独自視点で穴馬推奨!競馬予想支援情報【サラブレモバイル】

サラブレモバイル

メニュー

ログイン

速攻レースインプレッション

川田騎手の卓越した発想力、判断力が光った68秒間

文/鈴木正(スポーツニッポン)、写真/小金井邦祥


下半期のG1第1弾。この秋もこの人のお立ち台を何度も見ることになるんだろうなあ、と思いながらレース映像を見返している。今さらではあるが改めて記しておく。川田将雅騎手、うますぎる。今やもう、世界でも5本の指に入る騎手なのだろうと思う

ママコチャとの名騎乗を味わうポイントはいくつもある。まずはゲートが開いてのロケットスタートだ。

少しさかのぼってパドックでのシーン。池江泰寿調教師川田騎手が2人で話していた。身振り手振りで、池江師ママコチャのゲートでの様子について川田騎手に説明しているようだった。うんうん、了解しました、という雰囲気の川田騎手。直前でのこの短い確認で、初騎乗のママコチャを好スタートに導いたのであれば、やはりそれは川田騎手の卓越したキャリアによるものなのだろう。ちなみに筆者の知る限り、ママコチャが出遅れたのは3走前の阪神牝馬Sだけなのだが、この時は⑨着に敗れている。出遅れれば致命傷となった可能性はあった。

戦前、「テイエムスパーダとジャスパークローネがやり合うからペースは速くなる」という予想が大勢を占めた。しかし、ジャスパークローネがあっという間に先手を奪い、最初の1Fで隊列があっさり決まった。3F通過は33秒3。昨年より0秒6も遅い。速いと予想された時ほど遅くなる。まさに「競馬あるある」だが、このあたりも川田騎手の発想には織り込み済みだったはずだ。道中、ナムラクレアママコチャメイケイエールと有力どころが5、6、7番手で並んだが、ママコチャだけがスッと前に出た。緩やかなペースであることを確信したのだろう。負ければ、この動きが敗因とされるところ。川田騎手の思い切りの良さ、判断の確かさがはっきりと見えた。

さらに、この動きにはプラスアルファがあった。インのナムラクレアが道中で上がる、もしくは外に出す動きを防いだ。決してママコチャが邪魔をしたという意味ではない。自分の進路を主張した結果、ナムラクレア1手遅れたということ。このあたりは枠順の妙もある。いずれにしても川田騎手はどの馬よりも1手早く勝負をかけ、1番人気馬の勝負を1手遅らせた

そのままスピードを上げ、気が付けば4角2番手のママコチャメイケイエールは外を回り、ナムラクレアは1手遅れたのを挽回する分、4角手前で予定より強めのギアを使った。ここでうまかったのはマッドクール坂井瑠星騎手。前を行くジャスパークローネが下がってこないことを確信してインを死守し続けた。ジャスパークローネの実力とペースを考え、ある程度までは粘ってくれることを確信したのだろう。この判断が最後に馬を②着へと押し上げた。

さあ直線。ジャスパークローネから、やや馬体を離し気味にしてスピードを上げるママコチャ。残り100でついに先頭。イン2頭目のスペースから突っ込むマッドクール。勢い的にはマッドクールが有利に思えたが、そこは姉ソダシ譲りの勝負根性を秘めるママコチャ。ハナ差、踏ん張り抜いた。インで脚を温存してラストにぶつけたマッドクールが②着。ナムラクレアは外から猛然と追い込んだが1馬身差の③着に終わった。

川田騎手は優勝インタビューで「周りの動きがどういう形になっていくかということだったんですけど、この馬にとってはいい形で進んでいたんじゃないかと思います」と語った。競馬はタイムスポーツではない。時計が速かろうが遅かろうが、最後にゴールを先頭で駆け抜ければ勝ち。道中の駆け引きを制することが勝ちにつながると川田騎手は肌で知っている。だからこそ、スタートを決め、ライバルに先んじて仕掛け、さらにライバルの手を遅らせ、最後は相棒の勝負根性に懸け、先頭でゴールを駆け抜けた。キャリアで得た発想力、判断力を68秒間に全てぶつけた…そう思える快勝劇だった。

もちろん、当代一の騎手の誘導に全て応えたママコチャも素晴らしい。これは自分の予想でしかないが、マイル重賞のターコイズS阪神牝馬Sをともに敗れた時、池江師はスプリント路線への転向を頭に浮かべたのではないか。スリープレスナイト(08年)、カレンチャン(11年)とスプリンターズSを2勝しているクロフネの産駒。いかにも適性がありそうだし、実際、3頭目の優勝馬となった。

こうなると姉ソダシとの対決が見たくなる。同じ金子真人HDの馬だけに、ぶつけ合うのはしのびない、という思いもあろうが…。白毛のヒロインの全妹だけど鹿毛。G1初挑戦での驚きの頂点。かわいらしい馬名だが、意味は「インカ神話の海の女神」というなかなか勇壮なもの。いろいろなギャップを秘める電撃路線の新ヒロインに、これからも萌えたい。


【月額会員が利用できるコーナー紹介】


TOPページに戻る