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速攻レースインプレッション

馬、騎手、関係者、そしてファンが一体で作り出した“伝説の一戦”

文/鈴木正(スポーツニッポン)、写真/川井博


川田将雅騎手は芝コースでのウイニングランを終えると、スタンドのファンに向けて、右手を軽く上げ「ありがとう」というポーズを作った。第84回オークス。①着リバティアイランドによる6馬身差快勝は、馬、騎手、関係者、そしてマナーを守ったファンが一体となって作り出した“伝説の一戦”だったのではないか。

パドックではわずかに不安を感じさせた。発汗の跡があった。リバティアイランドは敏感なタイプだ。昨年10月のアルテミスSでは返し馬でイレ込んだ。ただ、その敏感な部分が反応の良さとなって爆発力を生むという側面もある。ここからレースまで、どれだけ落ち着いて臨めるか。焦点はそこだと思わせた。

ホームストレッチ、まさにファンの前でのスタート。ファンファーレからゲートが開くまでの1分40秒の間は、普段のG1より明らかに静かだった。改めて説明することもないかもしれないが一応、記しておく。17日、追い切りを終えての共同会見。川田騎手はファンに1つのお願いをした。「ゲート入りの際、最後の馬が入る時に盛り上がる形となっているが、そこは声援を我慢していただき、ゲートが開いてから全力で盛り上がってもらえれば。そんな協力をしていただけると、とても助かります」

場内実況の大関隼アナウンサーも本馬場入場の後、川田騎手の意をくんだお願いを場内に呼びかけた。昨年のオークスでは輪乗りで興奮した馬にサウンドビバーチェが蹴られて放馬。除外の憂き目に遭った。1番人気サークルオブライフは出遅れて競馬にならなかった(⑫着)。今年は全馬がスムーズにゲートに入った。スタートが切られる際に訪れた静寂。そしてゲートが開いてからの万雷の拍手。リバティアイランドも互角のスタートを決めた。

2F目こそ10秒5と先団争いは激しくなったが、その後はラップが落ちた。向正面で行きたがりそうになるリバティアイランド。だが、我慢して折り合った。周囲と適度に間隔を保ちつつ、前にも外にも馬を置いた状態。落ち着きを取り戻しやすい状況だった。そしてその状況は、リバティアイランドが無事にスタートを決めたからこそ作り出せたものだった。

後続から仕掛ける馬はいない。スムーズに外に出せた。4コーナーを迎え、川田騎手の手応えは絶好だった。もうこの時点で、ほとんどのファンが勝利を予感しただろう。残り200で先頭。ただ、ここで手前が戻ってしまった。それでも後続をちぎり捨てる。前脚の上がり方が他馬とは全く違う。6馬身差。静寂の中をスタートした桜花賞馬は大歓声の中を戻り、2冠馬となった。

この日の中継はトラッキングシステムを画面下に表示していた。右下に、先頭を走る馬の時速が表示されるのだが、直線を向いて先頭に立ったラヴェルの時速は61km前後だった。しかし、リバティアイランドが先頭に立った瞬間、いきなり64kmへとはね上がった。こんなに違うのか。最新のシステムは2冠馬の凄みを数字で教えてくれた。

そしてウイニングラン。そこで飛び出したのが川田騎手の「ありがとう」ポーズだ。お立ち台でも改めて、ファンに感謝の意を示した。「ゲートが切れるまで2秒ほど、我慢していただきたいというお願いをみなさんしっかり聞いていただいて、その結果、全馬、無事にスタートを切ることができたことをありがたく思います」。そう、川田騎手リバティアイランドのためだけでなく、全出走馬が無事に競馬を行えるよう呼びかけていたのだ。今年はついにドバイワールドCもウシュバテソーロで制した川田騎手。お立ち台での充実感に満ちた表情は、日本競馬の顔と表現するにふさわしいものだった。

川田騎手はこんなことも話した。「今後のためにも少ししっかりと動かして先々の戦いのためにと準備をしたつもりです」。残り200でムチを2発入れた。手応え的には勝てると思っても、この先の戦いを見据えるならば、持てる最高のギアをここで入れておいた方がいい。そんな判断だった。その結果が、グレード制導入以降のオークス最大着差となる6馬身差。昨年のスターズオンアースに続く牝馬2冠だった。

川田騎手が言う、先々の戦い。これは本当に楽しみだ。秋にジャパンCでイクイノックスと戦うことがあるのだろうか。次週に決まる今年のダービー馬との激突もいずれあるだろう。海外に出て行くことも当然、考えられる。

リバティアイランドとは自由の女神が建つ、米ニューヨーク港内の島のことだ。女神がかぶる冠には7つの突起があるが、これは7つの大陸、7つの海を示す。リバティアイランドは、どの大陸で行われる競馬でも勝てるだけの素材だろう。自由に飛び回り、世界中を驚かし続ける。そんな未来が待っているはずだ。


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