西塚助手
ソダシが見せた成長ぶりに、僕も大いに刺激を受けました
桜花賞は阪神JF以来の一戦となったソダシが、1分31秒1というレコードタイムで優勝。これで5戦5勝としました。2着に追い込んできたサトノレイナスとはクビ差でしたが、着差以上に強い内容だったと思います。
今回のソダシは2枠4番で、偶数馬番でした。通常なら偶数馬番の馬は奇数馬番の馬より後にゲートに入ることになるのですが、今回は一番先に入っていました。これを不思議に思われた方も、もしかしたらいらっしゃったのではないでしょうか。
その理由ですが、前走時のソダシは枠入りを嫌がって、少し時間がかかったことが主な原因と思われます。最初の枠入れならまだいいのですが、ゲート入りが進んだ状態でそうなってしまうと、先に入っていた馬が長時間待たされることになってしまいます。
ですから、そのようにゲート入りを嫌がって長い時間を要したような馬は、発走委員の指定を受けることがあります。そうなると、何レースか続けて最初に枠入りをすることになっているんですね。そして、枠入りや枠内駐立に問題なく発走しなければこの先入れは解除されません。ですから、ソダシは次のレースでも先入れになるのではないでしょうか。
ですが、今回のソダシはゲートにもすんなりと入り、駐立もしっかりとできていて、スタートも抜群に良かったですよね。
前走から約4ヶ月でみせた成長は、陣営のしっかりとした仕事があってのことでしょう。馬の持つ能力に関しては人間の手が及ばない部分が多いですが、ゲートに関しては、我々人間が手を尽くすことで改善できると思っています。ソダシが見せた成長を目の当たりにして、同じ厩舎で働く人間として、負けないように頑張らないといけないな、と思いました。
また、桜花賞ではもう1頭個人的に注目していた馬がいて、それがメイケイエールでした。
その理由として、まずはそれまで騎乗していた武豊さんが負傷のため、(横山)ノリさんに替わったこと。また、それまで装備していたクロス鼻革などの馬具類を一度リセットして、今回はノーマルなものでレースに挑む、というコメントを新聞で読んだからなんです。
ノリさんはテン乗りということになりましたが、今回は調教でも乗っていないと聞いています。追い切りに乗ってもらうことで、我々陣営としても馬の感触を確かめてもらえるメリットがあります。ただその一方で、もし悪いイメージを与えてしまったら、そのままレースに向かうことの怖さがあるんですよね。
追い切りに乗らなかったのは、そういうリスクも踏まえ、先入観を持たずにノリさんの感覚に任せたかったのではないか、と思うんです。
馬具についても、レース前からSNSなどでいろいろな意見があったようですが、同業者の立場から考えると、陣営の気持ちがよくわかるんですよ。
メイケイエールのレースぶりは皆さんもご存じだと思いますが、それまで付けていた馬具でコントロールができていたのであれば、そのまま続けることもアリだったでしょう。しかし、前走を見ても、そうとは言いづらいわけです。ならば、ノリさんに替わるタイミングで、一度リセットすることにしたのではないかと。
結果は18着となりましたが、今回の選択は良い意味で攻めたなあ、と感じるものでした。
最後になりますが、先週話をさせていただいた落馬の件で、事故に遭った調教助手の方がお亡くなりになりました。
正直なところ、言葉が出てきません。ただひとつ言えることは、自分自身を含めた全関係者は、人命の尊さを再認識し、安全第一ということをもう一度肝に銘じなければいけないということです。
たとえば気性が激しい馬に対する調教や、歩様が良くない馬に対する調教や対応に問題はないのか、安全を確保した状況で行っているか。関係者一同がこのような事故を二度と起こさないようにしなければならないということを、強く言わせていただきたいと思います。
ご冥福をお祈りいたします。
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