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速攻レースインプレッション

厳しい条件を克服した“ベテランの味”が光った

文/後藤正俊(ターフライター)、写真/瀬戸口翔


日本全体が興奮のるつぼと化したWBC決勝から4日、そして世界の競馬ファンを震撼させたドバイでの日本馬の大活躍からわずか半日しか経っていない中で行われた高松宮記念。今年最初の芝G1競走であり、競馬ファンにとっては待ちに待った本格的な春のG1シーズン突入となるレースだが、「世界一」になることの魅力を知ってしまったファンからすると、国内G1が今後の海外挑戦にどのように繋がるのかに大きな興味を抱くようになっている。

その意味では、高松宮記念は4月の香港G1チェアマンズスプリントプライズに繋がる。事前に選出が決まっているのはメイケイエールだけだが、ここで好走すれば追加選出の可能性もある。芝短距離では香港が世界でもトップレベルであり、同レース連覇中のウェリントンや、今年に入って急成長を遂げているラッキースワイニーズら強豪がひしめいている。芝短距離での打倒・香港勢の期待も込めてレースを観戦した。

中京競馬場は前日から雨が降り続き、高松宮記念前にはさらに雨脚が強くなり、馬場はかなり水分を吸った不良馬場。軽快なスピードを武器にする馬にとっては厳しい条件となったが、一方で18頭立てでも枠順の有利不利が緩和される条件でもあった。

それを証明したのが7枠13番ファストフォースだった。スタートを決めて中団外を楽に取り切ると、3~4角から仕掛け気味に外からポジションを上げていく。直線に向くと馬群に包まれそうになる瞬間もあったが、団野騎手が思い切って切り込んで馬場の真ん中から突き抜ける。外からナムラクレア、内からナランフレグトゥラヴェスーラが追いすがるが並ばせることなく、最後は②着ナムラクレアを1馬身突き放していた。団野騎手はデビュー5年目で初のG1制覇となった。

ファストフォースの重賞勝ちは21年CBC賞だけ、G1は4度目の挑戦だったがこれまでは⑮、⑨、⑩着と掲示板にも載っていなかったせいか12番人気の評価だったが、これは人気の盲点だった。前哨戦のシルクロードSナムラクレアからアタマ差②着で、そのナムラクレアは2番人気に推されていた。ナムラクレアとの斤量差は前走の1kgから2kgになっていたとはいえ、これほど人気に差がつくほど実力差があったわけではない。

ファストフォース自身、芝の道悪は不良馬場の未勝利戦②着、重馬場の1勝クラス①着、重馬場だった昨年の高松宮記念は⑨着だったものの勝ったナランフレグからは0秒3差とそれなりの実績があったし、JRAデビュー後に門別に転厩して4戦3勝とダート実績は豊富。何よりもこのレースが29戦目という7歳馬らしい経験の豊富さが、厳しい条件を克服できた大きな要因だったように思える。

このレースには7歳以上の馬が4頭出走していたが、他にも8歳馬トゥラヴェスーラが③着、7歳馬ナランフレグが④着と3頭が上位に入った。ベテランの味が光ったレースだった。

その中で4歳牝馬ナムラクレアがしっかりと②着を確保した。2歳時のフェニックス賞で不良馬場を克服して快勝しているように道悪適性もあったのだろうが、これでデビューから12戦4勝②着3回3着③回で、G1・4戦を含めすべて掲示板を確保している。スピード馬には成績の波が激しい馬もいるが、この馬は馬場状態、コース、展開に左右されず、マイル以下の距離なら常に全力を出し切ってくれる。ローテーションはやや厳しくなるが、この精神力の強さがあれば香港に遠征してもかなりの好勝負ができるのではないだろうか。今後に期待が膨らむ。

1番人気メイケイエールは好位を進んだものの、直線で失速して⑫着敗退。ナムラクレアと同じミッキーアイル産駒でも、こちらは道悪をやや苦にしているのかもしれない。セントウルSを1分6秒2でレコード勝ちしているように、良馬場のスピード競馬が最適な舞台なのだろう。それは3番人気で⑦着に敗れたアグリも同様で、ともに良馬場での巻き返しに期待したい。


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