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西塚助手

【対談・宮里調教助手③】馬術出身者として考える、競馬と馬術の違いと共通点


青木厩舎・宮里智彦調教助手…以下[宮]
西塚信人調教助手…以下[西]

[西]ところで、宮里さんはどこのご出身ですか?

[宮]名字から沖縄を連想される方が多いかもしれませんが、僕自身は東京なんです。父親が沖縄なんですよ。

[西]東京のどこですか?

[宮]日野市出身で、八王子の学校に通っていました。府中には何度か行ったことはありましたが、特に馬に近い環境というわけではなくて、ダービースタリオンで競馬を知って、それで府中に現実の競馬を見に行って、という感じでした。

[西]そこから、どうやって競馬の世界に入ってきたんですか?

[宮]18歳で家を出て、千葉県佐倉市にある佐倉ライディングクラブという、今は完全な乗馬クラブになっていますが、当時は地方競馬所属馬が入厩していたところにお世話になりました。そこ出身の方が幼なじみのお姉さんにいて、高校生の時から通って馬に乗せてもらっていたんです。厩舎作業を手伝う代わりに、馬乗りを教えてもらっていました。



[西]北海道は考えなかったんですか?

[宮]就職するときに、そのお姉さんが浦河の育成牧場にいたので、1ヵ月研修という形ではいました。でも、佐倉を選びました。

[西]佐倉に決めた理由は、寒さが無理だと思ったからとか?

[宮]ブッチャけ、それはありました。さすがですね(笑)。

[西]わかりますよ(笑)。ということは、初期馴致はやったことがないわけですか。

[宮]一応、佐倉でやったことはあります。岩手県遠野生産の乗馬ですね。

[西]ということは、サラブレッドではないですよね。

[宮]セルフランセなどの中間種でした。サラブレッドの乗り馴らしはやったことがないので、比較はできませんけど、最初はけっこう暴れるんです。何回も落とされました。

[西]そうなんだ。いや、自分自身も乗り馴らしの経験はないんですよね。

[宮]トレセンにも、乗り馴らしの経験がない人はけっこういますよね。

[西]馬術部、あるいは乗馬クラブを出て、内地の育成牧場に、というルートを歩んだ人だと、ほとんど乗り馴らしの経験がなかったりするんですよね。僕は白井の西山牧場にお世話になっていたんですけど、そこでは本当にたまにですが、乗り馴らしをしていました。でも、僕自身は全くやりませんでしたけどね。

[宮]千葉でも、たまにはあったんですね。

[西]佐倉では馬術がほとんどだったんですか? それとも競走馬にも乗っていたんですか?

[宮]障害がほとんどで、競技会にも参加させてもらったりしていました。

[西]障害2級のライセンスを取ったと言っていましたけど、障害はどのくらいの高さを跳ぶんですか?

[宮]110cmです。

[西]110cmは跳んだことがないんですけど、やっぱり高いですよね?

[宮]普通に高いです。ただ、国体レベルとか、あるいは1級になると120cm以上ですから、より難しくなりますよね。

[西]国体には出場したんですか?

[宮]僕は出場していません。県大会止まりでした。でも、佐倉ライディングクラブの社長の息子さん(福島大輔選手)は、リオデジャネイロオリンピックの日本代表だったんですよね。

[西]その方に教わったんですか?

[宮]教わっていないんですよ。僕がお世話になっていた頃は、大学の馬術で合宿所にいらっしゃいました。たまに帰ってきたときに乗っているのを見せてもらったんですけど、もうレベルが違い過ぎて、ただただ見惚れるばかりでした。

[西]いや、わかりますよ。僕も、シドニーオリンピックに出られた那須トレーニングファームの広田龍馬さんと一緒に乗る機会があったんですけど、全く違うというか、別次元ですよ。トレセン広しといえども、そういうレベルの人って、なかなかいないんですよね。

[宮]いないですね。

[西]そこでちょっと思うのは、先ほど話に出たようなヤバい馬に、そういう馬術のオリンピックレベルの人が乗ったら、どう変わるんですかね?

[宮]馬術でもうるさい馬がいますけど、でも競走馬のそれとは違うというか、違ってほしいという思いはあります(笑)。

[西]確かに、違っていてほしいですよね(笑)。

[宮]でも、預かっていた競走馬に息子さんが乗ったことがあったんですけど、背中に跨がった瞬間に馬の形が変わったんですよ。馬術での動きを教わったことがないはずなのに、馬がそういう姿勢を取ったんです。あれを見たときに、たぶん競走馬でも全く問題なく、乗りこなしてしまうんだろうな、と思いました。

[西]言ってしまえば、馬術の世界では日本のトップの中でもトップの方ですからね。

[宮]跨がった瞬間に動きが変わるのは、見るだけでも勉強になると思います。

[西]上手い人が乗って変化が分かると、説得力があると思います。常歩の姿から違ってきますからね。

[宮]当たり前ですけど、真似をしようと思っても全くできないです。なかなか分かってもらえないのかもしれませんが、馬術には馬術の難しさがあって、凄い人は凄いんですよ。逆に、競馬もそうなんですけどね。

[西]競馬には競馬の凄さがあるんですよ。パッと思い浮かぶのは、たくさんの馬がいる中で乗る技術と、それに対する慣れは、競馬の世界独特だと思います。馬術は、広い馬場に1頭で入っていくのが基本で、何十頭の中に入っていくのは、そもそも求められていることが違うんですけどね。



[宮]同じ物差しで話をしてはいけないんでしょうね。

[西]もちろん。例えばゲートに関してですが、トレセンでのゲート試験とレース本番でのゲートでは、馬の心理状態は明らかに違っています。そこまでではないにしても、トレセンにいる時の馬は、やはり精神的に高揚しているはずですから。そこは競馬独特だと思います。

[宮]確かに、そこは馬術にはない部分ですよね。

[西]このコーナーでも話をしたことがありますが、レースにおける馬の姿は騎手にしかわからないことなんですよね。若い人だと、馬乗りは上手でも、そういう部分での対応に戸惑ってしまうケースってありますよね。

[宮]それはあると思います。角馬場に入っていくタイミングでも、そこじゃないんだよ、と思うことはあります。

[西]それこそが、慣れなのかもしれない。

[宮]例えば、自分の馬は大人しくても、急にうるさい馬が入ってきたりして、状況が変化することはいくらでもある。その時の対処法というか、機転の利かせ方みたいな部分こそ、経験値がものを言うんだと思います。

[西]ちなみに、僕が暴走されたときも、ひっくり返ることはないという感覚があって、ラチに寄せていく対処法を知っているから乗っていられたんです。でも経験がなかったら、力ずくで止めようとしてしまって、混乱してしまうと思うんですよ。

[宮]そういう感覚は経験値からくるもので、経験することで見極める力が付いてくるんだと思うんです。それは競馬の世界ならではですよね。

(※次回へ続く)

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