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西塚助手

成長したグランアレグリアに、教えられたことがありました


雨の中で行われた大阪杯レイパパレが見事に逃げ切り、6戦無敗でのG1制覇となりました。

レースのポイントとしては、もちろん重馬場だったことがあるでしょう。ただ、天候とか馬場状態というのは、実際に馬に携わっている側からすると、それはもう割り切るしかない、というのが正直なところなんですよね。

というのも、重馬場が得意不得意、荒れた馬場が合う合わないというのは、調教だけで見極めるのはとても難しい。実際、正確に把握するのは困難で、レースを走ってみるまでわからないものなんです。

そもそも、調教ではウッドチップ、ポリトラック、あるいはダートで行われることが多く、芝コースで行われるのは稀です。さらに、ひと口に芝と言っても、競馬場とトレセンではその質が同じではないし、競馬場によっても違うんですよね。

また、JRA発表の馬場状態は、最近はクッション値を発表していますが、基本的には良、稍重、重、不良の4段階です。そして、同じ重馬場でもまた微妙に違います。

ですから、僕が携わった馬にも、道悪がダメだったはずの馬が重馬場で勝ったり、逆のケースもあります。それは、今話したようなさまざまな要因があるからだと思うんですよ。そういったいろいろな意味で、やってみなければわからない、ということなんです。

海外だと、当日に馬場状態を見極めてから出否を決めることができますが、日本ではできません。そして、重馬場を上手に走れるようにするトレーニングがあるのかというと、少なくとも僕は聞いたことがありません。

ですから、馬場状態も含めて競馬、と言ってしまうと乱暴かもしれませんが、馬に携わる僕としては、重馬場で負けたとしても、何か他に敗因はないのか、より突き詰めて考えるように努めています。

ところで、今回の大阪杯で個人的に注目していたのは、同じ美浦所属のグランアレグリアでした。

グランアレグリアはこれまで1200~1600mを使われていて、今回が初めての2000mでした。どんなレースをするのか興味深かったのですが、レースを見て思ったのは“馬は変わるなあ"ということなんです。

昨年、グランアレグリアについては何回か話をしていますが、その時には調教の時から敏感なタイプだと言っていたと思います。それが1年ほど経った今、朝の馬場入りや上がり運動などを見ていると、以前のようなうるささはなく、落ち着いていて、大人になった雰囲気なんですよ。

その成長の裏には、ずっと1頭で攻め馬に乗ってきたのが良かったのか、他にもいろいろな要因があったのでしょう。これは僕の勝手な印象ですが、今のグランアレグリアに1200mは短いのでは、と思います。藤沢先生もその成長を見たことで、昨年2着の高松宮記念ではなく大阪杯に向かうことにしたのかもしれません。

結果は4着でしたが、大きな成長を感じたレースでした。馬の精神状態や成長を見極めながら、柔軟にレースを選択することも大切、ということも教えられたように思います。

最後に、地元新聞などでも報道がありますが、先月31日(水)に美浦トレセンで調教助手をされている方が落馬事故に遭い、意識不明の重体となられています。

僕自身はその方と面識があって、その事故に見舞われる2時間ほど前、馬場で冗談を言い合っていたんです。その直後にこのようなことになるとは、想像もしていませんでした……。

僕も落馬したことがありますし、この世界に入ったときから、ある程度の覚悟はしているつもりです。それでも、これは決して他人事ではありません。

この世界は種付けが行われ、仔馬が生まれ、成長して馴致され、トレーニングされて、デビューを迎えるというステップを踏みます。それぞれの段階では必ず人が携わっていて、それはすべて危険と隣り合わせなんですよね。

また、そういった人たちが育ててきた馬を、何とかデビューさせたい、そして勝たせたいと、僕たち誰もが思っています。でも、何もなくても怪我をしてしまうのが競馬ですし、競走馬なんです。であれば、少し歩様が悪いくらいならレースに使うのではなく、何らかのシグナルがないかどうか、もっと慎重にならなければいけない、とも思います。

以前、ある馬が故障してしまった時に、その馬主さんに言われた“故障したのはあなたの責任ではない。でも、自分自身で何か兆しを見落としていなかったか、そのことだけは考えないといけないよ"という言葉は、今でも心に残っています。

車の運転などでも、慣れたと思った時がいちばん危ない、と言います。常に緊張感を持って仕事にあたらなければならない、と痛感しています。

今は、1日でも早い回復を願うばかりです。

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