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速攻レースインプレッション

今後も先輩の牝馬3冠馬のような活躍を見せてくれるはず

文/後藤 正俊(ターフライター)、写真/瀬戸口 翔


リバティアイランドの3冠達成に焦点が集まった今年の秋華賞。桜花賞での強烈な末脚、オークスでの6馬身差圧勝から、単勝は1.1倍という圧倒的な人気に推された。敢えて不安点を探せば、桜花賞、オークスがともにレース歴代2位のスピード決着だっただけに、極端な道悪になった場合だったが、10R時には陽も差してきて馬場は「稍重」に回復した。10キロ増の馬体重(476キロ)は春よりも一段と逞しさを増し、休み明けでもパドック、本馬場入場でも落ち着き払い、発汗も目立たない。完璧と言える状態でレースに臨んだ。

そしてレースも完璧だった。スタートで出遅れることなく6番枠からすんなりと先行。逃げたコナコーストの作ったペースは前半1000mが1分1秒9というかなりのスローペースとなったが、リバティアイランドは引っ掛かる様子も見せずに馬群の中の6~7番手を楽に追走する。

当初は武豊騎手ソレイユヴィータが外からピッタリと蓋をしていたが、川田騎手は慌てることなく、やや下げて3角手前で外に持ち出し、3~4角にかけて一気に進出。4角では早くも馬なりのまま先頭に立ち、内で粘る馬たちを一気に捉えると、単騎先頭でもソラを使う素振りも見せず、女王にふさわしくゴールへ向けて馬場の真ん中を突き進んだ。最後の100mで大外からマスクトディーヴァが猛烈な末脚で迫ったものの、手綱を緩めたリバティアイランドに1馬身差となった地点がゴールだった。

馬場状態とスローペースから走破タイムは2分1秒1で、過去20年では2021年アカイトリノムスメ(2分1秒2)に次ぐ2番目の遅さだったが、最後は流し気味での上がり3ハロンは、4角12番手だったアーモンドアイと同じ33秒6。単勝1.1倍にふさわしい、まったく危なげのないレースで史上7頭目の牝馬3冠を達成した。秋華賞での単勝1.1倍での優勝は2002年ファインモーション以来2頭目の最低配当タイ記録となった。

過去の3冠牝馬のうち、アパパネはヴィクトリアマイルを制し、ジェンティルドンナとアーモンドアイは次走のジャパンCで古牡馬を破り、その後も歴史的な活躍を続けた。繁殖入り後にアパパネは秋華賞馬アカイトリノムスメ、ジェンティルドンナはエリザベス女王杯馬ジェラルディーナを産んだ。秋華賞後に未勝利だった馬もメジロラモーヌは3歳時の有馬記念1戦だけでの引退だったし、デアリングタクトは脚部不安と闘いながら強敵相手に善戦した。

これらのデータから考えると、3歳牝馬世代では圧倒的な強さを見せたリバティアイランドは、このまま無事ならジェンティルドンナ、アーモンドアイ級の活躍を見せてくれるに違いない。レースぶりも自在だし、距離の融通性も問題ないので未経験の中山コースや海外も含めて選択肢は極めて広い。ジェンティルドンナ、アーモンドアイ同様にジャパンCに向かい、イクイノックス、ドウデュースらと対決することになるのか、今後のローテーション決定を楽しみに待ちたい。

ゴール前の脚が際立っていた3番人気マスクトディーヴァには未知の魅力があふれている。あのスローペースの中、4角ではまだ馬群の中の12番手。そこから外に持ち出そうとするが、なかなか進路が開かずに接触するような場面も見られた。それでもリバティアイランドを上回る上がり3ハロン33秒5をマークした。おそらく最後の1ハロンは10秒台半ばだったのではないだろうか。

ローズSで芝1800m・1分43秒0というJRAレコードを出した馬で、そのスピードから最適舞台はパンパンの良馬場だったはず。スターズオンアースが天皇賞・秋に出走予定なだけに、もしリバティアイランドが出走しなければエリザベス女王杯では主役を張る存在になるのではないだろうか。短距離で活躍したビハインドザマスクの孫で、その末脚は祖母譲りと言えそうだが、父がルーラーシップなので2200mは克服してくれると思う。

2番人気で③着のハーパーは正攻法の先行策で粘り込んだが、3戦続けてリバティアイランドには敵わなかった。それでも3冠で④②③着と安定した成績を残し続けた。今回は14キロ増の馬体重(482キロ)で春よりも明らかに成長していたし、まったく太め感はなかっただけにまだ大きくなりそうだ。ハーツクライ産駒だけに、さらに成長力が望めるし、負けても常に安定した成績を残せるタフな精神力は牝馬では貴重な存在。今後もG1戦で健闘してくれそうだ。

ハーパーからハナ、クビ差の④⑤着となったドゥーラモリアーナも自分の力は出し切ったのではないだろうか。オークス③着馬ドゥーラは斤量51キロだったとはいえクイーンSで古馬を破って勝利しており、今回も3歳牝馬世代の能力指標となるレースをしっかりと見せた。モリアーナは紫苑Sに続いて馬群をこじあける勝負根性を見せ、横山典騎手とのコンビで自分の型を作ることに成功したと思う。リバティアイランド一色の秋華賞ではあったが、②~⑤着馬にもそれぞれの見どころが十分にあった。


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