覇を見てみたい。また、アスクビクターモアボルドグフーシュはともに千歳・社台ファームの生産馬による①②着独占。今年はスターズオンアースでの牝馬2冠もあり、クラシック3勝目となった。

1番人気ガイアフォースは⑧着で、これで平地G1の1番人気馬は16連敗と記録を更新した。好位の内で追走する理想の展開にも見えたが、4角ではすでに手応えがなかったように見えた。もともと頭の高いフットワークに加えて、馬群で首を上げるシーンもあった。距離が原因なのか、1番枠からの窮屈な展開が向かなかったのかははっきりしないが、父キタサンブラックのように前に出て力でねじ伏せるレースが向いているようにも思えた。


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