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速攻レースインプレッション

この血統らしく長距離戦で大仕事をやってのけた

文/木南友輔(日刊スポーツ)、写真/森鷹史


今年の天皇賞・春は新装された京都競馬場で初めて行われたG1だった。スタンドの改修とともにコースレイアウトなどはそのままに、馬場も走りやすく改善されたと伝えられてきた。その開催2週目。開幕週は先行有利かと思えば、マイラーズCでシュネルマイスターが豪快に差し切ったように、末脚勝負が決まるレースもあった。土曜夜には大量の降雨が予想され、水分を含んだ馬場がレースにどこまで影響を及ぼすのか。ファン関係者も手探りの状態で迎えた大一番だったに違いない。

単勝1倍台の圧倒的な支持を集めたのが、連覇を狙う関東馬タイトルホルダー。59キロを背負った日経賞は不良馬場で8馬身差の圧勝をおさめ、昨年以上の臨戦過程だった。この馬にとっての懸念材料は、舞台が阪神から京都に変わること。菊花賞、昨年の天皇賞・春、宝塚記念と、阪神では素晴らしいパフォーマンスを連発してきた。圧倒的な人気は「コース不問のスーパーホースであってほしい」というファンの期待の表れだったのかもしれないが…。

大外アフリカンゴールドの逃げ宣言、前々に攻めたいアイアンバローズディープボンドディアスティマなど、先行馬が激流に巻き込まれる可能性は戦前から高かった。そして、終わってみれば、タイトルホルダーにとって、想定しうる最悪の展開になってしまったと言っていいだろう。

まずまずののスタートを決めたタイトルホルダー横山和騎手がうながしてハナヘ。その外からアフリカンゴールドが全力でハナを奪いに行く。内枠勢ではディープモンスターが力みながら好位。アスクビクターモアタイトルホルダーを見る位置へ。パトロールビデオで確認すると、1周目の坂を下る時点で、タイトルホルダーが下り坂に戸惑っているような様子がうかがえる。

1周目のゴール前から1コーナーでアフリカンゴールドが失速し、タイトルホルダーが押し出されるようにハナヘ。その外にはぴったりとアイアンバローズ。阪神のときのように振り切れない。2周目の下り坂に入った時点で、タイトルホルダーは何度も手前を替えており、ここでもう無理をしなかった(※JRAの発表は右前肢跛行)。今週水曜(4/26)の美浦、未勝利馬相手に併入した最終追い切りの動きは平凡に映ったが、どこか悪いところがあるとは思わなかった。タフな展開と慣れない京都の下り坂でリズムが崩れた影響か。まさかの競走中止は、あらためて、競馬の怖さ、難しさ、適性や展開などさまざまなファクターが勝敗に結び付くことを多くの人に教えてくれたと思う。

が◎を打ったのはジャスティンパレスだった。半兄がベルモントS覇者パレスマリスという血統のディープインパクト産駒。昨年の天皇賞・春はその半兄アイアンバローズに◎を打った。この血統は長距離戦で必ず大仕事をやってのけるはず。そう信じていた。昨秋の菊花賞(③着)は外枠からうまくインに潜り込んだが、最終コーナーでスムーズさを欠き、最後の追い比べで遅れた。

有馬記念はマーカンド騎手が逃げ馬の背後を奪いに行く積極策で運んだが、結果的には追い込み決着に泣いた。それでも先行勢では最先着の⑦着。評価を落とす必要はないと思っていた。阪神大賞典は着差こそ目立たないが、最後の直線で抜け出す脚の速さが抜群。中間の追い切りも順調にこなしているようだったし、ワクワクしていた。

パドック、そして、ゲートに入った後もうるさい面を見せていたジャスティンパレスだが、結果的には素晴らしい気合乗りだったということか。スタート後、隣のディープモンスターが出ていくと、その後ろに控える形。下がってくる馬がいるのを見越していたように、ルメール騎手は徐々に外へ出し、2周目4角ではディープボンドを射程圏に入れ、後続を引き連れる形で直線に向いた。

2馬身半差の快勝。追い切り後の共同会見で長距離戦のポイントを問われたルメール騎手「内側で走ったら3200m、大外をまわったら3500m。それがポイント」と答えていた。内へのこだわりを持ちながら、内から外へ持ち出した鞍上の手綱さばきがジャスティンパレスの能力への信頼の証明だろう。今後は長距離にこだわったレース選択をしていくのが最善だと思うが、そうなると、海外への挑戦なども選択肢に入ってくると思う。どのような進路を選ぶのか楽しみだ。

ディープボンドの3年連続②着も見事だった。他馬が苦しくなったところで、それでも持ち味を活かすべくスパートした。パドック映像で「いいな」と思ったのはシルヴァーソニック。芦毛の7歳馬は今、本当に充実しているのを感じる。アスクビクターモア田村厩舎の絶妙な仕上げがあってこその昨年の菊花賞制覇で、本質的には中距離でスピードを活かしたいタイプなのだと思う。⑥着に敗れたボルドグフーシュも初めての京都がいい経験になったはずだ。

天皇賞・春の売り上げは前年比105.1%。今年に入り、あまりG1競走の売り上げが伸びない印象だったが、新装京都の初G1を楽しんだファンが多かった、待ち望んでいたことが数字に表れている。新型コロナの影響が落ち着いてきて、多様なスポーツを楽しむ空気になってきた。来週からは東京で5週連続G1がスタート。天気に恵まれ、スターホースが熱戦を繰り広げてくれることを期待したい。


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